セコマのヒミツ① 業界に先駆けコンビニ開業 創業期から息づく自前主義 “3つの事件”経て先鋭化
食品新聞 / 2024年11月20日 10時2分
日本のコンビニ業界に先駆けて1971年、北海道札幌市に1号店をオープンしたセイコーマート。1974年の会社設立以降、「集団脱退事件」「ジンギスカン事件」「レジスター事件」の3つの“事件”を経験し、そこで学んだ教訓を胸に大手コンビニチェーンとの自前主義を先鋭化。自前主義を推進すべく製配販のサプライチェーンを構築して独自路線を歩む。独自路線の礎となる創業・黎明期の逸話についてセコマの赤尾洋昭社長に聞く。
セコマの実質的な創業者は、赤尾社長の父で元代表取締役会長の赤尾昭彦氏。北海道留萌高校卒業後、北の誉酒造に入社、その後まもなく北海道で当時3番手の販売金額シェアを占めていた酒類卸会社・丸ヨ西尾商店に転籍した。
赤尾洋昭社長「当初は公務員になるつもりだったが、給料に惹かれて酒の業界に入ったと父から聞いている。当時の公務員の月給が7200円で、父が就職した会社は9000円だった」と赤尾社長は語る。
入社時の主な卸先は、個人経営の酒屋や飲食店だった。だが、まもなくして第二次流通革命によりスーパーが勃興。さらに某大手スーパーが北海道に進出するという話が広まる。
これを受け「父の胸の内には、大手スーパーの進出によりウエートの高い卸先である個人商店が潰れてしまうという強い危機感があった」という。
このような危機感を抱く中、赤尾昭彦氏がある企業の広報誌をめくると、コンビニ黎明期と題した記事に目がとまる。これに瞠目し当時、日本にはないコンビニ業態に活路を見いだし、アメリカへ渡る。
「記事をきっかけにアメリカのコンビニを視察したのがセイコーマート設立の最初の動きとなった。当初は自らコンビニを手掛けるという考えはなく、卸先の経営近代化による存続のためだったと聞く。卸先がコンビニを経営すれば、スーパーが進出してきても存続し、その結果、卸も生き残れると考えたようだった」と説明する。
1971年8月、卸先の個人商店を支援してコンビニへと業態を変更し「コンビニエンスストアはぎなか」(現・セイコーマートはぎなか店)がオープンした。これが1号店となる。
1号店の運営に、丸ヨ西尾は新規事業の位置づけで関与。丸ヨ西尾から独立し、セイコーマート(現セコマ)を設立したのが1974年。
加盟店が数十店に拡大した頃から自前主義の考えが芽生える。
「酒類や食品のルートはあったが、それ以外はほかから仕入れていた。惣菜や日配品は店が市場から仕入れていた。惣菜のメーカーを探したが採算が合わないといった理由で供給してもらえず、そこで自ら作り始めようと1979年に立ち上げたのが東部食品」と振り返る。
東部食品は、加盟店の組合(セイコーマート商業協同組合)とセコマが半々ずつ出資して設立された初の自社工場。現在の北燦(ほくさん)食品の源流となる。
のちに東部食品は、丸ヨ西尾などと2002年に合併して、セイコーフレッシュフーズへと社名変更。これと軌を一にして商品開発のために北燦食品が設立される。
北燦食品は現在、惣菜・サラダ・調理麺・サンドイッチなどの商品開発と製造に加えて野菜や果物などの生鮮品の商品仕入を行っている。
一方、セイコーフレッシュフーズは、商品調達から配送、販売までを手掛ける総合卸。現在では、常温・冷蔵・冷凍の全温度帯で飲料水・生鮮品・菓子・雑貨・アイスクリーム・冷凍食品など幅広い商品の卸・配送を担っており、卸・配送先はセコマグループの小売店にとどまらず道内外の業務用ルートなど多岐にわたる。
製配販サプライチェーン構築のはしりとなった東部食品の設立。セイコーマートの店舗数も徐々に拡大し、100店舗を達成した頃、集団脱退事件が勃発する。
(つづく)
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