家庭用チーズ 物量は1割近く減少 物価高で節約意識が影響 23年度
食品新聞 / 2024年7月26日 11時22分
23年度の家庭用チーズ市場は、22年から輸入原料をはじめとするコスト増や23年4月の乳価改定に伴う複数回の価格改定で物量を1割近く落とした。24年度メーカーは消費量回復を最優先課題に、間口と奥行を拡大する提案を強める。
前期は日常で使用頻度が高い調理向けチーズが牽引し、おつまみ系チーズは高単価品を中心に苦戦した。23年春の価格改定から一巡した24年4~5月は売上高が前年並み、物量2%減で推移。引き続き消費回復が課題となったが、前期はプロセスとナチュラルが同程度だったのに対し、この4~5月はプロセスが前年割れ、ナチュラルが2%程度増で市場を牽引した。
なかでも昨年最も苦戦したカマンベールは9%近く伸ばし、23年4月に40~50円程度値上がった際の買い控えが薄れてメーカーの多様な食べ方提案や新商品も寄与したといえる。
反対に、23年度需要が底堅かったシュレッドチーズは足元で前年割れとなった。前年好調の反動に加えて、輸入と国産でも消費の動きに違いが出たとみられる。
「23年度から輸入が上がりすぎて国産に価格が追い付いてきたイメージ。国産が比較的安く見える分、手に取る人も増えた」(明治)。輸入原料チーズの価格はピーク時から軟化したものの、円安の影響で厳しい状況が続いている。国産チーズは23年春の価格改定で一部離反があったが、「一定程度の価格帯に入ると、この価格なら国産にするなど国産に価値を感じる人も多いことが証明された」(雪印メグミルク)とする声もあり、国産ならではの味わいや品質が評価されている。
価格勝負から価値訴求へ 嗜好系チーズの提案強化
今後の市場について、森永乳業担当者は「直近の状況をみると、安い方が売れるというのには限界が来ている。これからは間口と奥行を増やす取り組みを本格的にしなければ、チーズ全体が落ち込んでしまう」と指摘する。23年度に野菜の価格高騰などもあり厳しかった同社モッツァレラは、足元で二ケタ伸長と大きく回復している。「価値に見合った価格設定をしている商品は、PBなどに比べて多少割高にはなるかもしれないが、それ以上の価値を感じてもらえれば消費は増えていく。人の間口と食べ方の間口の双方を広げて消費量を増やすことが重要」と語る。
全く新しいチーズの価値を提案し好評となっている商品の一つに、雪印メグミルクの「雪印北海道100 マスカルポーネドルチェ」がある。ご褒美時間に寄り添うデザートチーズとして打ち出した商品で「20~30代単身女性がメーンターゲットで非常に好調に推移している。週末に映画などをゆっくり見ながら食べて欲しい」(担当者)としている。今後はモデルの貴島明日香さんを起用したプロモーションや、消費者を飽きさせない提案を継続する。
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