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《10年連続輸入車売上1位》なぜメルセデス・ベンツは支持されるのか? “クルマを売らないショールーム”からの妥協なき仕掛け…「ONE PIECEコラボ、アウトドアブームのSUV、車だけでなく…」

集英社オンライン / 2023年2月18日 11時1分

100年に1度の大変革期と呼ばれる自動車業界において、日本の輸入車の中で最も売れているのが、メルセデス・ベンツ(以下、メルセデス)だ。高級車ブランドの中では10年連続で首位に輝くなど、根強い人気を誇っている。また、若者の車離れが叫ばれるなか、多様な年齢層へ向けてもブランド認知を高めている。メルセデスが不動の人気を誇る理由やその秘訣を、メルセデス・ベンツ日本 マーケティング部長・長谷川孝平氏に伺った。

「クルマを売らないショールーム」がファン層の拡大に寄与

日本にはBMWやポルシェ、アウディなど多くの輸入車ブランドが参入しているが、なぜメルセデスが国内で最も売れているのだろうか。

長谷川氏は「何をやるにしても妥協しない」ことが一番の強みになっていると話す。


1980年生まれ。入社から「メルセデス・ベンツ日本」一筋の長谷川氏

「メルセデス・ベンツ日本では、2013年にカンパニービジョン『メルセデス・ベンツ、最も愛されるブランドへ』を掲げたことで、製品やサービスはもちろん、マーケティングやブランディングなど、どの場面においてもメルセデスが持つブランド価値をお客様に変わらず提供することに一貫して取り組んできました。これが熱量の高いファンに支持され続けることができている理由だと考えています」

そんなメルセデスが、ブランド情報発信拠点として“クルマを売らないショールーム”を六本木にオープンしたのが2011年夏。

「メルセデスベンツ コネクション」(現、メルセデス ミー)にはカフェやレストランのほか、ブランドを体現したライフスタイル系商品を扱うグッズ販売コーナーも設け、従来の販売店とは一線を画す施設として、女性や若者の間でも人気が広まっていった。

「メルセデスと聞くと大型車のイメージが強く、もっと『Aクラス』や『Bクラス』といったコンパクトカーをどうやってお客様に浸透させていけばいいのかという課題がありました。ただ、正規販売店は、敷居が高く行きづらいというお声もあり、もっと我々自らお客様に近づき、メルセデスに親しみを感じていただけるように、“クルマを売らないショールーム”という建て付けで、新たなブランド発信の拠点をつくったんです」

Bクラス

カフェで過ごしても、レストランで食事を楽しんでも、あるいはグッズを購入しても、ふと目を向けると、そこにはメルセデスを象徴するエンブレムのロゴが視界に入ってくる。

このように、自然とブランドに触れる体験を生み出せるように工夫を凝らしたというわけだ。

「メルセデス ミーでの体験を通して、いつかクルマの購入を検討するタイミングが来たら、メルセデスを想起してもらえるきっかけ作りになるように意識していました。メルセデス ミーは全国で4箇所に展開していて、現在でもお客様とブランドが身近に接することができる重要な拠点となっています」

ライフスタイル系商品は10年で3倍近くの売上に成長

とりわけ、他の高級車ブランドよりも際立っているのが、ライフスタイル系商品の充実ぶりだ。

アパレルやスポーツウェア、帽子や時計といった小物から、ベビーカー、ペット用品とさまざまなカテゴリーの商品を販売している。

また、サムソナイトやBEAMS GOLFなど30以上のブランドとのコラボアイテムも販売し、ラインナップの総数は600種類以上にも上るという。

2011年のメルセデス ミー開設当初よりも、ライフスタイル系商品の売り上げは3倍近くまで増加しており、間違いなくブランドのファン層拡大に貢献していると言えるだろう。

そして、アニメとのコラボにも10年以上に渡って注力している。

最近では、世代問わず幅広い層に人気を誇るTVアニメ『進撃の巨人』や、漫画『ONE PIECE』を題材にした劇場版アニメ『ONE PIECE FILM RED』とのコラボを行い、新たなファン層へのアプローチも積極的に行ってきた。

『ONE PIECE FILM RED』とコラボしたラッピングカー

「アニメとのコラボ施策を実施したのは、コンパクトカーを訴求する目的がございますが、ただ施策するのではなく、先述した『何をやるにしても妥協しない』という考えが根底にあります。ラッピングカーやフォトスポットの製作、アニメにちなんだドリンクやフードのコラボメニューなども、ブランドやファンへのリスペクトの念を大切に、ディテールや世界観を作り込んでいくことを心がけています」

コラボメニュー「海賊の骨付きハンバーグ麦わら帽子包み」

季節に合わせた「試乗体験」で
ブランドとの接点を生み出す

近年、“若者の車離れ”が叫ばれて久しい。所有からシェアの時代とも言われているが、こうした状況を踏まえ、メルセデスではどのように若者向けへ訴求しているのだろうか。

長谷川氏は「若者の車離れについては、よく言われているものの、日本ではカーリースの馴染みが薄く、ブランドとしては『所有したい』と思ってもらえるような方向性で考えている」と話す。

というのも「商品には絶対的な自信を持っていて、まずは体験してほしい」という一心があるからだ。

「メルセデス ミーでは、ブランドの世界観を、飲食やライフスタイル系商品を通して触れてもらうこと以外にも、常時20台ほどのメルセデスの車種を無料で試乗できる『トライアルクルーズ』というサービスも提供しています。

「トライアルクルーズ」で映えるドライブもできる

実際にメルセデスへ乗ってもらうことで、安全性や快適性といったきめ細かに作られた商品の魅力がわかっていただけると思うので、『シェアもいいけど、次は買ってみようかな』と思ってもらえるかもしれない。なので、まずはブランドを体験してもらうことで、若い方たちのモビリティに対する考え方も変えられたらなと思っています」

トライアルクルーズに関しては、季節に合わせて「さくらクルーズ」や「イルミネーションクルーズ」と銘打ち、気軽にメルセデスの試乗体験が味わえるとあって、非常に好評を博しているという。

「従来であれば、クルマの試乗だけでも遠慮されるお客様も少なくないなか、トライアルクルーズでは写真映えする周遊コースで友人・知人同士で楽しんだり、『メルセデス・マイバッハ』や『メルセデスAMG』、オープンカーといったハイエンドモデルのクルマで思い出を作ったりと、お客様とブランドの接点を生み出すのに寄与しています」

近年の特徴はSUVブーム&アウトレットでの伸長

一方、コロナ禍前後による消費者志向については、大きく目立った変化はなかったそうだ。

リベンジ消費の需要が顕著になったわけでもなく、あくまでメルセデスの中でも長年愛されてきた「メルセデス・マイバッハ」や「メルセデスAMG」、「Gクラス」などのハイエンドモデルが販売全体の約25%を占めているという。

「ハイエンドモデルの安定的な需要のほか、2015年頃からSUVが若者の間で人気が高まってきていて、今では販売全体の約40%がSUVという割合になっています。そして、コロナ禍でキャンプ需要が喚起されたのを機に、SUVを訴求する『OPEN NEW DOORS』というイベントを開催し、アウトドアライフに、メルセデスの魅力を溶け込ませた体験づくりを行いました」

Cクラスの車格を備えたスポーティなデザインのGLC

さらにメルセデスは、正規販売店以外にアウトレットにも出店しており、「コロナ禍でも中古車の販売台数は堅調に推移している」と長谷川氏は言う。

「家族でアウトレットに買い物へ出かけた際、お父さまが『メルセデスのクルマを見たい』とアウトレットの店舗を待ち合わせ場所にすることも多いんです。また、店舗内にはライフスタイル系のグッズも置いてあるので、お子さまが商品に関心を示したりと、集客効果が期待できる販路先としてアウトレットは有用だと捉えています」

コロナ禍でテレワークが進み、自宅で過ごす時間が増えたことから、SNSやデジタル広告をきっかけに、ブランドに興味を持つようになっているとのこと。

「今の時代、デジタルでなんでも情報収集できるので、お客様がある程度の知識を持って状態でディーラーに来店されるようになっています。そのため、販売店のスタッフも専門知識や接客のトレーニングが重要になっている。クルマの品質そのものと、販売店のセールスマンのホスピタリティや信頼性の高さが肝になると考えています」

来るべきEVの普及を見据えて

自動車業界全体では世界的にEVシフトへの関心が高まっている。メルセデスにとって、日本市場ではどのようにEVを展開していく予定なのだろうか。今後の展望について長谷川氏へ聞いた。

「メルセデスのEVブランド『メルセデスEQ』はすでに日本で5車種のラインナップを展開しています。今年は新たに2車種の追加を予定していますが、まずはしっかりと地盤固めが大事だと思っています。これからもEVの普及には本気で取り組んでいきますが、よく言うのが『海外のケチャップボトルをいくら振っても、いつのタイミングで中身が勢いよく出るかわからない』という例えです。

Sクラスの車格を備えたフルサイズ電動SUV、EQS SUV

要は、EVが一般的に乗用される時期は定まっていないわけであり、来るべきタイミングに向けて、我々メルセデスは全ての販売店で急速充電器を完備するほか、EQエキスパートと呼ばれる電気自動車に精通したスタッフを全店に配置するなど、対応済みです。これからも粛々とEVの準備を進めていこうと考えています」

取材・文/古田島大介 写真提供/メルセデス・ベンツ日本

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