〈卸の新戦略〉伊藤忠食品「凍眠市場」(前編) 3年で出荷量10倍に 新分野は果実と清酒
食品新聞 / 2024年4月22日 16時11分
伊藤忠食品は中期経営計画「Transform2025」の中で、「情報」「商品開発」「物流」を重点分野に位置付ける。このうちの「商品開発」で特に注力しているのが冷凍商品である。2019年には液体急速凍結機「凍眠」の製造・販売を行うテクニカンと業務提携し、20年に「凍眠市場(とうみんいちば)」をブランド化。全国の魚や肉などを主にギフト向けに展開する。現在、新たなカテゴリーとして強化しているのがフルーツと酒類。ほぼ生と同じ状態を維持できるという「凍眠」の技術を生かし、新たな市場の開拓に注力する。リテール本部の星利夫本部長、佐藤智典課長に話を聞いた。
◇ ◇
星利夫本部長㊧と佐藤智典課長(伊藤忠食品)――まず、「凍眠市場」について、ここまでの状況を教えてください。
星 「凍眠市場」のギフト商材はスタートから丸3年が経ち、年間で1万セットを出荷する規模になった。初年度が1千セットだったので、10倍に成長したことになる。百貨店や量販店の中元・歳暮ギフトや当社のギフトカード/コードギフトのほか、昨年からはふるさと納税にも採用され順調に広がっている。
――現在、ギフト以外に力を入れているカテゴリーは。
星 解凍後も、とれたて・できたての状態を維持できる「凍眠」の技術を生かして、今まで流通が難しかった商品が扱えるようになった。それをアピールする狙いで2月のスーパーマーケットトレードショーに出展し、非常に好評を得たのが「凍眠フルーツ」と「凍眠凍結酒」だ。
――「凍眠フルーツ」とは、どのようなものですか。
佐藤 果物は通常、消費者が食べる時にベストな状態になるよう、それまでの時間を見込んで熟す前に収穫しなければならない。
だが、果物は本来樹上で熟したものが一番おいしく、その最高の状態の鮮度を閉じこめたのが「凍眠フルーツ」だ。「凍眠」は冷凍のスピードが速く、凍結後は氷の結晶が小さいため、歯ざわりのよい冷凍フルーツになる。
今回は山形県のメーカーと共同でさくらんぼ(佐藤錦)、シャインマスカット、ラ・フランスの3品を商品化した。
星 さくらんぼの収穫期は6月で、その時季にしか新鮮なものは食べられない。緩慢冷凍では輸送距離が長いと品質が劣化しやすいが、凍眠凍結により旬の佐藤錦が年中どこでも食べられるようになった。ラ・フランスは食べやすいよう、皮をむいてカットしたものを冷凍にした。
――販売戦略を教えてください。
星 自然解凍でそのまま食べられるが、解凍時間によって様々な食べ方ができる。例えば、凍った状態だとアイスの代わりとして、子どもも安心して食べられる無添加のデザートになる。また、氷代わりにカクテルやアイスティーにも使えるし、カステラや生クリームと合わせてスイーツにも使える。
アイディア次第で使い方は限りなく広がる。紙面などで食べ方が伝えやすい共同購入やカタログ販売、ECなどからスタートし、その後、スーパーの店頭に広げたい。店頭ではレシピや食べごろを伝える動画をデジタルサイネージで発信し、認知度を高める。
このほか、カフェチェーンではスムージーのトッピング、バーやレストランではカクテルなど、業務用への展開も視野に入れており、すでに採用が決まったチェーンもある。冷凍は必要な量だけ使えるので、廃棄ロスの削減にもなる。
日本でおいしい果実を食べた外国人旅行者が母国に帰ってからも食べられるよう、将来的には海外での販売も目指す。
(次号に続く)
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