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〈お掃除密着検証・カラテカ入江は改心したのか?〉年商5000万! 闇営業騒動から3年半・芸能界を去った入江慎也が清掃業で大成功?「合コンでうちの会社の名前を出してもらうのが目標です」

集英社オンライン / 2023年2月19日 11時1分

“闇営業騒動”で芸能界を去って3年半。どん底を知った芸人は現在、清掃マンとして社会の荒波に揉まれている。2020年に立ち上げた清掃会社「ピカピカ」社長・カラテカ入江慎也の一日に密着した。

朝8時の渋谷に作業着で現れた元合コン芸人

1月某日、東京・渋谷の文化村通り。時刻は午前8時。平日ということもあって街は出勤を急ぐ会社員が目立つが、曜日感覚にとらわれない朝帰りの若者の姿も散見される。数年前までの“この男”なら、むしろ後者の人間だったかもしれない。

男は、乗りつけた軽バンのダイハツ、ハイゼットカーゴから降りると、おもむろに積載スペースから清掃用具を取り出して、作業の準備にとりかかる。

早朝から作業に取りかかる入江と従業員


「昨日の夜ですか? 10時に寝ましたよ。年齢も年齢だから早く寝ないと仕事に響くんです(苦笑)」

そういって、作業服に身を包んだ45歳のカラテカ・入江慎也は笑う。そこには決して自虐的な響きは含まれていない。

株式会社ピカピカ。それが現在、カラテカ入江が経営する会社の屋号。2019年に「闇営業問題」の“主犯”として吉本興業から契約を解消された後、謹慎生活を経て清掃会社「おそうじ本舗」のアルバイトにつき、その1年後に独立して起業したのがこの会社だ。

おそうじ本舗時代の入江

「1年で独立は早いと思われるかもしれませんが、清掃業界は2週間で独立する人もいるくらい。むしろ1年は長いほうなんですよ」

そう話すと手際よく掃除用具をまとめ、依頼を受けた店舗に運び入れる。

普段は8時30分から清掃を開始することが多いが、美容室などオープンが早い店舗は7時スタートになることも。お寺の定期清掃を請け負うこともある

この日の現場は焼肉店「和牛の神様」。焼肉界のカリスマ・森田隼人氏のプロデュースする店舗で、芸人時代の縁から月に1度の定期清掃を依頼されている。

俳優も従業員に採用

「飲食店はやっぱり大変ですよ。特に焼肉屋の汚れは頑固で。ここは定期的に清掃するからまだいいですが、単発で清掃に入るラーメン屋なんて本当に大変。個人宅ももちろんやりますよ。『どこが不景気だよ!』ってくらい広い家に行くこともあれば、『マジか……』となるくらい汚い家もあります」

キッチンの用具をばらし、部品は熱湯につけて、1か月で蓄積された油汚れ等々を浮かしている間に、ガラス部分や細部をスポンジで目一杯こする。一般家庭なら大掃除でしかやらないような大掛かりな作業だ。

「高いスポンジもいろいろ試した結果、100円ショップのこのスポンジが一番いい。基本的におそうじ本舗時代の経験をもとに使う用具を決めていますが、同業者との情報交換もかなり貴重です」

この日、入江とともにこの現場の清掃に入る従業員は1名。入社2年目の三浦孝太さん、38歳だ。えらく男前だと思ったら、それもそのはず。彼は大河ドラマ『軍師官兵衛』やWebドラマ『仮面ライダーアマゾンズ』にも出演経験のある元役者なのだ。

コロナ禍で仕事が激減して進退に迷っているときに、極楽とんぼ・山本圭壱のYouTubeにゲスト出演した入江の姿を見て感動。SNSで本人に直接連絡を取り、面接の結果、ピカピカの一員となった。

2年目の三浦孝太さん

「設立当初は僕ひとりだったんでめちゃくちゃ大変でしたよ。荷物を運ぶのもひとりだし、事務仕事も全部自分。目が回るような毎日でした」

作業中でも他の現場の従業員から質問のLINEが届けば、手を止めてすぐに対応する

そう振り返る入江だが、気づけば今や社員4人に増えた。三浦さんのほか、元自衛官や施設育ち、フィリピン人の元看護士とさまざまな生い立ちをたどってきた人ばかり。清掃業務の負担は軽減したが、当然、入江の責任は増す。

賃貸物件の空室清掃が芸人と一番ギャップがある仕事

「ありがたいことに毎日スケジュールは埋まってますが、時期によっては暇なときもあります。特に大掃除が終わった今の時期はスケジュールが埋まらないことも多い。芸人時代も白紙に近い月のスケジュールをもらう瞬間が一番嫌いでしたが、その感覚は今も同じ。それに今は従業員もいる。やっぱりプレッシャーは大きいです」

「空気清浄機能がついたお掃除機能付きエアコンの清掃がもっとも複雑で覚えるのが大変だった」

経営者は確かに芸人と似ている部分が多い。仕事がなくても誰のせいにもできない。一方で、ギャップを感じることだって当然ある。

「人に見られることがほとんどないことですね。芸人として舞台に立ったりテレビに出演すれば、たくさんの人に見ていただき、様々な反響をいただける。でも清掃業は人に見られなくとも黙々とやる仕事。在宅での現場や飲食店はまだお客様に感謝してもらえるけど、賃貸の空室清掃なんて不動産屋から鍵をもらって作業をするだけ。『ありがとう』を言ってもらえない日もある。そこが一番ギャップを感じるところです」

芸人時代とのギャップが大きい日々だが…

「この仕事をして知ったことはお金を稼ぐことってめちゃくちゃ大変なんだということ。開業3年で20人くらい面接したけど、『楽に稼げるんですよね?』みたいな考えの人がけっこういて。まぁ僕のイメージのせいかもしれないけど、とんでもない。『これだけがんばったのにこれだけか……』と思うことばかりです」

2時間弱をかけてキッチンの清掃を終える。キッチンの各部はまるで新品のような輝きを取り戻している。それでも芸人時代の単価と比べたら微々たるものなのだろう。

清掃業のイメージを変えたい

小休憩を挟んだのちに、キッチンから出てきたふたりが着る作業着が普通のものと少し違うことに気づいた。ちょっとだけオシャレなのだ。そこはかつての合コン芸人、やはりまだモテたい気持ちが残っているのだろうか。

フロア清掃に移る

「僕がモテたいというよりは、清掃業のイメージを変えたいと思うことはあります。マッチングアプリに登録している従業員がいて、やりとりの中で清掃業であることを伝えると、途端に返信がこなくなるそうです。だからまずは、作業着からカッコよくしていこうと思って」

入江着用の作業着は株式会社せーの取締役の石川涼氏がディレクションするブランド「#FR2」とコラボしたもの

オシャレな身なりで黙々と作業を続ける男の背中はカッコイイ。ポリッシャーという洗剤を巻きながらブラシを回転させる機械でフロアの清掃にかかる。決して狭くないフロアを1時間かけて磨き、ここでの作業は終了。スタートから3時間が経過していた。

ポリッシャーは非常に重く、コントロールが難しい。扱えるようになるまでかなりの経験を要するそうだ

これを1日多くて3現場、都合9時間もおこなうのだから過酷な肉体労働だ。

「あまり言いたくないですが、年齢を感じますし、かなりキツイですね……。今は従業員も育ってきているので、少しずつ、任せられることも増えてきてますが、それでも12月みたいな繁忙期は毎日3現場行きますので、腰が痛くてたまらない。大変な日々を過ごすうち、自分がルミネやテレビ局に行ってた日々が嘘みたいに思えます」

講演の仕事から清掃業につながることも

本日の入江の現場作業はこれで終わり。あとは事務所に戻って打ち合わせをこなす。一方、同行していた三浦さんは次の現場へと向かう。別れ際に入江について話を聞いてみた。

「清掃業をすることに最初は抵抗があって、役者仲間にも話せなかったんです。でも入江さんは『ここで結果を出せば後々に活きてくるから腐らずがんばれ』と言ってくださいました。仕事もだいぶ慣れてきたので、入江さんの会社にいることを利用させてもらって、元役者の経歴を活かしていろんなことに挑戦していきたい。

入江さんから学んだこと? やはり“礼儀・感謝・謙虚”の姿勢です。僕たちには芸人の後輩みたいにフランクに接してくださってますが、いざというときはとても親身になってくれる。そんな“人の人生を生きてくれる”ところが入江さんなんだと思います」

軽バンで移動中の入江

一方、事務所に戻ってきた入江。1件目のZOOMミーティングはフランチャイズ契約に関するもの。
ピカピカは現在、フランチャイズ展開にも精力的。東京本店のほか、神奈川、千葉、埼玉、大阪、名古屋、奈良、滋賀、岐阜、新潟でフランチャイズ契約のある支店が誕生している。このミーティングもその一環だ。

山口県の講演でつながった経営者とZOOMミーティング

「先日、山口に講演会に行ったんですが、その縁でフランチャイズ契約を検討したいと言ってくださった方がいたんですよ。今回はその打ち合わせです。芸人時代に立ち上げた僕の会社『イリエコネクション』はまだ続けていて、そこから仕事が広がることがけっこう多いんです。この調子でピカピカブランドを47都道府県に広げる。それが向こう2年くらいの目標です」

2件目の打合せは顧客から除菌・コーティング依頼に関する相談

現在の年商は…?

こうしてこの日のスケジュールをこなした入江。改めて業績について聞いてみる。

「現在の年商は5000万です。1年目が2500万だから倍になって調子がいいように見えるかもしれないですが、年商と利益は別。純粋に従業員が増えたから年商も増えてるだけで、まだまだこれから。地に足をつけてがんばりたいですね」

ピカピカのラッピングカー

清掃業界は、おそうじ本舗、ダスキン、おそうじ革命、ベアーズ、くらしのマーケットなど競合も多い。

「そういった大手の企業さんに勝つなんてとてもおこがましいですけど、負けないくらいピカピカブランドを広げていきたい。そして、いつかは合コンで古今東西、お題『清掃会社の名前』となった時に、一巡目で名前が出てくるくらいおなじみの会社になれたらなって思います(笑)」

すっかり清掃業が板についた入江だが、そう言って冗談を言う姿はかつての“合コン芸人”の片鱗を残していた。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
撮影/Soichiro Koriyama

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