UCCが先駆けて取り組む水素焙煎コーヒーの可能性とは?
食品新聞 / 2024年6月28日 12時51分
UCCグループは、持続可能なコーヒー産業のため、グループ全体でサステナビリティ活動を推進している。
その中でも異彩を放つ独自の活動が、水素を熱源とするコーヒー豆の焙煎だ。
レギュラーコーヒーの主力工場「UCC富士工場」の大型焙煎機に、水素を熱源とするバーナーを実装し、2025年4月の運転開始を予定している。
水素を熱源とする焙煎機の特徴としては、以下の3つが挙げられる。
▽CO2を排出しないコーヒー豆の焙煎
▽水素、化石燃料、水素と化石燃料の併用と3パターンの焙煎が可能
▽水素ならではの味覚表現の可能性
通常、コーヒー豆は化石燃料を燃やして発生した熱風を焙煎釜に送り込むことで加熱する。
水素を熱源とした焙煎では、水素を燃やして発生した熱風で焙煎する。
使用する水素は、官民・他業界の垣根を越えた連携とNEDOの採択を受けて開発されたP2Gシステムを使う。再生エネルギーをベースとした電気で水の電気分解を行ってつくられるため、実質的にCO2フリーの熱源となる。
焙煎機に使われるバーナーは、水素だけでなくLPGや都市ガスなどの化石燃料でも焙煎が可能となる。
研究の結果、水素を熱源とする焙煎はコーヒーの味わいのバリエーションにも貢献する可能性も浮上。今までにない、水素焙煎ならではの味わいを引き出せる兆しが見えている。
コーヒー豆の焙煎温度は、抽出後のコーヒーの味覚にもかかわる。水素を熱源とすることで、焙煎時の高温から低温の温度調整の幅が化石燃料よりも広くなることが明らかになった。
これにより、例えば高温で一気に焙煎したり、途中からじわじわと温度を引き上げたりと多様なバリエーションで焙煎できる。UCCグループが持つ焙煎プロファイルコントロール技術と組み合わせることで、水素焙煎でしか出せない味のコーヒーを楽しめる可能性が生まれている。
水素焙煎ならではの味わいという高い付加価値がつけば、水素のコストと相殺される可能性もある。
加えて、水素を熱源とするバーナーを対象に、ヒートエナジーテック社と共同で特許を出願。焙煎機ではなくバーナーが対象のため、コーヒー以外の食品にも活用し、食品産業全体に脱炭素化の取り組みが波及する可能性がある。
現在は、工業レベルでの焙煎を控えてテスト製造を進めている。自社展示会以外の場でも水素焙煎コーヒーの試飲を実施することで、水素焙煎コーヒーの認知拡大や水素が持つ環境負荷軽減などの可能性を啓発している。
昨年は、5月にG7広島サミット国際メディアセンターで水素焙煎コーヒーを各国メディアに提供したほか、同センターの政府広報展示にてパネルで紹介した。
同年9月には、第6回水素閣僚会議にて前年に引き続き水素焙煎コーヒーを提供している。
今年1月には、「水素でかわるHANEDA未来展」の企画に協力。会場内でアンケート回答者に無償で水素焙煎コーヒーをふるまった。水素や水素焙煎に関するパネルも展示した。
水素焙煎コーヒーの取り組みは「より良い世界のために、コーヒーの力を解き放つ。」というUCCグループのパーパスに基づいた、早期のカーボンニュートラル達成に向けたグループ全体での戦略的な取り組みの一つ。
UCCグループは、21年3月にサステナビリティに関するグローバルプロジェクトの検討を開始。約1年間の検討の結果、22年4月にサステナビリティ指針「コーヒーの力で、世界にポジティブな変化を」を定めた。
このサステナビリティ指針のもと、「自然を豊かにする手助けを」「人々を豊かにする手助けを」という2つの重点領域を定めた。
「自然を豊かにする手助けを」では、2030年までに健康・教育分野で社会に大きなインパクトを与えていくことと、UCCブランドを100%サステナブルなコーヒー調達豆使用とすることを目標に掲げる。
一方、「人々を豊かにする手助けを」では、2040年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにするカーボンニュートラルの実現と生物多様性を保全するネイチャーポジティブアプローチの実践を目標とした。
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