太陽光発電した余剰電力を貯めて環境にやさしく災害にも備え コスト抑えた蓄電池市場の創出へセブン‐イレブンが壮大な実証実験
食品新聞 / 2023年6月12日 20時4分
セブン‐イレブン・ジャパンは、コストを抑えた中古・蓄電池(バッテリ)市場の創出を視野に、太陽光パネルで発電した余剰電力を貯めて環境負荷を低減するとともに災害時の停電にも備える壮大な実証実験を開始した。
6月8日、省エネ・創エネ・畜エネ設備を備えた実証実験店舗「セブン‐イレブン三郷彦成2丁目店」(埼玉県三郷市)がメディア公開された。
日立製作所、リコー、サンデン・リテールが持つ先進技術を集めた店舗となり、同店舗における購入電力量については2013年度対比で約60%削減、CO2排出量については約70%削減を見込む。
実証実験ではコストの壁を乗り越えられるかなどを検証していく。
コスト面で大きく立ちはだかるのは、ソーラーカーポート(駐車場屋根上太陽光発電システム)とバッテリ。実証実験を水平展開していくことで、特にバッテリのボリュームディスカウントを目指していく。
「中古車市場があるように、セブン‐イレブンのような拠点がいくつかあれば中古バッテリ市場ができるはず」と語るのは一級建築士でセブン‐イレブン・ジャパン建築設備本部エネルギー部総括マネージャーの斯波康弘氏。
2017年から、水素ボンベでの発電やアスファルトに太陽光パネルを埋め込む路面型太陽光パネルの導入などで試行錯誤を繰り返してきた中で、今回の実証実験に可能性を見出す。
実証実験の鍵を握る中古バッテリ市場の創出には企業の垣根を越えることが必要だと呼びかける。
「垣根を外さないと中古バッテリ市場は絶対にできない。競合のコンビニ企業さまと一緒にやっていくことで、やっと一つの市場ができる。そうすればバッテリ価格が下がり、一般の住宅にも普及し、災害時にも使えて環境にもやさしい社会ができる」と力説する。
実証実験店舗では、次世代太陽電池を初めて設置するとともに、屋根上の太陽光パネルに加えて東洋エンジニアリングのソーラーカーポートも設置することで再生可能エネルギー比率(再エネ比率)を高めていく。
実証実験店舗について、セブン‐イレブン・ジャパンの桝尾威彦執行役員建築設備本部長は「店舗の消費電力を上回る発電が可能となる。この差分を可動式蓄電池(バッテリキューブ)に貯めて、夜間にこの貯めた電力を店舗に供給するスキームになる」と説明する。
再エネ比率は、電力会社から購入する電力量に占める自然エネルギーの割合を指す。実証実験店舗の再エネ比率は平均約50%を見込み、好天時には60%程度まで高まりうるという。
「コストという壁もあるが、しっかり効果検証を行いながら水平展開を進めていきたい」と意欲をのぞかせる。
セブン‐イレブン全店舗に導入されている数々の先進的な設備の使用状況などを把握・制御するエネルギーマネジメントシステム(EMS)を提供するのは日立製作所。畜エネ技術としてバッテリキューブの技術も提供する。
日立製作所の赤津徹氏(水・環境ビジネスユニットバリューチェーンTSS事業開発本部TSSグリーン推進部部長)は、バッテリキューブについて「寿命を迎える最大限、電池の余裕がなくなるまで活用すること考えている。その後、バッテリキューブに搭載しているバッテリを再資源化し、サーキュラーエコノミーに配慮した蓄電システムを目指している」と語る。
創エネ技術として、複合機の開発で培った技術を応用して開発した次世代太陽電池4種類を提供するのはリコー。
4種類のうち、リコーの田中哲也氏(リコーフューチャーズビジネスユニットEnergy Harvesting事業センター所長)が「SDGsに貢献できる画期的な取り組み」と胸を張るのが固体型色素増感太陽電池。
これは、24時間点灯する店内LED照明の光でも高効率の発電を可能とするもの。店内の冷蔵設備上に設置し常に店頭している店舗内の光を活用して発電する。
サンデン・リテールシステムは日立製作所とともに省エネの技術を提供。
サンデン・リテールシステムの石川勝行氏(執行役員リテールソリューション事業部事業部長)は、チルド売場に設備されるエアーカーテンについて「チルドケースの上部から冷たい空気を送風してエアーカーテンを形成してチルドケース庫内を冷やす構造になっている。従来の2重タイプに1つ追加して3重構造にすることで店内の空気がチルドケース庫内の冷却に影響しないように密封性を強化した」と述べる。
冷凍ショーケースに従来から定時に行っている除霜も最適化。冷凍ショーケースの運転状況や店内環境をセンシングすることで、必要なタイミングのみ除霜して省エネ化を図る。
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