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【漫画あり】なぜ『NEETING LIFE ニーティング・ライフ』は今の時代に響くのか? 漫画家・筒井哲也の「現在起きている事象、同時代性を重視している」オリジナリティ

集英社オンライン / 2023年3月18日 11時1分

『マンホール』『予告犯』など唯一無二の作風で海外でも人気の漫画家・筒井哲也。45歳で引きこもり生活を始めた男に忍び寄る影を描いた最新作『NEETING LIFE ニーティング・ライフ』(以下、『ニーティング・ライフ』)について本人に聞いた。(前後編の後編)

急展開の下巻で何かが起きる!

45歳小森は穏やかなニーティングライフを送れていたはずが…

――究極の独り暮らしを描いた『ニーティング・ライフ』ですが、上巻の中盤から徐々に主人公・小森建太郎の日常に不穏な影が忍び寄ります。一方で隣人が出来たことで小森の心境に変化が起きますが、その辺りもリアルですよね。

筒井(以下同) 僕が学生時代に住んでいたアパートの壁がすごく薄くて、それが結構ストレスだったんです。ところが、隣人が知っている人だとそこまでしんどくはない。音の発生源となる人を知っているかどうかは、大きな差だと思います。


制作のために筒井先生がニーティング生活を行ったアパート

――2023年3月17日発売の『ニーティング・ライフ』下巻では、不審者の襲来をはじめ、小森の日常を脅かす事態が次々に起こります。

そうですね。体力も腕力もない小森が、どうやってふいの事態に対応し、どうすれば読者に納得してもらえるかはかなり考えました。

――前半のライフハックがここで生きてくるのか!とワクワクしました。一方で、あることがきっかけで、小森が不審者に部屋の全貌を知られてしまう不安と緊張がないまぜになったシーンも印象に残っています。ああいったアイデアはどうやって?

ガジェットが好きなので、気になるものをネットショッピングして、「今回はこれを使おうかな」という感じで使っています。

――終盤はウクライナの紛争を彷彿させる展開もありました。

話的には最後の見開きを描きたかったので、それに向かってシナリオを進めていたら、現実でも紛争が起きて……。ニュースの映像を見て感じた、「街がこんな風になってしまうんだ」「こういう未来もありえるんだ」といった思いが作品とリンクした部分はあります。作中の話は、現実とはかなり異なる世界線の話になっていますが。

きれいな線よりかさついた線が好き

瓦礫と化した街並みの下絵。この絵は完成までに3日間要した

――『ニーティング・ライフ』は、これまでの絵柄から少し変わったように見えたのですが、作画に関して変化した部分や意識された部分はありますか?

基本的にアナログで描いて、デジタルで仕上げるスタイルは変わっていません。『有害都市』の頃はシャーペンで描いた線を取り込んでいて、『ノイズ【noise】』からつけペンに変えたぐらいです。

上の下絵は完成までに20枚のレイヤーを重ねて仕上げを施した

――小森のキャラクターデザインが今までの作品より丸いので、そう思ってしまったのかもしれません。

そうかもしれませんね。だけど、いま見返してみると小森の顔がかなり変わっていますね。ここは、いまいちだな……。

――この絵が「いまいち」なんですか!?

なんかバランスが悪いと気になっちゃうんです。落ち着いたらデッサンしないと。

――飽くなき向上心ですね。理想の線が頭の中にあって、それに向かっていくという感じでしょうか。

そうですね。デジタルだとめちゃくちゃキレイな線が引けるのですが、僕自身はかさついた感じの線が好きだったりするんです。メビウス(バンド・デシネの最重要人物)の線とか、ほんとうにいいなと思っていて。(蔵書を開きながら)カッコいいですよね。ここまで写実的にしちゃうと、マンガとしてはちょっと動かしにくいんですけど。

蔵書にあったメビウスの著作をパラパラとめくる筒井さん

――筒井さんの作品はフランスでも評価が高いですよね(『有害都市』がコミック評論家・ジャーナリスト協会賞(ACBD)2015で最優秀賞受賞など)。

ありがたいことです。

「最後のページはこう」と決めてから描く

――今回の『ニーティング・ライフ』は上下巻で完結しますが、筒井さんのこれまでの作品も2,3巻でギュッと凝縮したものが多いですよね。

そうしようと決めている訳ではなく、自分の能力の限界で短い話しか考えられないんです。『ノイズ【noise】』や『有害都市』も「最後のページはこう」って決めてから描きました。そこに辿りつくまでの道はボヤッとしていますが。

――映画的な創り方ですね。

そうかもしれないです。マンガ家を目指しはじめた頃は、映画のシナリオの書き方みたいな本をよく読んでいましたから。映画が好きなので、お手本にしているところも多いです。

――ちなみに近年見たなかで印象に残っている映画はありますか?

『THE FIRST SLAM DUNK』は素晴らしかったです。青春ど真ん中の世代だったので。『すずめの戸締り』も素晴らしかった。話題になる作品って、やっぱり力を持っているんだなと思いました。作業しながら配信でアニメを観ることも多くて、最近だと『チェンソーマン』や『ブルーロック』が面白かったです。

僕の作風的なところでいうとサイコサスペンスですが、最近はそっち系が見れていなくて。単行本作業が終わってから観たいと思っている作品のひとつが、『ミッドサマー』を手掛けた配給・制作会社A24の『LAMB/ラム』です。

――2022年の1月は、実写映画『ノイズ【noise】』が公開されました。『予告犯』も実写映画化、ドラマ化されていますが、ご自身の作品が映像化されることに関しては、どんな思いを抱いていらっしゃるのでしょう?

各動画配信サービスで配信中の『ノイズ【noise】』 ©筒井哲也/集英社 ©2022映画「ノイズ」製作委員会

基本的に脚本にはあまり口を出さず、自由にやってくださいというスタンスです。有名な俳優さんに演じていただくのも、めちゃくちゃ嬉しいですしね。ただ、自分が考えた決めセリフを、映画を通して聞くのは気恥ずかしいです。自分の内側をさらけだしているようなところがあるので。

映像化されるなら小森は若い女の子の方が…(笑)

主人公・小森を惑わす19歳ゲーマー女子も作品を彩る

――『ニーティング・ライフ』も映像化してほしいです。上巻のライフハックはドラマで観たいですし、下巻の急展開は映画で観たい。

そうなったら嬉しいですけど、おっさん主人公だと厳しいかもしれません。なんなら、若い女の子に変えてもいいかも(笑)。そもそもこの企画を出した時、よくこんなおっさんの話を通してくれたなと思います。

担当編集(ヤングジャンプ・増澤吉和編集長) 最初は「グランドジャンプ」連載用に話をしていたので、おっさん主人公で全く問題なかったんです。ところが、僕が「ヤングジャンプ」に異動になったので、そのままグラジャンで連載するのか、僕が異動した先でやるのか、いろんな選択肢を考えました。
とはいえ筒井さんは、ここぞという1コマを描くのに3日かかったりする方なので、週刊連載は無理ですよねというのもあって。そのタイミングで、「ヤンジャン!アプリ」にもオリジナル作品を載せようという話が出てきたので、こうなりました。

――マンガ作品ってつくづく生ものなんですね。では最後に、読者へのメッセージをお願いします。

いつも、今の時代に響く作品を作りたいと思っています。現在起きている事象、同時代性みたいなことを重視しているので、なるべく発売から時期を置かずに読んでいただけると嬉しいです。

漫画『NEETING LIFE ニーティング・ライフ』第2話の試し読みが読める(すべての漫画を読むをクリック)

取材・文/山脇麻生 ©筒井哲也/集英社

『NEETING LIFE ニーティング・ライフ 上』

筒井哲也

2022年8月19日発売

680円(税込)

ISBN:

-

パンデミック、クラスター、ロックダウン……。聞き慣れない単語の数々と不確かな情報が錯綜し、世界の常識は大きく変わり始めていた。そんな混乱のさなか、しがないサラリーマンである小森建太郎は、20年間働いた会社を辞め、長年思い描いてきた理想の生活スタイル「ニーティング」を始めることに。自堕落な生活とは異なる“究極の引き籠り術”で平穏な暮らしを望むが――…!?

面白いマンガがたくさん読める「となりのヤングジャンプ」
「ヤンジャン!アプリ」を今すぐダウンロード

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