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新春恒例 業界リーダーアンケート 先行きの不透明感増す 万博で活性化なるか

食品新聞 / 2025年1月1日 0時9分

原料高やコスト高を背景に価格改定に踏み切るも、消費者の生活防衛意識は強まり、末端では再び価格競争が盛んになってきた。ほかにも、世界情勢や気候変動など不安要素を多く抱えたまま新しい年を迎えた。一方で大阪・関西万博の開催、それに起因するインバウンド需要の拡大などへの期待も強まる。こうした現状の中、食品業界はどこへ向かうのか。今年も業界のリーダーにアンケートを実施し、約100社から回答を得た。

〈今年の景況感〉「見通せない」が4割に 前年より11ポイント上昇

例年通り、まずは「今年の景況感」から尋ねた。24年に比べ「良くなる」「悪くなる」「変わらない」「見通せない」の4つの選択肢を用意。

一昨年、昨年に続き今回も「見通せない」という回答が最も多く4割を超えた。まだ、コロナ禍にあった一昨年に比べ、ポストコロナを迎えた昨年は「見通せない」との答えが一番多かったものの、その比率は前年より9ポイント低下し、「良くなる」とほぼ同じ割合だった。それに対し今回は「見通せない」が11ポイント増え、再び一昨年並みの42%まで高まった。先行きの不透明感が増したことを印象づける。

特に目立ったのが、アメリカ大統領選の結果を受けての回答だ。「米大統領はトランプ氏に決まったが、現時点で具体的な方針が分からない」(日配)、「日本、アメリカにおいて政治の変化が起こり、為替と株価がどうなるのか予測しづらい」(資材)など、今後の日本との関係が見えにくいという感想が多かった。このほか、「継続する原材料やエネルギー高騰の出口が見えない」(菓子)という声や、そもそも「1年先を見通すのは無理な時代になった」(卸)との指摘もあった。

その次に多かったのが「変わらない」というもの。前回(30%)とほぼ同じ29%を占めた。「賃金の増加が消費を支える一方、物価上昇の影響が続き消費の回復は限定的」(卸)、「インバウンドに連動した外食の回復が業務用商品にとってプラスの一方、家庭内消費は物価上昇により節約志向が継続すると想定」(調味料)など、プラス効果の一方でマイナス要因もあり相殺されるというものや、「今年も円安が続くと見ており、原料や人件費など様々なコスト増はこれからも続く」(乾物)、「24年は経済の正常化とインバウンドの再開で一定程度回復したが、物価高が家計を圧迫し個人消費は低迷。このままでは現状維持に留まる可能性が高い」(資材)など、現状から脱するのが難しいという見方も目立った。

「良くなる」という回答は16%で、前回に比べ13ポイント減と縮小したが、「家計の金融資産の積み上がりが継続しており、穏やかな消費拡大が続くと思われる」(小売)、「賃上げや所得控除額の引き上げによる事実上の減税で、消費マインドが上向くのを期待」(レトルト)、「万博開催によるインバウンド需要のさらなる拡大が見込まれ、関西を中心に経済効果を期待」(酒類)といった前向きな声が多かった。

一方で「悪くなる」は4ポイント増え13%。「さらなるコストプッシュの一方で、売価は上がらない」(畜肉)、「原料などのコストアップに価格転嫁が追いつかない」(日配)、「価格重視の消費が進み、それに伴う価格競争の激化で業界全体が減益傾向になる」(小売)、「価格競争が景気を良くするとは思われない」(調味料)などコスト高と価格競争を要因に挙げる回答が目立った。

〈価格訴求か転嫁か〉「転嫁すべきだ」が半数 バランスも大事 

2024年も食品業界では、原料高やコスト高に起因する価格改定が進んだ。だが、それに伴い消費者の節約志向は強まり、買上点数の減少に悩むスーパーは再び値下げ競争に陥った。原料高や人件費・物流費の高騰は継続しており、今年もすでに多くのカテゴリーで値上げが発表されている。

価格転嫁が避けられない状況ではあるが、購買を促すには一定の価格対応も必要と考えられる。今後、食品業界はどちらに向かうべきなのか。「価格訴求を強化し節約志向に対応」すべきか、「価格訴求は控え転嫁する」べきなのか。この2つに「その他」を加え3つの選択肢から選んでもらった。

結果、約半数(49%)が「価格訴求は控え転嫁する」を選択。「価格訴求を強化」は5%にとどまった。「コスト増要因の多い中、価格訴求は企業経営を不安定にする」(製糖)、「海外先進国と比較し日本の賃金は相対的に低いため、適切なインフレを促す必要がある」(調味料)、「行き過ぎた価格訴求への対応は競争激化につながり、卸と小売の疲弊を招くため慎重に対応」(卸)、「食品に対する要求レベルが年々厳しくなる中、持続性を担保するためにはそれに見合った製品価格の設定が必要」(資材)。コストアップや円安を背景に、価格転嫁しなければ事業を継続するのが困難になるという考えが根底にある。

一方、「価格訴求を強化」の回答には「消費者意識に沿った販売、および商品作りが必要」(卸)、「節約志向で消費者市場が小さくなることから、価格訴求はある程度必要」(製塩)など、消費者の要望に対応することの必要性や市場縮小への懸念が表れている。

ただ、価格訴求か価値訴求かという問題に関してはバランスが大事という意見もあり、「その他」は46%と半数に迫った。「無理のない程度の訴求は必要だが、まったく転嫁しないわけにはいかない。上手な転嫁が重要」(卸)、「安価な商品と高価な商品の使い分けが顕著になる」(卸)、「生活防衛意識が高まる一方、プチ贅沢は継続する」(即席麺)、「変動費部分の価格上昇は値段に反映するしかないが、固定費は世界と競争できる削減に挑戦すべきだ」(製粉)、「消費者に納得し買ってもらえる価格を実現する努力も必要。一方で利益を確保し、消費者の生活を支える使命を果たすため企業として持続可能であることも重要」(卸)。

(このほか本紙1月1日号では下記のようなアンケート結果を紹介しています)

・影響を与える事項は? 直面する「コスト高」 根本には「人口減」
・万博・インバウンドへの期待は? 「すでに効果」が3割 海外拡大のきっかけに
・SDGsやCSRへの取組み 食品ロス削減や地域貢献 人材育成、商品開発も

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