〈卸の新戦略〉伊藤忠食品「凍眠市場」(後編) 日本酒に新たな価値を 今期1万本を計画
食品新聞 / 2024年4月24日 9時55分
伊藤忠食品は液体急速凍結機「凍眠」を活用し、「凍眠市場(とうみんいちば)」のブランドで冷凍食品を展開する。新たなカテゴリーとして強化しているのがフルーツと酒類だ。前編に続き、リテール本部の星利夫本部長、佐藤智典課長に戦略などを聞いた。
◇ ◇
――今後の「凍眠フルーツ」の商品開発は。
星 ラインアップを拡充する。白桃や柿といった他の果実も検討している。また、産地については山形県以外にも広げていきたい。
佐藤 冷凍の最大のポイントは場所を選ばず、いつでも全国のおいしいものが食べられることにある。国産であること、さらに産地がうたえることは既存の冷凍フルーツとの差別化にもなる。こうした付加価値を提供しながら、地域の食材をブランディングするというビジネスモデルを確立したい。
――続いて、「凍眠凍結酒」についてお聞きします。
星 基本的なコンセプトはフルーツと同じで、「凍眠」の凍結技術を使って、蔵元のしぼりたての生酒をフレッシュな状態で閉じこめた商品だ。
従来の冷凍酒はシャーベット状で楽しむものだが、「凍眠」は搾りたての鮮度を再現できるので、完全に解凍することで酒蔵でしか飲めないような生酒を味わうことができる。また、冷凍庫での従来の凍結では水分が膨張するため瓶が割れるが、急速凍結により水分の膨張が少なく、瓶ごと冷凍することができる。
清酒全体の需要が落ち込む中、特定名称酒の出荷量は堅調に推移している。そこに希少性や鮮度といった新しい価値を加え、日本酒の可能性を広げたい。
――これまでの手応えは。
佐藤 すでに一昨年から、冷凍食品の専門店で販売いただいている。平台の冷凍売場にコーナーを設け、7品でスタートした。
冷食売場に日本酒が並ぶという今までにない売り方が好評で、普段はお酒を買わない主婦の方が手に取ることも多い。300㎖で1千円という高めの価格帯ながら、1店舗で2週間のうちに100本近く売れた。
――量販以外には、どう販路を広げる考えですか。
星 東京の居酒屋では、凍ったままワインのように氷につけて提供している。新しい日本酒の飲み方として飲食店に提案するとともに、外食で凍結酒を体験した人が家庭でも気軽に楽しめるよう、連動して量販の売場も広げていきたい。
また、当社の大正物流センター(大阪市)に導入した「凍眠」の機械で灘・伏見の酒蔵の商品を凍結し、「凍眠凍結酒」として販売する。まずは、3種の飲み比べギフトなどを展開する予定だ。今後、こうした凍結のできるセンターを増やし、商品ラインアップと販路を広げる。
――今期の計画を。
佐藤 前期(23年4月~24年1月)は3千本を出荷した。今期は1万本を計画している。
――「凍眠市場」全体について今後の課題は。
星 冒頭で話した通り、現在はギフトを中心に展開している。今後はいかにスーパーの店頭に広げていくか。単品ではなく肉、魚、フルーツから酒類まで様々なラインアップを揃えているので、「凍眠」ブランドを売場の棚一本で表現できるようにしたい。
佐藤 実績を作り、参加したいというメーカーやサプライヤーを増やすことが大事。地方のメーカーや生産者は売り方に困っているところが多いので、新たな販路として提案することができる。
凍眠の技術をより生かすために鮮度の高い素材をきちんと選定し、価値のあるものを適正な価格で販売していきたい。
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