1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

【漫画あり】打首獄門同好会のあの曲が着想の原点。2000万円を貯めて脱サラ・45歳・無職男が叶えた、ひたすら部屋に籠る理想の生活。「ニーティング」は究極の独り暮らしと言える理由

集英社オンライン / 2023年3月18日 11時1分

社会の歪みが生み出したネットテロ『予告犯』で脚光を浴び、『有害都市』で表現の自由に切り込み、『ノイズ【noise】』で限界集落に広がる負の連鎖を描いた漫画家・筒井哲也。サスペンスの鬼才が、45歳で引きこもり生活を始めた男に忍び寄る影を描いた『NEETING LIFE ニーティング・ライフ』(以下、『ニーティング・ライフ』)を世に放った理由とは?(前後編の前編)

あのバンドの名曲が着想の原点

主人公は45歳の脱サラリーマン

――新作『ニーティング・ライフ』は、しがないサラリーマンの小森建太郎が20年間勤めていた会社を辞め、究極の引き籠り生活を始めるところから始まります。まずは、この題材を選んだきっかけを教えてください。



筒井(以下同) 実は、打首獄門同好会の『布団の中から出たくない』という曲が着想の原点になっているんです。「布団の中に全てあればいいのに」という歌詞があって、こういう生活が理想かなと考えを膨らませていきました。快適な生活は人それぞれだと思いますが、僕が考える一番快適な住環境は、狭い部屋の中で全てが完結していることなんです。

――作中に鴨長明『方丈記』からの引用もありますよね。

たまたまテレビをつけたら、NHKの『100分de名著』が『方丈記』の回(2012年放送)だったことがあって。それまでは、中学校の時に習った冒頭のフレーズを知っている程度でしたが、大人になって改めて共感できる内容だなと思ったんです。それで今回の作品にちょっと取り込みつつ、ネットゲームも好きなので、その要素も拝借して。

――やはり、コロナ禍の影響が大きかったのでしょうか?

コロナ以前から、ひたすら部屋に籠る話は描きたかったんですけど、たまたま色んな要素が重なって、このタイミングになりました。

――主人公の小森建太郎は、サザエさんチックな髪型がファニーで、今まで筒井さんが描かれてきたキャラクターとは一線を画している印象を受けます。

そうですね。小森には反逆心もないし、キツい目にあっても誰かを恨むでもない。

会社員時代はとんでもないパワハラを受けていた小森だが…

ただひたすら生活を守るってタイプですから、僕が今まで描いてきたキャラクターとは毛色が違いますよね。

室内の物語をドラマティックに

貯金2000万円でニーティングライフをスタート

――完璧な引き籠り生活を遂行するため、小森は小さなアパートの一室にテントを張って暮らし始めます。そこから極力動かないためのライフハックも次々に登場しますが、あれは全てご自身で試されたんですか?

担当編集(ヤングジャンプ・増澤吉和編集長) 筒井先生はこの作品のために実際アパートを借りたんですよ。

筒井 そのアパートは取り壊しになってしまったので、今は更地になっていますが、ひと通り試してみました。さすがに尿瓶は試していないですけどね(笑)。

筒井先生は執筆のために小さなアパートを借りて実際に室内テント生活を行った

――おぉ、作品の通りですね!

もともとキャンプ道具を集めるのが好きだったので、資料として活かせてよかったです。一人用のテントの中って落ち着くんですよ。考えがまとまってくるというか。

――レトルトパウチの食品に関するライフハックも可笑しかったです。

後々ハサミが役に立つわけですが、そういう展開も考えつつ、小ネタを入れることで生活感やリアリティが出てくるかなと思って入れてみました。

実生活で役立つライフハックも満載

――物語の前半で描かれるのはほぼ部屋の中での出来事ですが、そうとは思えないぐらい多岐に渡った絵作りをされていますよね。テントの上に部屋着が綺麗に並べて干してある感じとか、ごみの捨て方とか。それでいて、生活にぬるっと入り込んでくる不穏な気配もある。

基本的に、読者がその場所に立っているような臨場感が出せればいいなと思いながら描いています。室内の話で遠景の広い絵が出てこないので、クリスタ(イラスト制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT」)で全ページを一覧しつつ、似たアングルが続いて単調になっていないかバランスも見て。web掲載なので、なるべくコマを大きく、ネームは削るようにもしています。

コロナ禍で変わった制作体制

整然としたリビングルームにある筒井先生の仕事机

――コロナ禍によって筒井さんご自身の生活は何か変わりましたか?

マンガ家は部屋にいて成立する仕事なので、生活に大きな変化はありませんでした。コロナ以前はカフェに行ってiPadでネームを描くこともありましたけど、それがなくなったぐらい。しいていえば、アシスタントさんが完全リモートになったことでしょうか。これはメリットもデメリットもあって、通ってもらう負担が減って、こちらも机や機材を整える予算が浮きました(笑)。
一方で、背景の細かいニュアンスを伝えるのが難しくて。次回からはもっと洗練された形で伝えることができたらと思っています。

コロナ禍でアシスタントとのやりとりもオンラインで行っている

――筒井さんのタッチを言語化して伝えるのは難しそうです。ところで、最適な住環境を整えた小森ですが、会社員時代の悪夢を見て飛び起きたりするじゃないですか。現実の社会でもブラック企業はまだまだはびこっていますし、その一方でリモートワークが進んだ企業もあり、仕事の仕方が両極に進んだ気がします。そんな現象に思うことはありますか?

そうですね。マンガ家は比較的、影響を受けにくい職種だと思いますが、本当に大変な職種の方もいて、ネットには不平不満が噴出していました。大局的には、場所に縛られなくてもいい働き方が広がったのかなと思います。

――確かにそうですね。では、この作品を読んで、「ニーティング・ライフを始めました」なんて人が出てきたら、いかがですか?

僕が考える快適な生活はこうかなというものを描きましたが、家族がいたら難しいでしょうし、最初にまとまったお金も必要でしょうから、簡単に踏み切れるものではないのかなとは思います。
ある意味、ニーティングは究極の独り暮らしじゃないでしょうか。

漫画『NEETING LIFE ニーティング・ライフ』第1話の試し読みが読める(すべての漫画を読むをクリック)

取材・文/山脇麻生 ©筒井哲也/集英社

『NEETING LIFE ニーティング・ライフ 上』

筒井哲也

2022年8月19日発売

680円(税込)

ISBN:

-

パンデミック、クラスター、ロックダウン……。聞き慣れない単語の数々と不確かな情報が錯綜し、世界の常識は大きく変わり始めていた。そんな混乱のさなか、しがないサラリーマンである小森建太郎は、20年間働いた会社を辞め、長年思い描いてきた理想の生活スタイル「ニーティング」を始めることに。自堕落な生活とは異なる“究極の引き籠り術”で平穏な暮らしを望むが――…!?

面白いマンガがたくさん読める「となりのヤングジャンプ」
「ヤンジャン!アプリ」を今すぐダウンロード

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください