世界的な格差、3人に1人が「仕方がない」―18歳意識調査
政治山 / 2020年4月3日 14時19分
日本財団(笹川陽平会長)は2月下旬、「格差社会」をテーマに23回目の18歳意識調査を行いました。この結果、7割以上が「格差が拡大していると思う」と答え、6割弱は「日常生活で経済的格差を感じる」とし、格差が進学などに影響を与えている、との指摘も出ています。
また6割を超える人が「格差がさらに拡大する」と見ているほか、4割弱は「家庭環境や個人の資質の違い」などを理由に、「格差は是正できると思わない」とし、格差社会での生き方として「賃金の高い企業に就職する」「購入を控え、支出を抑える」といった答えが3割~2割に上っています。
近年、世界で加速する富の偏在に関しては、「仕方がない」と「問題だ」が3割前後で拮抗し、前者では「資本主義だから」、後者では「資産の多い人からもっと税金を取って社会に分配するべきだと思う」といった声が出ています。
今回の調査結果を受けて、日本財団の坂本織江氏は以下のように述べました。
「18歳の6割強が経済格差を感じているものの、富の偏在を問題とする人たちは3割弱に留まっている。格差を個人の資質と考える人も多く、格差に立ち向かう力がなくなっているのではないか。これからを担う18歳が拡大する格差に立ち向かえるよう、社会保障や教育などを通じた公平な富の再分配など、若者ばかりに負担を負わせず未来に期待を抱ける社会をどう作るかを、大人と若者が一緒に検討していくべきではないか」
主な調査結果は以下の通り。
▼世界的に格差が拡大している 72.3%
▼日常生活で経済的な格差を感じる57.6%
- 日常生活の中で格差を感じる理由として、「服のブランド物やゲームのソフト所持数など」「周りの友人と比べて、外食にかける金額や頻度が少ないから」など、自分と身近にいる友人を比較して格差を感じている回答が多く見られた。
また、「金銭事情により進学を希望してもできない人がいる」「お金を多く持っている家庭とそうでない家庭で、受けることができる教育に差が生じていると感じるから」など、経済的な差により、受ける教育にも格差が生まれてしまっているという内容も目立った。 - 日常生活の中で格差を感じない理由は、「あからさまな貧富の格差を見ることがないから」「まわりには同じような境遇の人しかいないから」など、自分と周囲の人との差を感じていないという回答が多く見られた。
また、「世界的に考えると日本は裕福な生活ができていると思うから」「日本はまだ裕福な国」「不自由なく生活出来ているから」など、自分を含めて困窮した生活を送っている人が周囲にいないため、実感として感じていない様子がうかがえた。
▼格差拡大の原因「低賃金のサービス労働の拡大」(37.1%)が最多
▼61.6%が格差はさらに拡大する
▼格差は是正できると思わない37.1%
▼格差は是正できない派の理由
1位「家庭環境や個人の資質には違いがある」41.0%
2位「資本主義は競争社会だから」が37.7%
▼格差は是正できる派の求める対策
1位「税制など金融政策の見直し」47.7%
2位「教育・職業訓練の拡充」42.6%
3位「富裕層に対する増税」36.7%
▼世界の富の偏在「仕方がない」33.5%、「問題だ」26.7%
- 「仕方がない」の理由は、「富裕層の人は社会に貢献した結果だと思うから」「稼いでいる人はそれなりに努力したりしている」など、個人の努力や才能によって生まれた結果であるという意見が目立った。また、「これが資本主義」「資本主義社会なため貧富の差がでてしまうのは仕方がない」「仕組みを変えなければどうすることもできない」など、資本主義である限り、経済格差ができてしまうのは仕方がないことであるという内容も多くあがった。
- 「わからない」の理由は、「よく理解できないから」「何が問題なのか分からないから」などの回答のほか、「格差は嫌だと思うが、…個人の問題だから」「問題だが、それと同時に彼らによって経済が回っているため」など、格差がありすぎることについて問題意識はあるものの、是正するべき課題とは捉えていない回答も見られた。
- 「問題だ」の理由としては、「あまりに差があるので貧困層に何らかの形で多少富を分配すべきだと思うから」「資産の多い人からもっと税金を取って社会に分配するべきだと思う」「富裕層のお金が、より必要としている人たちに行き渡るべきだと思うから」など、再分配をするべきであるという意見が多くあがる。また、「富が集中しているとうまく循環せず格差が拡大するため」「経済が循環せず、一部の富裕層のみが得をする寡占状態であるから」「下位の者に下克上を起こす(大金持ちになる)チャンスも与えられていないのが問題である」など、富が集中し、より格差が拡大していく悪循環を生んでしまうと懸念する声も目立った。
■18歳意識調査について
2015年の改正公職選挙法で選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられ、翌年の参院選から新たに「18~19歳」が投票に参加しました。民法の改正に伴い2022年4月には成人年齢も18歳に変わります。そこで日本財団では、18歳の若者が何を考え、何を思っているのか、継続して調べる意識調査を昨年10月からスタートさせました。次代を担う18歳の意識を幅広く知ることで新しい社会づくりに役立てるのが狙いです(報告書は公式webサイトからダウンロードしてご覧ください)。
公式webサイト
https://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/eighteen_survey
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