「点数出ないの、わかっていたので」まさかの結果に終わったキングオブコント2022で、ニッポンの社長が感じていた“異変”
集英社オンライン / 2023年2月12日 13時1分
ここ数年で「大会のレベルが飛躍的に上がった」と言われるキングオブコント。2022年のファイナリストたちの貴重な証言から、その舞台裏を浮き彫りにしていくシリーズ連載。今回は関西コントシーンのトップランナーでありながら、昨年のキングオブコントではまさかの結果に終わったニッポンの社長。彼らが現場で感じていた異変とは?
「ネタをやる前から点数を聞くのが嫌だった」
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ニッポンの社長。吉本興業所属。2013年結成。結成前から私生活で仲が良く、ピン芸人として活動していた辻(左)に前コンビを解散したばかりのケツ(右)が声をかけてコンビを結成した。今年4月より東京を拠点とすることが発表された
——ネタを終えた時点で、すでに渋い表情をされていましたよね。点数がまだ出ていないのに。それがすごく意外だったのですが。
辻 点数が出ないの、わかっていたので。今大会の傾向というか、流れを見ていて、絶対(高い点は)出えへんやろなと。
ケツ 僕はそこまではわからなかったですけど……。
——今大会の傾向というのは?
辻 そもそもボケ数が少ないと厳しいだろうなと思っていました。僕らのネタは、ボケ数が5、6個しかないんです。だから、ネタをやる前から、最後に点数を聞くのは嫌やなと思っていて。
——手ごたえのあるなしに関係なく、ですか。
辻 手ごたえは関係ないですね。ウケることはウケていたんで。というよりも今回は全員、ウケていたんです。
——ややお客さんが温か過ぎたいうのはあったのかもしれませんね。どんなときも笑ってくれているという。そうなるとウケ量よりもウケ数の勝負になりがちですもんね。
辻 単純に弾(ボケ)を20発持っている人と6発持っている人だったら、20発持ってる人の方が強いだろうな、と。そういう感じはありました。
——なるほど。結果的に、辻さんの嫌な予感が的中した形になりました。ニッポンの社長は、計455点。10位という結果に終わってしまいました。
ケツ 僕は正直、思った以上に低かったなという感じです。
ツッコミがないネタは賞レースでは勝てない?
——決勝後に放送されたドキュメンタリーの中で、辻さんが「俺らが勝てる大会でなくなってきたのかな」と語っていた姿が印象的でした。大会の性質が変わってきた、ということなのでしょうか。
辻 去年から、お客さんが手を叩くようになったんですよね。いい雰囲気ではあるんですけど、戸惑うんです。ペースが掴みづらいというか。ネタ自体は準決でもむちゃくちゃウケたし、自信は持ってたんです。ただ、やっぱり決勝のお客さんとの相性みたいなのはあるのかなと思います。
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唯一無二といわれるニッポンの社長のネタ作りを担当する辻
——確かに手を叩いていましたよね。「拍手笑い」ってこんなに頻繁に起こるものなのかなと思ったら、どうやら、スタッフの配慮だったみたいですね。新型コロナの影響もあって、拍手で笑いを表現しよう、と。
辻 拍手はしようと思えば誰でもできる。なので、常に全員が、ずっと笑っている感じなんですよね。
——今回のニッポンの社長のネタは『人類再生計画』という壮大なスケールのネタでした。悪に脅かされた時代から、平和な時代に戻って、また悪に支配されるという。
辻 前大会、審査員の口から割と「展開が」という言葉が聞かれたんです。なので、壮大さはがんばったんですけど、そこじゃなかったですね。完全に。今年に関して言えば、ボケ数でした。
——会場を沸かせた回数が多い方が、当然、審査員の印象もよくなりますもんね。ニッポンの社長の場合は、今回の『人類再生計画』もそうでしたが、ためてためて放つ一発のボケが強力なんですよね。ただ、新型コロナの影響でお客さんの人数も少なく、しかも、あれだけ温かい雰囲気だと、そのボケの大きさが強調されにくいというのはあったんでしょうね。
辻 僕らはツッコミも0回ですしね。ツッコんだ方が、お客さんも笑いどころがわかるので、盛り上がるんですよ。
「暗転で失敗したとは思ってない」
——明確なツッコミのあるネタの方が点数が高かったというのは、今回、みなさんおっしゃっていましたね。ビスケットブラザーズ、コットン、や団と上位3組は、しっかりツッコミがあった。一方、下位に沈んだニッポンの社長、クロコップ、いぬなどは明確なツッコミがありませんでした。そこは顕著に出ましたね。
辻 僕らは「ドーン」という音をツッコミ代わりにしてはいたんですけどね。
——「ドーン」となると同時に、暗転し、ケツさんにスポットライトが当たる。こんな暗転の使い方があるんだと驚きました。
辻 人の頭の中を、音と照明で表現したかったんです。今回のネタで言えば、孤独であったり、絶望であったりを。
——審査員たちの講評の中で暗転の使い方に疑問を呈する意見もありましたが、そこは今後、気になるものですか。
ケツ そこは気にしてないです。
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ニッポンの社長のケツ。芸名の由来は「顔がお尻みたいだから」とのこと
辻 むしろ、今、そこをイジってもらっているので、おいしいなという部分もあります。ただ、暗転で失敗したというか、失敗したとは思ってないんですけど、結果は出なかったんで。そのことを自分でも散々、ネタにしてしまったので、今後は使いにくいかな。でも、必要だと思えば、普通に使うと思います。
——会場の雰囲気を読めていたとしたら、もっと他に戦いようがありましたか。
辻 いや、僕らのスタイルでは、どのネタで挑んでも今年は勝てなかったと思います。というか、このままだと、ずっと勝てないんちゃうかな。
——ちなみに、2本目にやる予定だった手術のネタも今年作ったネタだったのですか。
辻 いや、もともと持っていたネタです。キングオブコントでやるのは初めてでしたけど。
――あれは『人類再生計画』以上に引っ張ってから放つ一発目のボケというかツッコミが超強力でした。
ケツ あれ、やりたかったんですけどね。
辻 あれやっても絶対、最下位でしたね。
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取材・文/中村計 撮影/撮影/矢橋恵一
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