「長生きこそ、最高の芸術である」(朝比奈隆)【漱石と明治人のことば64】

サライ.jp / 2017年3月5日 6時0分

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今年2017年は明治の文豪・夏目漱石の生誕150 年。漱石やその周辺、近代日本の出発点となる明治という時代を呼吸した人びとのことばを、一日一語、紹介していきます。

【今日のことば】
「長生きこそ、最高の芸術」
--朝比奈隆

朝比奈隆は93歳で没する直前まで、現役の指揮者として指揮棒をふるった。音楽の師であるエマヌエル・メッテルの「一日でも長く生きて、一回でも多く舞台(ステージ)に立て」という訓えが心にあった。そうした歳月の中で、いつからか掲出のことばをよく口にするようになったという。

朝比奈隆は明治41年(1908)生まれ。生誕地は夏目漱石と同じ東京・牛込(現・新宿区)。京大法学部卒業後いったんは阪急電鉄に入社し、まもなく同グループの百貨店勤めとなった。

だが、子どもの頃からバイオリンを習い、大学時代もオーケストラに参加し親しんだ音楽への愛着が捨てきれず、退社。大学で学び直しながら音楽学校の講師に身を転じ、指揮者として再スタートした。

朝比奈は、半世紀以上にわたり大阪フィルハーモーニーの交響楽団の常任指揮者をつとめた。同事務局には、朝比奈が愛用した指揮棒が残されている。

以前、取材でその1本を手にとり、つぶさに眺めたことがある。長さ32センチ。先っぽが少し削れている。聞けば、振りながら手に馴染むよう長さや重さを微調整するため、本人がかじったのだという。

そんな棒先にも、一日一日を大切に積み上げた長い音楽生活の足跡が、確かに刻まれているのであった。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『夏目漱石 100の言葉』(監修/宝島社)などがある。2016年には、『サライ.jp』で夏目漱石の日々の事跡を描く「日めくり漱石」を年間連載した。

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