都政に見る歪んだ力関係、国会議員より地方議員の方が強い?
政治山 / 2016年9月5日 17時30分
都知事選を巡る報道で、公認権を持つ都連幹事長の都議が国会議員よりも大きな権力を握っている実態が明らかとなりました。一般的には地方議員よりも国会議員の方が地位が高いイメージがありますが、政党の都道府県連(以下、県連)を仕切る実力者が、地元選出の国会議員を意のままに操る構図は決して東京都だけが例外というわけではありません。
選挙協力という切り札握る地元議員の強み
2015年1月に行われた佐賀県知事選では、自公の推薦候補に対し、農協改革やTPPに反対する農協関連の政治団体が支援した候補が勝利。敗戦の責任を取って自民党県連の会長を務めていた国会議員は会長を辞任しましたが、保守分裂の選挙戦は事実上、党本部と県連の対立であり、地盤を固めている地方議員の結束の強さを見せつけました。
県連では、会長が国会議員であっても、実質的な権力は地元の利害を調整できる地方の実力議員が握る、という図式は多くの地方でみられる権力構造です。都知事選の告示前に、元都知事の猪瀬直樹氏が「自民党都連会長は石原伸晃だが、会長は帽子で国会議員や都議会議員の公認権は都連幹事長の内田が握っている」と自身のブログ(http://ameblo.jp/inose-naoki/entry-12177856019.html)などで述べています。
地方議員の力の源泉は選挙協力にあります。猪瀬氏も「副知事就任の直後に千代田区に建設が予定されていた参議院議員宿舎を潰した。千代田区基盤の内田は激昂した。そのため僕が都知事に出馬した際、ポスター2万枚が送り返されてきた。貼ってやらないというのである」と当時の苦境を明かし、自民党の推薦を受けなかったと明かしています。舛添要一氏のカネの問題に始まる都政の混乱は、猪瀬氏にしてみれば2012年12月の都知事選から延々と続く都連の問題であるとの認識のようです。
10月23日の福岡と東京の補欠選も保守分裂の戦いに
公認争いが生じた場合、水面下では党本部と県連、あるいは党内の実力者同士の熾烈な綱引きが行われています。10月23日に行われる2つの衆院補選でも既に戦いは始まっています。
鳩山邦夫元総務相の死去に伴う福岡6区と、小池百合子都知事の議員失職による東京10区の選挙戦は、いずれも保守分裂の様相を呈しており、福岡6区は党県連会長の長男と邦夫氏の次男が公認を争っています。東京10区では小池知事が新党結成も視野に入れて臨む方針で、党本部は世論の動向と来夏の都議選なども見据えた対応を検討しているとみられます。
追加公認は、負け戦を避け勝ち馬に乗る“ウラ技”
こうした分裂選挙の対応として、最近ではどちらにも党の公認を与えず、無所属同士で戦わせて当選者に“追加公認”を与えるパターンが増えています。選挙が終わってから公認するというのは、有権者を蔑ろにしているようにも見えますが、関係者にとっては「事なきを得る」便法の1つです。党は勝ち馬に乗ることで負け戦を避けるメリットがあり、当選者は与党議員として政治活動を行い、次回の選挙でも公認候補として有利な戦いを期待できるメリットがあります。
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