大阪府警は2月2日、大阪狭山市議会副議長の井上健太郎容疑者(54)を強制わいせつ容疑で逮捕した。2020年に府内で行った自身主催の子ども向けキャンプで、就寝中の女児4人の体を触るなどした疑いだ。
井上容疑者はスマートフォンのライトを照らしながら寝室に忍び込んできたという。イベント終了後から複数の女児が被害を訴え、昨年9月に保護者が府警に相談して発覚した。
〈市議会副議長が強制わいせつで逮捕〉「就寝中の小学生女児4人にスマホのライトを照らして体を触り…」被害者弁護士が語る“健ちゃんキャンプの夜”
集英社オンライン / 2023年2月8日 20時11分
「こどもたちに夢と希望を」。こんなタイトルのブログで長年、政治活動を発信してきた現職の市議会副議長が、小学生の女児複数名にわいせつな行為をしたとして逮捕された。子ども向けの宿泊イベントを悪用した犯行は、被害児童にとっては悪夢でしかなかった。
「スマホのライトで照らしながら寝室に忍び込んできた」
井上容疑者は03年に同市議選で初当選し、現在4期目。昨年5月から副議長でもある。毎年のように「健ちゃんキャンプ」と称して府内の宿泊施設を使った小学生対象の1泊2日のイベントを開催してきた。参加費1万円ほどで海や山など自然と触れ合えることを売りにしており、実際に「子ども好き」で知られた存在でもあった。
今回、被害者女児の代理人を務める仲岡しゅん弁護士が語る。
当初は「子どもの勘違いだろう」と思っていたが…
「被害にあったのはみな、井上容疑者の支援者の子どもたち。応援している市議の企画なら安心とキャンプに参加させたわけです。実際に被害にあった子どもたちも『キャンプにいくまでは井上市議をいい人だと思っていた』と証言しています」
女児全員から個別に話を聞いた仲岡弁護士によると、全員の証言は具体的で矛盾せず、時期を変えて何度同じ質問をしても一貫してぶれることがなかったという。
それでも保護者らの被害申告が遅れたのは、相手が地元の有力市議なだけに、子どもの証言の信憑性が問われかねないという懸念があったからとみられる。しかも長年にわたって同様のキャンプを開催してきた井上容疑者の「信用」のカベは厚く、子どもたちの必死の訴えがかき消されてしまう危険性もあった。
このあたりの経緯は仲岡弁護士が5日に出した声明文に詳しい。
実際にこのキャンプでは、二段ベッドで寝ている女児4人に、スマホのライトを手にした井上容疑者が近づいてきたという。
仲岡弁護士が続ける。
「当日の夜はベッドに入ったものの、みんななかなか寝つけなかったようです。そんな中、井上容疑者が体をさわってきて、怖くてみな声も出せなかったと証言しています。体をよじったりして抵抗するとやめて、どこかにいくのですが、しばらくすると、また戻ってきて触る。これを3〜4回くりかえしたそうです」
キャンプから帰宅した女児たちはすぐに被害を訴えたが、保護者らは当初、井上議員を信頼していたこともあり
「子どもの勘違いだろう」と思ってしまったという。しかし、キャンプから1年半経った昨年春ごろ、それらが勘違いでなかったことが明らかになってくる。
女児同士がSNSで「怖かった」「絶対に許せへん」とやり取りをしているのを目にした保護者同士が連絡を取り合うようになったのだ。
「正義感の塊のような人」
「子どもを甘やかさず厳しく育てなければ」という考え
子どもたちが被害を訴えた井上容疑者とは、一体どんな人物なのだろう。地元の府立高校を卒業後に郵便局に就職、15年勤めて退職し、03年に大阪狭山市議会に議席を得た。
同議会で同じ会派「改新さやま」に所属する市議はこう語る。
「井上市議は正義感の塊のような人。幼児性愛を感じせるようなことも皆無だったので、今回の事件には驚きしかないです。彼には『子どもを甘やかさず厳しく育てなければ』という考えが根底にある。
例えば、スポーツ中の飲料補給。昨今は飲みたいだけ飲んでいいというような風潮になっているが、それでは子どもたちに考える力が身につかないというのが井上さんの持論。だから1日に必要な量だけ水の入ったペットボトルを渡し、いつどれだけ飲めばいいのか自分で判断できるようにならなければならない、と。
こうしたことは学校ではなく、少人数の野外活動でないと身につかないからキャンプを企画してやってるんだという話をよくされてました」
しかし実際の「健ちゃんキャンプ」は、井上容疑者が怒ってばかりいるので「全然面白くなかった」とずいぶん前から子どもたちからは不評を買うこともあったようだ。
選挙区のお膝元での評判はどうか。
井上容疑者と同じマンションに住む女性は「市議会議員を長いことされてるだけあって、見るからにはつらつとしたしっかりされた方ですよ。奥さんと成人した息子さん、その下に娘さんもいてはるのに、ご家族がかわいそうです」とうつむきながらも、こう続けた。
井上容疑者の自宅は
「床が見えないぐらいゴミが散乱していた」
「井上さんのご家族がここに引っ越されてきたのは15年ほど前です。ここの間取りは3LDKなんですけど、井上さんの奥さんは片付けが苦手なのか家の中はゴミだらけ。布団も敷きっ放しらしくて、よくご主人のお母さんがやってきては奥さんと口論をされてました。そんなに汚いのかなと、たまたま窓が開いている時にちらっと見たんですが、床が見えないぐらいゴミが散乱していました」
ゴミ屋敷で暮らそうが、どんなストレスを溜めようが卑劣な犯行の動機として斟酌されるものは何一つない。
声明を出した仲岡弁護士はこう訴える。
「今後同じような被害を出さないためにも、井上容疑者から被害を受けた人は、声を上げて団結しましょうと呼びかけたい。子どものわいせつ被害の告発が本当に難しいのは、性的な被害だとまだ認識できないケースもあるからです。また今回のように、子どもたちが寝つけずに起きていればわかりますが、ぐっすり眠っていたら被害に気づかない危険性もあり得ます」
性被害にあった子どもたちは今も悪夢でうなされているだろう。
「わいせつなことはしていません」と容疑を否認しているという「健ちゃん」が、今夜留置房で見る夢はいったいどんなものなのか。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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