キーコーヒーがエチオピアの小規模コーヒー生産者を支援 社員が現地に赴き調査と営農セミナー実施 環境省から業務受託
食品新聞 / 2024年12月16日 11時31分
モカの栽培地でコーヒーの発祥地とされるエチオピアのコーヒーが気候変動の影響を受け持続的な生産が危ぶまれている。
キーコーヒーが12月4日に開催した「令和6年度気候変動に脆弱な小規模コーヒー生産者の明るい未来提案業務」の報告会で明らかにされた。
同業務はキーコーヒーが環境省から今年4月に受託したもの。
この意義について、報告会に招かれた環境省地球環境局特別交渉官の小川眞佐子氏は「エチオピアなくしてコーヒー産業は成り立たないといっても過言ではない。エチオピアの小規模生産者の生計を向上させつつ、気候変動に対応した持続可能な生産を確立することは、日本のコーヒー産業にとっても重要であると考えている」と語る。
左からキーコーヒーの藤井氏、有永氏、柴田社長、ダバ駐日エチオピア連邦民主共和国大使、環境省地球環境局特別交渉官の小川眞佐子氏、環境省地球環境局総務課気候変動適応室の松田英美子氏、EIARのフカドゥ氏、JARCのレミ氏キーコーヒーは小規模生産者支援の一環として同業務を受託。報告会の冒頭、キーコーヒーの柴田裕社長は「今回報告させていただくことを大変光栄に思う」と挨拶した。
同業務は調査と提案から成る。調査は、エチオピアコーヒー生産量の7割を占めるエチオピア最大のコーヒー生産地・オロミア州で実施された。
キーコーヒーの有永直子氏は9月、オロミア州南西部最大の都市・ジマを訪れ、生産組合にインタビューを実施した。
その内容について有永氏は「今年は降雨パターンの変化が起こっていることが確認できた。雨季だけではなくて、乾季にも雨が降り本来の開花期ではない時期に開花した。そのため収穫期も大幅にずれて例年10月のところが7月に収穫が始まり、収穫期がずれたことで売る場所が見つからないといった問題も発生していることが分かった」と説明する。
加えて、従来よりも高温の日が増えたことで、乾燥工程の際にコーヒー豆の表面が急激に乾燥してヒビが入り品質が低下していることも判明した。
木製ハンドパルパーこれを受け、11月16日から27日かけて、キーコーヒーの藤井宏和氏が現地を訪れ約30人の小規模生産者を対象に営農セミナーを実施。
セミナーでは、有永氏のレポートを共有し精選時での木製ハンドパルパーの導入とコーヒーノキの新植を提案した。
木製ハンドパルパーのメリットについて、藤井氏は「現地で簡単に製作でき、手動のため電気不要。コンパクトなため圃場に運んで使用できる。もっと大きなメリットは皮をむいて乾燥させる方法に変更するため、雨が多い時期でも乾燥しやすい」と述べる。
気候変動対策については「品種改良が大きな解決策」とした上で、農法上では新植を推奨。「乾燥を経て雨が降ると、コーヒーの花が開花するのがメカニズム。コーヒーノキが年老いてしまうと、どんどん鈍感になり、そのメカニズムが機能しにくくなる」との見方を示す。
左からダバ駐日エチオピア連邦民主共和国大使と柴田社長エチオピア農業研究所(EIAR)クロップ・ダイレクターのフカドゥ・グルム氏とジマ農業研究センター(JARC)センター長のレミ・ベクシサ氏を招き日本での研修も実施した。トップクラスの研究機関や大学、キーコーヒー関東工場や開発研究所、スーパーなどのコーヒー売場を訪れたという。
駐日エチオピア連邦民主共和国のダバ・デブレ・フンデ特命全権大使は「アビー・アハメド首相が主導する森林再生キャンペーン『グリーン・レガシー』イニシアティブと生産者の意識の高まりにより、全体的なコーヒー生産は落ちていないが、コーヒーの栽培面積の増加と比例しているものの生産性は向上していない。これは有機性を維持するため農薬の使用を控えているため。気候変動は世界共通の課題であり、この影響を軽減するためには集団的な取り組みが必要。小規模コーヒー農家を支援することは将来の供給を確保する上で非常に重要」と呼びかける。
キーコーヒーは、インドネシアのトラジャ地域で50年以上にわたり直営農園を運営しているほか周辺の生産者との関係を構築。
ラニーニャ・エルニーニョの影響を受けつつ知見・経験を積み、完全な適応策は確立されていないものの、様々な対策を複合的に組み合わせて取り組んでいる。
今回の受託業務は、トラジャでの経験・ノウハウを活かしたものとなる。
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