親の終の棲家をどう選ぶ?| 壊れていく母、追い詰められる父【その1】

サライ.jp / 2019年4月5日 11時0分

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取材・文/坂口鈴香

親の終の棲家をどう選ぶ?| 壊れていく母 追い詰められる父【前編】

「何かおかしい」「もしかしたら、認知症のはじまり?」……高齢の親の様子に違和感を持ちつつも、「まさかうちの親が」「年のせいだろう」と不安を打ち消しながら過ごしているうちに数年が経過し、病院に連れていったときにはかなり進行してしまっていた、という例は少なくない。

大島京子さん(仮名・50)が母・総子さん(81)の異変を感じたのは、父・敏夫さん(83)の入院中のことだった。当時、大島さんの両親は二人暮らし。大島さんと兄(53)は独立し、電車で30分ほどの場所に住んでいた。
母がおかしい
がんの疑いで手術した敏夫さんは術後のせん妄がひどかったが、どうしても自宅に戻りたいと主張し、退院することが決まった。そのことを大島さんに伝える総子さんの言動に違和感を覚えたという。

「『あと2、3日は入院していてもらわないと困る。京子が勝手に先生と話して決めたんだろう! 私が今すぐ病院に行って、もっと入院させろと言いに行く』とすごい怒りようでした。私がいくら『お父さんが決めたこと』だと言っても母の怒りはおさまりません」

「京子は会社に行って楽をしている。お前は嘘つきだ」と、何時間も京子さんを責め続けたという。
追い詰められた父がウツに
結局、予定通り敏夫さんは退院した。せん妄も残り、排せつの失敗もあったため、会社帰りに大島さんは実家に通うことになった。次第に敏夫さんの状態が落ち着いていっても、総子さんは突然激怒するなど、依然として感情の浮き沈みが激しかった。

病院で検査をしようとしても断固として拒絶していた総子さんだったが、兄が説得して何とか病院に連れていったところ、アルツハイマー型認知症と診断された。そこで、敏夫さんと大島さんが介護保険の申請をしようとすると、「お前たちがグルになって私をバカにしている。私なんて早く死ねばいいと思っているんだろう」と暴言を吐き続けた。

この過程で、敏夫さんはたびたび体調を壊し、救急車で搬送される。入退院を繰り返すようになっても、総子さんは敏夫さんを責め続けた。兄や大島さんが止めに入ると、「お前たちはいつもお父さんの味方をして、私を悪者にする」と怒りはさらにエスカレートした。たまりかねて、敏夫さんや兄までもが泣いてしまうこともあった。

「兄は、父が介護ウツになっているのではないかと疑っていました。母が『あんたなんかいらない。役立たず』と言うと、それをまともに受けた父が号泣。母はなぜ父が泣いているのかわからず、兄に電話したそうです。電話口で、父が『もうダメだ』と言っていると」

大島さんは、両親を一緒に病院に連れて行った。診断は――

「父はウツ傾向が強いと、そして歩行状態も悪くなっていた母は、『正常圧水頭症』の疑いがあると言われました」

脳と頭蓋骨の間や脳の中には髄液が入っており、絶えず循環し新しく入れ替わっている。ところが加齢や頭への軽度の衝撃などの要因で、脳内に髄液が溜まってしまい脳の働きが悪くなることがある。これが「水頭症」だ。認知障害、歩行障害、尿失禁という症状が特徴で、手術をすれば症状が治る場合もある。

しかし、このとき総子さんは専門外来のある病院への紹介を拒否している。

そして、敏夫さんは介護保険を利用することになった。腹痛がひどくなるなど、体調悪化が顕著になり、ついには意識障害を起こして入院。要介護5となったのだ。
【その2に続きます】

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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