進む「脱・歳暮化」 自家需要に活路 ご褒美、ご馳走品を充実
食品新聞 / 2024年11月22日 15時16分
2023年のギフト市場規模は10兆円超と言われる。だが中身をみると、企業間の中元・歳暮など儀礼的要素が強いギフトは縮小傾向。家族や友人に贈るパーソナルギフトが好調に推移している。そのパーソナルギフト自体も近年は伸び率が鈍化していることから、取り寄せや自宅消費などセルフユースに向けた商材に注力して巻き返しを図る動きがみられる。
大丸松坂屋百貨店では今期、頒布会システムを活用した「おいしい定期便 月イチごほうび」をオンライン限定で初展開した。毎月異なるメーカーのスイーツや総菜を3か月連続で届ける。「GOHOUBI(ご褒美)」のタイトルで、22年の歳暮商戦から展開するカタログの一企画として販売した。
GOHOUBIカタログでは今夏の中元商戦で人気のスイーツなどを販売して前年売上を上回った。また「当企画商品は、オンラインストアからの注文が半数を上回っていることも特徴」(同社)。中元、歳暮利用者以外の新たな顧客層の流入がうかがえるという。
近鉄百貨店では、鍋物や年末年始のパーティーメニューを強化した。コロナが5類に移行した昨年の歳暮商戦で鍋の具材セットを増やしたところ、前年比3割以上伸びた。今歳暮では販売アイテム数を増やし、専用特集を組んで展開する。「今年の年末は最大で9連休。円安や物価高もあり、旅行に行かず自宅で過ごす人が増え、『ご馳走』需要が伸びる」と予想した。
百貨店が中元、歳暮商戦で自家需要を強化するのは、市場縮小に危機感を募らせるからだ。ギフト市場全体が拡大するなかで、好調なのは気軽な贈り物や手土産といったカジュアルギフトであり、中元、歳暮市場は年々3~5%減少している。「『のし』利用の儀礼ギフトは低下する一方、パーソナル需要は好調。物価上昇が継続して、法人を中心とした贈り先の精査はより進んだ印象を受ける」(ジェイアール東海髙島屋)。百貨店のMDを生かした差別化商材を充実することで売上の底上げを図る。
また中元、歳暮商品の利用用途を広げる動きも活発化している。カタログでは近年「歳暮」「中元」のタイトルが消えつつある。「新たな顧客を取り込むべく、昨年から『冬の贈りもの』に変更。よりパーソナルな需要を意識したカタログに再構築した」(同)。
阪急阪神百貨店でも、今夏の中元で「のし」の選択肢を増やしたところ、「暑中見舞い」や「残暑見舞い」が多く見られた。「中元、歳暮とわれわれが決めるのではなく、利用シーンを広げる商品、仕組みづくりが大切だと感じた」という。「脱歳暮」に向けた様々な切り口によって、市場浮上の活路を見いだそうとしている。
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