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子どもの貧困に地方自治体はどのように取り組むべきか―岡高志大田区議

政治山 / 2016年10月12日 11時50分

 2014年1月に子どもの貧困対策法が施行され、現在では官民挙げて様々な施策が行われています。私たちの暮らしに最も身近な地方自治体では、どのような取り組みを行っているのでしょか。超党派で構成される“子どもの貧困対策 東京議員懇談会”のメンバーでもある岡高志区議に、大田区の実情と今後について伺いました。

6人に一人、ひとり親家庭では2人に一人が貧困

 子どもの貧困対策が、地方自治体における重要課題となってきています。子どもの貧困率は2012(平成24)年には16.3%となり、6人に一人の子どもが、経済的に厳しい状況におかれています。

 家庭の経済状況が、子どもたちの健康や学力、進路などに関連してきます。子どもたちの明るい未来を守るためにも、私は地方自治体議員の1人として、子どもの貧困への対策を示していきます。特にひとり親家庭において、子どもの2人に1人が貧困な状況におかれていると言われます。

 まずは、ひとり親家庭での貧困対策を示します。大田区の現状では、国からの給付としての児童扶養手当が、世帯当たり月額 42,230円(子どもの数が増えると増額されます)、東京都固有の児童育成手当が、子ども1人当たり月額 13,500円支給されます。また、一般的な児童手当も子ども1人当たり月額 5,000~15,000円支給されます。もちろん、所得による制限があります。

 それ以外にも支援策はあるのですが、現状では十分とは言えません。そこで以下のような取り組みを進めるよう、議会から働きかけています。

離婚届サンプル
離婚届のサンプル

(1)離婚時の養育費の取り決め

 離婚によるひとり親世帯であれば、公的給付だけでなく、離別した親が養育費を負担することで、経済的な下支えとなります。厚生労働省の調査によれば、2011(平成23)年時点の調査で、養育費を受け取っているのは、全体の2割に満たないのです。24年の民法766条の改正によって、離婚時に子どもとの面会交流、養育費の取り決めについて協議をすることが求められることとなっています。離婚届にも、実は養育費の取り決めをしたかしていないかをチェックする欄がわざわざ設けられています。

 だから、離婚届提出時に窓口で養育費の取り決めをしたかしていないか確認して、取り決めが無いならば、何らかの相談窓口を紹介するなどの対応をすれば、養育費支払いの合意があるケースは増えて、養育費を受け取るひとり親家庭も増えるでしょう。すでに兵庫県明石市では、そうした取り組みもされています。大田区でも、窓口での対応を徹底するとの答弁を議会の場でいただきました。

民法改正部分
民法改正部分

(2)ホームヘルプサービスの充実

 経済的な面だけでなく、離婚した後、ひとり親家庭の生活支援は重要です。すでに生活支援事業として、大田区でもホームヘルプサービスがありますが、利用対象が限定的なこともあって利用が少ないです。大田区では、対象が小学3年生以下の子どもしかいない家庭で、利用できるのは病気や技能習得のための通学中などに限定されます。他区では、ひとり親家庭となってから3年以内は病気や通学などの事情にかかわらずホームヘルパーを利用できるなど、範囲を広くしている区もあります。大田区での、ホームヘルプサービスの改善と充実を要望しています。

(3)赤ちゃん訪問の活用

 超党派で構成される“子どもの貧困対策 東京議員懇談会”のメンバーとして、足立区役所で子どもの貧困対策担当部長のお話を伺いました。赤ちゃん訪問事業において、子どもの生育環境を把握して、経済的な支援が必要なのか見極める機会とするように、担当する保健師に意識づけているそうです。赤ちゃん訪問事業で子どもの貧困が可視化されれば、早期の福祉の支援が可能です。虐待リスクも早期に摘み取ることができます。

(4)小中学生向けの学習支援

 地域活動が活発な大田区では、従来からボランティアによる学習支援教室があります。塾に通えない、自宅で勉強できない、そうした子どもたちが地域の教室で学んでいます。さらに今年度から、子どもの貧困対策にフォーカスした区の事業として、生活保護世帯などの中学生を対象とした学習支援教室もスタートしました。対象となる子どもに参加を呼びかけることができることに意義があります。また、スクールソーシャルワーカーが大田区全域で、2人→4人→5人と増員されてきました。学校において社会福祉課題にアプローチできることも有意義です。今後のスクールソーシャルワーカーの活躍に期待しています。

(5)都立高校との連携強化

 都立高校ではエンカレッジスクールという制度もありまして、学力考査なしに中学から進学してくる仕組みです。高校で話をうかがいましたら、学力が高校レベルに達しておらず、補習の負担が重い、学習障害やADHD(注意欠陥・多動性障害)などの生徒の状態が中学から共有されていないため、適切な指導ができない、といった問題が生じていました。

 小中学校を所管する区の教育委員会と、都立高校の連携は十分でない現状です。産まれてから高校卒業の進路決定まで、切れ目のない子どもの貧困対策が重要です。区内の都立高校と小中学校を所管する区教育委員会との連携も密にするべきです。

 こうした施策の財源の1つに、例えば「パチンコ税」の導入なども検討すべきと考えています。ギャンブル依存症も子どもの貧困につながる要因の1つです。親がギャンブルで破綻した末路にも、子どもの貧困はあります。この課税目的には、社会的意義があり、ギャンブルを愛好する人、そして事業者にも理解されるのではないでしょうか。引き続き様々な角度から、子どもの貧困対策に向けて提言していきたいと思います。

<大田区議会議員 岡高志>

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