オリックス・ホテルマネジメントがサステナブルな取り組みを加速 17の旅館・ホテルにアルミボトル缶の天然水を導入開始
食品新聞 / 2023年1月11日 12時5分
オリックス・ホテルマネジメント(OHM)は22年末に17の旅館・ホテルの客室へのアルミボトル缶ミネラルウォーターの導入を完了しサステナブルな取り組みを加速していく。
22年4月1日に施行されたプラスチック資源循環促進法を受けた動き。
ワンウェイプラスチック製品の削減を推進していく中で、法適用製品(歯ブラシ、くしなど)の削減だけでなく、新たな客室設置飲料用ミネラルウォーターとして伊藤園が業務用で展開しているアルミボトル缶のミネラルウォーターに着目した。
取材に応じたOHMの後藤修二施設運営部担当部長は「伊藤園様からご説明とご提案いただき、ペットボトル(PET)も業界挙げて水平リサイクル(使用済みPETを再びPETに利用すること)に取り組まれていることを十分理解した上で、水平リサイクル率で先行しているアルミ缶に着目した」と語る。
オリックス・ホテルマネジメントの後藤修二施設運営部担当部長「2021年度飲料用アルミ缶リサイクル率」(アルミ缶リサイクル協会)によると、アルミ缶のリサイクル率は約97%で、水平リサイクル率は約67%に上る。
今回の客室設置飲料用ミネラルウォーターの見直しにあたっては、紙や瓶、生分解性PETなど様々な容器のメリットとデメリットを検討し、時間をかけて決定したという。
その結果、「使用済みの紙容器の大半はゴミとなり焼却されることから除外し、瓶容器は重く、運搬時のCO2排出や客室に運ぶ際の労力がネックとなった。アルミ缶は高遮光性、高保存性で、賞味期間が長く設定されるため食品ロスの削減にもつながる」との結論に達した。
ボトル缶の導入は5月に北海道にある2施設(函館・湯の川温泉 ホテル万惣、クロスホテル札幌)で開始。以降、順次エリアを拡大し10月にはほぼすべての対象施設への導入を完了した。
その反響は上々で「6-11月の期間、旅行サイトに寄せられたコメントを各施設で集約すると、サステナブルの取り組みとして非常に好感が持てるといったポジティブなご意見が多く、特に外国人のお客様は大きく反応されご好評をいただいている」と振り返る。
ボトル缶の機能面やボトル缶によるイメージアップにも期待を寄せる。
「ボトル缶は客室の冷蔵庫で冷えやすいといったお声もいただいている。シンプルでスタイリッシュなデザインも高級感の演出につながる」との見方を示す。
オリックスグループの不動産事業部門では、2021年12月に「サステナビリティ推進方針」を策定・公開。OHMもこれに準じて(1)脱炭素化(2)環境配慮(3)安全・安心・快適性(4)地域共生の4つの柱に取り組んでいる。
このうち、アルミボトル缶の採用は環境配慮の一環で、そのほか環境配慮の取り組みとしては歯ブラシなど客室に無償提供しているアメニティ12品目のワンウェイプラスチック削減による環境負荷低減が挙げられる。
「アメニティ12品目の無償提供については、何かしらの抑制・削減が求められることから、バイオマス素材を混合した環境配慮型製品を一部導入し、提供方法も客室に置くのではなく、必要とされる方がロビーのアメニティバーなどからお持ちいただくように運用の変更をしている。切り替え後もお客様からのご不満のお声は少なく、概ねポジティブに受け止められている」という。
食品ロス削減にも貢献する。
OHMでは無駄のない食材調達やビュッフェ提供時における必要量に見合った料理提供を実施している。
2024年度の食品廃棄物の再生利用率50%達成を目指し、廃棄された食品の再生利用なども推進。運営する宿泊施設のうちレストランなどの料飲施設をもつ14施設では、食品ロス削減の啓発を目的としたポスターやPOPの掲示も実施している。
OHMは引き続き4つの活動の柱に注力していく。
「プラスチック削減に留まらず、お客様とともに環境に配慮した取り組みとしていくことを訴えていく」という。
具体的には、アメニティバーの全廃を視野に「“アメニティが常設でない”ことを徐々に浸透させていく」。
そのための方策としては「お客様ご自身の使い慣れたアメニティアイテムの持参いただく呼びかけを実施しており、ゆくゆくはお忘れになられた方へアメニティの販売も視野にいれていく」
販売の際は、オリジナル商品として打ち出し、使い捨てではなく繰り返し使えるものを販売していく考えだ。
アルミボトル缶のミネラルウォーターについてはプレートなどを掲示し、「コンプリメンタリーであることが分かるような文言の下に、サステナブルの観点でボトル缶を採用した理由の記載も検討している」。
地域共生の取り組みでは、地域とのコラボなどを通じて地域と連携を深めていく。
OHMの石井耕平サステナビリティ推進課長は「コロナ禍を機に、地域あっての宿泊施設であることを再認識し、運営の各旅館・ホテルに“地域共創担当者”を任命して、彼らを中心に、地域とのリレーション再構築と、地域に眠っている観光資源の発掘に取り組んでいる」と説明する。
その一例がクロスホテル京都(OHM運営)とグループ施設の京都水族館のコラボで、21年6月から22年2月の期間、オオサンショウウオをモチーフにしたコンセプトルームをオープンしたところ「販売予定室数の90%以上のご予約が埋まり延べ500人以上のお客様にご利用いただいた」と振り返る。
この好評を受け22年3月には第2弾がオープンした。
この一例のようにOHMでは宿泊施設ごとに地域の特性を活かしたプランを販売している。
京都以外にも、「会津・東山温泉 御宿 東鳳」(OHM運営)では会津の伝統工芸品「赤べこ」とコラボし、80匹以上の赤べこを散りばめた客室「べこれーしょんるーむ」を22年12月から販売している。
また、箱根・芦ノ湖 はなをり(OHM運営)では昨夏、お盆限定で“青みかん”を使用したウェルカムドリンクでお客様をお出迎えし、地産地消と食品ロス削減に向けた取り組みとして実施した。
クロスライフ博多天神・クロスライフ博多柳橋では、地元のカフェや喫茶店とのコラボを展開。写真は「manucoffee(マヌコーヒー)」(上)と「manucoffee 春吉店」(下)地域の情報発信拠点との役割も強化していく。
クロスライフ博多天神・クロスライフ博多柳橋(OHM運営)では、地元のカフェや喫茶店とのコラボを展開している。
「クロスライフは、地域の魅力を発見し、実際にその地を訪れ、直接地域との触れ合いを体験していただくきっかけづくりの場の創出を目指しています。福岡には、独自に発展したカフェ文化が根付いており、おしゃれでこだわりを持ったカフェや喫茶店が驚くほど多く点在しています。これほどコーヒー文化が根付いている福岡でクロスライフを出店するのであれば、ホテルでオリジナルコーヒーを出すよりも、ホテルが地元のお店を紹介し、ホテルに宿泊するゲストに福岡のコーヒー文化を実際に体験していただきたいと考えた」と語るのはOHMの田村悠施設運営部課長代理。
この考えのもと同ホテルでは、喫茶・カフェ巡りのきっかけづくりとして地元コーヒー店の商品を提供。今後は定期的に対象商品を差し替えて点在する地元コーヒー店を順次紹介していくことを予定している。
アルミボトル缶によるイメージアップにも期待を寄せる。今後について、後藤担当部長は「地域共創の取り組みとしては、地域にもっと密着しながら新しいルートで新しいものを発掘し、OHMの施設ならではの新しい体験を提供していきたい」と意欲をのぞかせる。
アルミボトル缶については「プラスチックのボリュームディスカウントを考えると同業他社にも取り組みが広まることを期待している」との考えで、OHMは今後、運営の17施設以外にも、宿泊施設を伴う研修所で会議の際に提供するアルミボトル缶の切り替えも推奨していく。
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