高尾洋之さんは、東京慈恵会医科大学附属病院の脳神経外科医だ。デジタル技術に対する造詣は以前から深く、2015年には同大学の先端医療情報技術研究部のリーダーに就任。医療におけるデジタル活用の研究・普及に邁進していた。
ある朝、高尾さんは突然足の痺れを感じ、救急車で病院に運ばれると、間もなく意識を失った。目が覚めると、喉には人工呼吸器のチューブがつながれており、手足はまったく動かない。声も出せず、かろうじて目を動かせるだけだった。あとから知ったことだが、意識を失ってから目が覚めるまで、実に4カ月が過ぎていた。