第105回 マネ友による研修改善の勇気ある実践例~早大マニフェスト研究所人材マネジメント部会が目指すもの(10)
政治山 / 2021年3月4日 10時0分
早稲田大学マニフェスト研究所によるコラム「マニフェストで実現する『地方政府』のカタチ」の第105回です。地方行政、地方自治のあり方を“マニフェスト”という切り口で見ていきます。
◇
早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会への参加時、または参加後に、マネ友(部会のプログラム修了者)が実践した勇気ある実践の取り組みを紹介する。今回は、組織における研修改善の実践例である。
![2017年度夏期合宿集合写真](https://seijiyama.jp/wp-content/uploads/2021/03/0b247861e777ecc7c5856cff7bcbe894-500x375.jpg)
2017年度夏期合宿集合写真
静岡県藤枝市のマネ友は、部会に参加した自分たちの気付きを実践したいという思いから、人事課と連携して、2年目職員のフォロー研修を実施した。採用2年目職員を対象としたのは、「入庁前と入庁1年後で、ギャップを感じている職員が多いのではないか」という仮説を立てたから。この仮説から研修の狙いを次の3つとした。
(1)「職場を良くしたいという思いは、誰もが同じであるということ」の共有
(2)「組織変革は、自分の小さな一歩から始まるということ」への気づき
(3)先輩職員との「ななめの関係」を築き前向きな気持ちを生み出すこと
以上の3点である。
実際の研修は、職場、組織の「ありたい姿」を考える重要性、およびそれを実現するための方策について自分自身で考え、また、そのことについて同じ境遇の仲間と対話する。その結果、お互いに刺激、協力し合える関係性を生み出し、全体的な底上げ、成長できると考えられるようなプログラムに工夫した。参加者の研修後の反応は良好だった。
(マネ友連載第44回「まちの元気はまず職員から」)
長野県伊那市総務課人事係のマネ友は、新規採用職員研修の担当となり、研修のあり方に問題意識を感じていた。というのは、内定者は4月1日付けで入庁し、各部署に配属される。配属先では、日々の業務に追われることになるため、入庁前に「伊那市」についての知識を共有し、共通した基盤を作ることができないと考えたからだ。
そのため、内定者向けの研修会で、市の総合計画を題材に、事前に読む必要のない読書会ABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ)を行うこととした。開催に向けては、上司の後押しと、ABDに詳しいマネ友の協力があった。
本番はタイムマネジメントに失敗したところはあったものの、「総合計画をみんなで読んだことにより伊那市の目標を知ることができた」「話を聞くだけの研修ではなく、自ら意見を考えプレゼンする機会となり充実した研修だった」といった前向きな感想を参加者からいただいた。
(マネ友連載第55回「自治体の総合計画をみんなで読んでみる」)
![一関市役所の新任課長・係長研修の様子](https://seijiyama.jp/wp-content/uploads/2021/03/a43c33cd94afdb0cd944790bc0065443-500x281.jpg)
一関市役所の新任課長・係長研修の様子
従来、一関市では、岩手県市町村職員研修協議会が主催する全県からの集合型の階層別研修(監督者級および管理職級研修)に、新任課長、係長を派遣していた(課長は2日、係長は2日半)。担当していた総務部職員課のマネ友の問題意識は、研修がその後の部下職員に対するマネジメントの実践や人材育成に結び付いていない、同じ時期に役職者になった職員同士のネットワークが構築されていないということであった。
2017年度、内容を一新し、一関市単独、通年で開催する形式にリニューアルすることにした。新しい研修は、受講者同士の対話を通じて、新任課長、係長として目指す姿や組織成果を向上させるための手段を、自ら考え、実践し、振り返ることで、管理職としてのリーダーシップの発揮とマネジメント能力を高めることを目的とした。
新任課長、係長、それぞれ、筆者が講師となる研修会を3回と、市内のNPOにお願いして管理職として必要となるスキルであるファシリテーションの基礎講座の合計4回の集合研修を、間隔を空けてインターバルを取りながら実施された。
特徴的な点は、第1回の研修で、「先輩課長、係長の話を聴く」をテーマに、受講者からリクエストのあった尊敬する先輩管理職(部長や課長)にも参加いただき、ワールドカフェで対話を行うこと。ワールドカフェを通して、自分だけが悩んでいるのではなく、皆が似たような不安を感じていることが共有され、先輩管理職からのアドバイスにより、解決策の糸口をつかむことができた。
また、第1回と第3回の間に、立教大学の中原淳教授の著書「駆け出しマネージャーの成長論」を課題図書として、読書感想文を書いてもらうこと。最初は嫌々だった受講者も、内容に引き込まれ、自分事に置き換えて感想文を書いてくれた。
(第70回「管理職になり切れない症候群を如何に克復するか」)
青森県五所川原市のマネ友は、若手職員の政策提案力に問題意識を感じて、2016年度より「五所川原市未来志向型人財育成塾」をスタートとした。筆者がアドバイザーとして伴走して、計5回、それぞれが関心のある政策テーマを選び、政策研究を行い、事業提案をまとめあげる。
2017年度からは、五所川原市と圏域1市4町(つがる市、鯵ヶ沢町、深浦町、鶴田町、中泊町)が、定住自立圏の形成に関する協定書を締結したこともあり、定住自立圏の枠組で継続実施している。2017年度は、6月から12月まで全5回で開催。圏域内2市4町から若手職員18人が参加し、定住自立圏の共生ビジョンに謳われた3つの政策課題(1.子育てネットワークの強化、2.広域観光の推進、3.交流・移住の推進)に分かれて、政策研究を行った。
(第75回「圏域マネジメントを担う職員の人材育成」)
早稲田大学マニフェスト研究所 招聘研究員
佐藤 淳
1968年青森県十和田市生まれ。早稲田大学商学部卒業。三井住友銀行での12年間の銀行員生活後、早稲田大学大学院公共経営研究科修了。青森中央学院大学 経営法学部 准教授(政治学・行政学・社会福祉論)を務め、現在は早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員として、マニフェスト型の選挙、政治、行政経営の定着のため活動中。
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