飲料・食品製造に発展の兆し 工場で不良品を「排出しない」から「生み出さない」 オムロンの制御技術とキリンの検査技術が融合
食品新聞 / 2022年10月24日 8時0分
オムロンがキリンテクノシステム(KTS)に出資し筆頭株主となることが18日発表され、飲料・食品製造に安心安全の担保と地球環境保全の両面で発展の兆しが見え始めた。
KTSは、キリンビール100%子会社でキリンビールのエンジニアリング部門から独立した総合検査機メーカー。高速検査を支える高度な光学技術と搬送技術、多様な製造現場で培われたノウハウを強みに国内検査機市場で高いシェアを握る。
このほど、オムロンとキリンビールはKTSの株式譲渡契約を締結。キリンビールが保有するKTS発行済み株式のうち60%をオムロンに譲渡する内容で、各種の手続きが完了次第、オムロンはKTSを連結子会社として迎え入れる。
社名は今後、オムロンKTSへと変更され、オムロンからKTSへ数人の取締役が派遣される予定。
オムロンの辻永順太執行役員常務インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長18日、オムロンの辻永順太執行役員常務インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長は「我々が保有する『i-Automation!(アイオートメーション)とKTSが保有する検査機の技術を組み合わせることで、新たなソリューションを生み出し安心安全で充実した飲食、豊かな社会を実現していく」と意欲をのぞかせる。
アイオートメーションとは、 制御進化・知能化・人と機械の高度協調によって消費者ニーズの多様化や労働力の不足など製造業の抱える課題の解決を図るもの。
これにKTSの検査技術が融合することで生み出される新たなソリューションの1つに不良品を生み出さない生産ライン「ゼロディフェクト」を挙げる。
一般的にペットボトル(PET)飲料の製造現場では、前工程を経て中身が充填された製品を検査して不良品が取り除かれる。
その量(不良率)は各製造現場で異なり一概に言えないが「そんなに大きくないが小さくもない数字で、それなりの数字が不良率として存在する」とみている。
ゼロディフェクトでは、KTSの検査機を軸足に、そこから得られる検査データを収集して不良品になった要因を分析・特定。その情報を前工程や後工程に共有してAIで傾向分析する。
これにより「不良品を排出しないという生産ラインの考えから、生み出さない生産ラインに進化。より生産性が高く、地球環境保全にも貢献する新しいモノづくりが実現できる」。
PET飲料製造の検査項目は、PETのもととなる試験管のような形をしたプリフォームへの検査・プリフォームを膨らませた(ブロー成形)PET容器への検査・中身を充填した後のPET容器への検査・ラベルやキャップをつけた後の検査・全体の印字への検査・出荷時の検査など多岐にわたる。
この中で一番の課題としてブロー成形後のPET容器を挙げる。
プリフォーム融合により、この部分の精度を高めることでPETの水平循環リサイクル「ボトルtoボトル」への貢献も見込む。
再生PETでつくられたプリフォームは、不良品率が比較的高く、この原因を追究することでブロー成形の前工程にフィードバックして改善を図っていく。
このほか、検査データを活用することで生産ラインの損傷や揺らぎを検出し突発的な停止を未然に防ぐ「ラインイベントゼロ」や、各生産工程のデータを収集して個体データを完全管理することで「高度品質トレーサビリティ」を実現していく。
トレーサビリティについては、消費者がORコードなどから検査データが取得できるといった青写真を描く。
オムロン出資後のKTSは引き続き飲料・食品の検査機事業に注力していく。
複数の外部データを組みあせたオムロンの推計によると、2021年グローバル飲料業界市場は178兆円で24年には210兆円への拡大を見込む。
これに伴いグローバル飲料検査装置市場も拡大傾向にあり、21年の690億円から24年に820億円へ拡大する見通しを立てている。
オムロンの前期(22年3月期)連結売上高は7629億円。このうち過半の4181億円を占めるのが制御機器事業となる。
24年に連結売上高5150億円を計画し、事業全体でCAGR(年平均成長率)7%の成長を見込む。
この中で主力5事業(デジタル・環境モビリティ・食品&日用品・医療・物流)ではCAGR12%の成長を見込み、KTSはその一翼を担う。
出資によりKTSの販路としては海外に開拓余地を見込む。
「国内外どちらにも可能性はあるが、オムロンの販路を上手く活用していくという点では海外の拡大が非常に大きいと考えている」。
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