高校生が評価人、誰でもオンライン参加できる『町田市市民参加型事業評価』
政治山 / 1970年1月1日 9時0分
東京都町田市で11月24日、「市民参加型事業評価」が開催された。
実施形式は民主党時代の「事業仕分け」をイメージいただくと早いが、町田市の事業評価は、市民と有識者で構成する評価人チームが、事業所管課の担当者と対話をしながら、事業の問題や課題を洗い出し、改善に向けて現状を評価するものである。
事業評価当日、私も会場である町田市市民フォーラムを訪れた。実際に議論を聞いて、町田市の事業評価は「高校生の役割が大きい」「誰でもオンラインで参加できる」「改善策がフィードバックされる」、この3点で先進的な取り組みであると感じた。
高校生が評価事業を選定し、当日も高校生が評価人を務めた全国の自治体の課題として、若者の市政参加の場が確保されていないことがある。特に、選挙権を持たない17歳以下の若者が意見を表明できる機会は限定的である。
しかし今回、町田市は市内約1万人の高校生全員を対象に参加の機会を提供した。機会があっただけではなく、今回の取り組みにおいて、実際に高校生が果たした役割は大きい。
その一つが、事業選定である。事業評価当日は2会場で3事業ずつ、計6事業の評価が実施された。もともと市の事業は約1,200あったが、そこから評価対象となる6事業までの絞り込みを高校生が行ったのである。事業の絞り込みにあたっては、ワークショップや複数回のミーティングが開催されている。
事業評価当日も高校生は大きな役割を果たした。評価人の半数を高校生が務め、堂々とした発言もそうであるが、大人が考えさせられるような鋭い発言が非常に多かった。例えば、「地域が活性化した状態はどのように測るのか?」「ターゲットが定まっていない取り組みは中途半端になる」「市はどうしたいのか、ビジョンを示してほしい」などといった発言は本質を突いていた。高校生の意見を市政へ反映するこの取り組みは、ユニセフも注目しているとのことである。
当日の様子はLIVE配信され、遠隔地からオンライン投票可能に事業評価当日は、2会場のうち1会場の様子がYouTube(まちテレ)にて、生中継された。それだけではなく、視聴者は誰でも、会場にいる傍聴者と同じように、事業に対する意見をオンライン投票で表明することができた。投票のタイミングは1事業に付き3場面(計8問)用意され、1回目は市担当課の説明の直後、2回目が議論の中盤、そして3回目は評価人が事業の評価を下す後半のタイミングであった。
非常に面白かったのが、投票結果がリアルタイムで会場前方のスクリーンにグラフで投影され、それを踏まえた発言が評価人からなされたことである。また、1回目と3回目は事業評価に関する、同じ問いかけが重ねて行われたが(例えば、「事業の最も大きな課題はどこにあるか」)、市の担当者と市民評価人が議論した前後では、投票の結果に変化があった。つまり、評価人の議論を聞いて傍聴者は考えを変えたということで、議論に基づく事業評価の意義が現れた部分であると言える。
このオンライン投票の仕組みは、つくば市でネット投票の実績を有するVOTE FOR社が提供したもので、市の情報システム課の精鋭職員が周辺機器をまとめあげ、当日の混乱は見られなかった。なお、オンライン投票の結果は町田市のHPで公開されている(12月9日現在)。
一過性のイベントではなく、意見を踏まえた改善プログラムが作成、公開される事業評価当日は、評価人から様々な意見が出され「大いに改善」を求められた事業もあった。高校生をはじめ、評価人の意見は率直で、予定調和なものではなかった。市担当者にとって耳の痛い内容も少なくなかっただろう。それら意見に対して、今後、町田市は改善の具体策をまとめた「改善プログラム」を作成し公開するとのことである。一過性のイベントになりがちな事業評価だが、具体的な改善が約束されていることは重要である。
このような町田市の事業評価の事例は、住民の市政参画の場面で、参加者の偏りや、参加者数の確保など、多くの課題を抱えている全国の自治体の参考になるものではないだろうか。
住民は市政に関心を持ち、参加もするべきである、という「べき論」では物事は進まない。若者の関心を引きたければ彼らが日常から使っているツールを使うなどの工夫が必要であるし、多くの人に参加してほしいのであれば、会場に足を運ばなくても参加が可能となるオンライン環境を用意することが効果的であろう。
町田市は、過去のやり方にとらわれず、年々取り組みを進化させている。住民参画はまだまだ発展の余地のある領域である。町田市の事例を基に、全国で新たな取り組みが始まることを期待したい。
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