三幸製菓、信頼回復へ全社一丸 最優先事項は安全安心 優品適価や若年層開拓にも注力 佐藤元保CEOが語る
食品新聞 / 2023年9月12日 13時59分
三幸製菓の佐藤元保CEOは8月25日、本紙取材に応じ今後の方向性について「とにかく安全安心を最優先事項に掲げ信頼回復に全社一丸でつとめたい。加えて、事業成長を図り、更に活気ある会社にしていきたい」と語る。
昨年2月、荒川工場(新潟県村上市)が火災。
再発防止に徹するべく、同5月、社内全部署の総合安全の横断的な推進と監視を行うため佐藤CEO直下に総合安全品質保証室を新設。「年間で相当な予算を確保して取り組んでいる」。
工場の安全安心に向けて投資を増額してハード・ソフトの両面を強化しているほか、ISO45001(労働安全衛生)の取得も目指す。
食品安全マネジメントシステムの国際規格であるFSSC22000の取得についても今後広げていく。現在、新発田工場(新潟県新発田市)では全て取得し、荒川工場の一部で取得している。
火災から一年半が経った今、生産能力は火災前の8割程度、商品のカバー率は9割弱まで回復。
「一部工場の閉鎖、再発防止策の実施、工場レイアウトの見直しなど、安全を担保した上で生産していくとの方針のもと、昨年は主力ブランドに絞り込みSKU数を半減近くまで減らして、物量だけはなんとか確保しようと試行錯誤して合理的な生産につとめた」と振り返る。
三幸製菓の佐藤元保CEO売場回復にあたっては、小売企業をはじめ、欠品により空けてしまった米菓売場の維持に努めた競合メーカーや社員に感謝の意を表する。
「小売企業様では想定以上にお取り扱いの回復をしていただき応援いただいた。他メーカー様は我々が供給できない間、頑張ってくださった。社員も頑張り、半年ほど本来の業務ができない中で営業ではお客様との関係維持に努めていただいた」と述べる。
今期(9月期)売上高は475億円(米菓459億円・かりんとう16億円)を見込む。
来期は成長戦略も推進していく。
良品廉価から優品適価(ゆうひんてきか)へのシフトを強力に推し進める。
「三幸製菓といえば良品廉価と言われ続けてきたが、良いものを安く売るということだけが本当に正しかったのか見直す時期だと思っている」と説明する。
優品適価は、単なる高付加価値化とは異なり、価値に見合った多様な価格帯を意味する。
「当然、お買い得なものへのニーズの対応を含めて適価。安くないと買われないものもあるし、高くても買ってもらえるものある。個食の時代になり、醤油も新鮮なうちに使い切れる小サイズが好まれる。米菓でも大袋で食べきれないよりも、割高であっても食べきれるほうがいいという考え方もあると思う」との見方を示す。
「ぱりんこ」(三幸製菓)高齢者層に支えられている米菓市場の先細りを避けるべく、若年顧客の掘り起こしにも着手する。
同社では年代別に購買金額の推移をみると、50代・60代は伸長を続けている一方、20代・30代は菓子全体と比較して伸び率の低い状態が数年続いている。
まずは若年層の喫食率を引き上げるべく、30~40代子育て世代への働きかけを強化していく。
そのための代表ブランドが「ぱりんこ」。小学生とその保護者をメインターゲットに、「ぱりんこ」の工場見学を小学校の社会科見学向けに実施するなどターゲットとの接点拡大を図っている。
共創型マーケティングにも取り組み、「ぱりんこ のり塩味」は親子30組の「ぱりんこアンバサダー」との共同開発によって生まれた。
この秋冬の新商品「チーズアーモンド 辛子明太子」(三幸製菓)同様にこの秋冬の新商品「チーズアーモンド 辛子明太子」も昨年末に実施した人気投票で選ばれた共創型商品となる。8月7日の発売開始以降「明太子ということで、特に九州では予想以上に人気を博している」という。
若年層の直接的な購買については商品ではなく接点を課題に挙げる。
「若い人はまず米菓売場に行かない。若者向け味付けや商品を開発したところで、目に入ってこないわけで、そこをどうやっていくかが課題」とみている。
新たな喫食シーンの開拓も課題とする。
「40、50代よりも上の層が家族で食べるシーンしか見てこなかった。一番大きなマーケットなので、そこで勝負するのも大事だが、それ以外のお客様へのアプローチが不足していた」と反省する。
同社ではおつまみ需要を開拓すべく「わが家のテッパン」を発売。販売動向は上々で「新商品ではかつてない記録でヒットしている」。
10月には新たな中期経営計画がスタートする。この中で意欲的な目標数字を掲げるのがSDGs関連。
「商品パッケージも当然エコなものにして磨いていかなければならないし、それを運ぶ物流面やフードロスなど多岐にわたり全面的に取り組んでいく。一番エネルギーを使うのが製造工場でここにもメスを入れる」と意欲をのぞかせる。
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