米菓、主原料のコメが不足・高騰 業界団体が農水省に政府備蓄米の放出を要請
食品新聞 / 2024年5月24日 22時50分
米菓(あられ・せんべい)の主原料であるコメが不足し高騰している。
各都道府県に支部を有する米菓業界の中央団体となる全国米菓工業組合は、昨年11月に他組合との連名で農水省に政府備蓄米の放出を要請し、以降、意見交換を継続的に行っている。
MA米(ミニマムアクセス米)については低廉な価格での安定的な販売を要請。MA米も米国産うるち精米が水不足に伴う作付面積の減少などにより高騰。これに円安が追い討ちをかけている。
現況について、5月20日、同組合第63回通常総代会で新理事長に就任した星野一郎氏(越後製菓会長)は「主原料となるコメ、主にうるち米が、昨年、新潟では40℃を超える高温障害となり米菓用うるちが極端な不足と価格暴騰を起こしている」と語る。
星野一郎理事長主食用米の23年生産量は計画より7万トン減少。24年6月末の在庫水準は適正水準とされる180万トンを下回る177万トンが見込まれ、23年産米の相対取引価格が高値水準に移行している。
23年産米の相対取引価格は前年比1割増、前々年比2割増の税込1万5303円(60kg当たり)となった。
国は、民間在庫水準はまだ高い水準とみなし、昨年と同数量を生産目標数に定め、加工用米・麦・大豆・飼料用米・米粉用米などへの転作・助成を推進。
ただし加工用米の生産者手取り水準が主食用米の価格に及ばないことから、24年産米作付け意向は加工用米から主食用米への転換が多く見られ、加工用米は今後も非常に厳しい供給環境が予想される。
多くの米菓メーカーが使用する特定米穀は、米どころの新潟・秋田をはじめとする昨年の全国的な高温で発生量が激減。加えて外食需要や清酒需要の回復に伴い、比較的品質のよいとされる中米(ちゅうまい)を含めた特定米穀は、現物が減少する中で異常な高値で取引され、米菓原料としての出回り量は極端に減少している。
農水省は、政府備蓄米の要請に対して慎重姿勢を示す。
2012年(平成24年)に放出したところ、加工用米・特定米穀相場が大幅に下落したためだ。
総代会後の懇親会で来賓挨拶した農水省の平形雄策農産局長は「平成24年に放出して市場にご迷惑おかけしたのを農水省としては忘れてはいけない。よく需給状況をみながら慎重に考えている。まずは国内産地との連携、生産者との結びつきを強めていただきたい」と呼びかける。
MA米については「希望の方には販売する」と述べる。
米国産うるち精米の成約状況は、23年4-6月の103トンが直近の24年4-6月では2839トンと急拡大。タイ産もち精米も拡大。国産米の不足により相当量がMA米に切り替わっていることを如実に示している。
栗山敏昭前理事長国産米が不足・高騰する一方、需要は拡大基調にある。
23年生産量は前年比2.8%増の21万8000トン。
23年生産金額は高付加価値商品の販売好調かコスト増による値上げで8%増の2937億円(あられ1359億円・せんべい1578億円)。
小売金額も8%伸長し3916億円となった。
星野理事長は「米菓の生産金額は3000億円に迫る勢いで菓子全体の生産金額の1割強を占める産業に成長している。この間、凶作に伴う原料不足、資材価格の高騰など幾多の困難があった。少子高齢化の時代を見据えても米菓は依然として伸びる素地がある」と期待を寄せる。
なお、栗山敏昭(栗山米菓社長)前理事長は2期4年を務めた。今回、内規を改め理事長の任期は最大3期6年と定められた。新理事には槇大介氏(岩塚製菓社長)が選任された。
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