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2016参院選 今こそマニフェストの復権を

政治山 / 2016年6月23日 11時50分

争点はアベノミクスの是非、安倍政権への評価

 参院選が始まりました。参院選の焦点は、3年半の自民党安倍政権をわれわれ国民がどのように評価するかだと思います。大きな争点は、経済政策であるアベノミクスの是非、そして、昨年の安保法制の議論など安倍首相の政権運営です。特にアベノミクスは、道半ばなのか失敗なのか、与野党意見が分かれるところです。ただし、その恩恵が地方に行き届いていないことは、与野党ともに認識は同じです。解決策はアベノミクスを継続することなのか、失敗だというのであれば野党は具体的な対案を示しているのか、そこを国民がどう判断するかがポイントです。

 また、今回から、18歳選挙権がスタートして、若者も含めて、投票率がどうなるかも注目されています。アメリカの政治学者アンソニー・ダウンズによると有権者の投票参加に影響する要因は、次の4つであるといいます。「自分の投票の重要性」(選挙が接戦になっているかどうか)、「政党(候補者)間の期待効用差」(主張や政策の違いが明確であるかどうか)、「投票コスト」(投票日の天候や、投票の利便性等、有権者の投票への負担を取り除くこと)、「長期的利益」(選挙による民主主義のシステムが我々にとって価値のあるものだという意識)です。1番目、2番目の要因は、多分に政党や政治家に負うところが大きいと思います。現実、2009年8月、当時の民主党がマニフェストを掲げて政権交代を実現した衆院選の投票率は、ここ25年間の国政選挙で最高の69.28%でした。

「お願い」から「約束」に選挙を変えたマニフェスト

 2003年11月の衆院選の際に、国政で初めてマニフェスト選挙が導入され、今回の参院選で9回目の国政選挙になります。そもそも、マニフェスト(政権公約)とは、従来の公約と比較した概念です。スローガン調で抽象的、破られて当たり前の選挙の公約を、具体的な数値目標や期限、財源、工程表等で明示し、事後検証を可能にし、政治家が覚悟を持って断固実行しようとする公約がマニフェストです。

 マニフェストは、従来の「お願い」から「約束」に選挙を変えるための道具でした。しかし、マニフェストを掲げて政権をとった民主党が、高速道路の無料化や、ガソリンの暫定税率廃止等の目玉政策が実現できずに失脚したこともあり、マニフェストは「詐欺フェスト」、嘘つきの代名詞になってしまいました。残念なことに、民主党の流れを組む民進党は、公約集に今回からマニフェストの言葉も使っていません。

参議院議員選挙2016「重点政策・公約比較表」
各党が参院選に向けて発表したマニフェスト

“選挙公約は守らなければならないもの”国民の意識は変化

 選挙の際に具体的な公約を掲げて、それを政治家が断固やり抜くこと自体を否定する人はいないはずです。つまり、マニフェストが悪いわけではなく、マニフェストにできないことを書き、約束の実現に覚悟を持って取り組まない政治家や政党が悪いのです。マニフェストへの信頼は失墜しましたが、その効用は確実に残っています。選挙の公約は守らなければならないものという国民の意識の変化からも、日本の民主主義のレベルは確実に上がってきました。現在政権を担う自民党も、看板政策であるアベノミクスが失敗と国民に判断されれば、政権を失うこともありえます。今こそマニフェストの真価が問われています。

 現在の日本は、人口減少、財政問題、将来の社会保障への不安、非正規雇用の増加、所得格差の拡大など、課題が山積、先行きが見えない状況です。今回の参院選においても、アベノミクスの是非、消費増税先送り、安全保障問題、憲法改正など、さまざまな争点があります。各政党が、明確な国の進むべき方向性、それを実現するための具体的な政策、各争点の立ち位置が示されたマニフェストを正々堂々と掲げ、候補者がそれを国民に分かりやすく伝える努力をする。それが投票率向上の大前提になると思います。

        ◇

早稲田大学マニフェスト研究所によるコラム「マニフェストで実現する『地方政府』のカタチ」の第47回です。地方行政、地方自治のあり方を“マニフェスト”という切り口で見ていきます。

<青森中央学院大学 経営法学部 准教授、早稲田大学マニフェスト研究所 招聘研究員 佐藤 淳>

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