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ひきこもり、ニート、障がい…働けないまま中高年になった子どもにとって大事なのは資産ではなく、親の覚悟

集英社オンライン / 2023年2月16日 11時1分

ひきこもりの子どもを持つ親にとって自分が亡くなった後の子どもの生活は心配事だ。資産がある、ないにかかわらずどんなことをすべきなのか? 「働けない子どものお金を考える会」代表、ファイナンシャルプランナー畠中雅子さんに解説いただいた。

資産がある場合は後見人を早く見つけておく

最近、働けない子どものためのお金の相談で、感じているのが資産の格差です。
これは老後資金の格差より大きいと感じています。

資産を持っている人は1億円以上、中には2億円というご家庭がある一方、親が生活保護を受けているなど全く資産のないご家庭があります。

私が相談を受けている資産を1億円以上持っている人は、子どもが学生の頃からひきこもっていて、子どもの将来のために共働きして、旅行に行ったり出かけたりなど自分の楽しみも削り、全て子どものためにと一生懸命貯めた結果が1億円であり、もともと資産家であったというケースは少ないのです。



資産があること自体は、子どものお金についてはひとまず安心ですが、それが後々問題になることがあります。
資産がある親は、「お金さえあればなんとかなる」と思っている人が多く、問題を先送りにしがちです。

お金があったとしても、親が亡くなった後では、子どもが自ら銀行からお金を引き出したり、不動産の管理をしたり、などさまざまな手続きや届け出を自分でやらなくてはいけなくなります。
となると、ずっとひきこもっていたので、本人は外に出られない、やり方がわからないというリスクがあります。

それを避けるためにも本人に代わって、お金や不動産の管理、契約などできる後見人のような人を探しておく必要があります。
これは兄弟姉妹に依頼することもできますが、そういった話し合いを家族間でしていない場合が多く、いざ依頼しようとすると断られてしまい、新たに探さないといけなくなります。

今、資産のある人は、この後見人を早めに探しておきたいところですが、なかなか動いてもらえないのが問題だと感じています。

また、お金があることで、地域や自治体との繋がりが希薄だというケースは少なくありません。

都道府県、指定都市には「ひきこもり地域支援センター」が設置されています。
ひきこもり支援コーディネーターが相談支援を行い、さまざまな関係機関と繋がり適切な支援と結び付けてくれます。

資産があるなしにかかわらず、親はさまざまな機関と繋がっておくことで、将来子どものサポート体制が整いやすくなりますし、心理的にも楽になるので、覚えておいてください。

資産がない場合は生きていける手立てを考える

一方、資産がなく親が生活保護を受けている場合も実は資産がある親と同様に、問題を先送りしているケースは少なくありません。
相談を受けていても、いつか誰かが子どもを見つけてくれて、保護してくれるという夢物語を描いている人は案外いらっしゃいます。

親が亡くなった後、子どもが生活保護を受けられるように、せめて条件などを調べておいていただきたいです。自治体によってさまざまな支援もあるので、まずは早めに相談に行かれることが大切です。

生活保護を受ける場合は、必ず本人から生活状況の聞き取りが必要になります。また全財産が10万円を切ったくらいまで減っていないと、申請を受け付けてもらうのは難しい現実もあります。生活保護は申請のタイミングも難しいんです。

ひきこもりや障がいがある場合、自分の状態を説明するのは困難ですから、親が亡くなった後、子どもに同行してくれる人が必要になります。
そういった人を探すためにも、早めに支援団体や自治体に相談しましょう。

また、今住んでいる家が賃貸の場合、親が亡くなった後の子どもの住まいの確保をどうするのか検討を。
さまざまな事情の人のためのセーフティネット住宅情報システムなどで、情報を得るようにしましょう。

大切なのはプランを実行する親の覚悟

働けない中高年の子どもの将来を考えるにあたって、一番大切なのは、資産ではなく親の覚悟です。

ご相談を受けた中で、古い持ち家に住む、子ども3人がひきこもりのシングルマザーの人がいました。

生活保護を受ける案件かもしれないと思いましたので、自治体に相談することをアドバイスしましたが、今ある資産で子どもたちと生きていくプランを立てたいとその方が強く希望されました。実際のご相談では、さまざまな問題やお金の詳細を洗いざらいお話してくださり、私のほうからいくつかプランをご提案しました。

その方は、今の状況だと、「自分が死んだら子どもたちが死ぬことしか考えられなくなってしまう」という危機感をお持ちで、現状を何とかしなくてはいけない覚悟が強く、その日帰ってすぐ、お子さんを集めてプランについて話し合ったそうです。

プランの中に家を建て替えるというのがあったのですが、家族全員がそのプランを自ら選び、それを叶えるために、ひきこもりだったのに住宅展示場に出かけることができるようになったり、ネットで仕事ができるようになったりなど、お子さんたちがどんどん変わっていきました。
今はとても穏やかに親子仲良く暮らしていらっしゃいます。

親が覚悟して、このままだとダメで早く動いたことで、「生きるプラン」になったことは本当によかったと感じています。

反対に、親が覚悟を決めないことで、ずるずると苦しい生活スタイルが続くご家庭があります。

80代の母親と90代の父親で認知症、60代のひきこもりの息子さんのご家庭のご相談がありました。
80代のお母さんはお父さんの介護に疲れ、息子からの暴力にも悩んでいらっしゃいました。
資産は十分あり、お子さんにも残せるし、ご夫婦が介護施設に移ることも可能でしたので、そういったプランや施設への住み替えの準備を進めていたのですが、お母さんがやはり息子を一人にできないと言われて、結局今も精神的に苦しい生活をされているようです。

子どものひきこもりの状態が長引くほど、親も高齢化していきます。
早めに長期的な設計を立てて、覚悟をもってプランを実行していただくことが大切です。

取材/百田なつき

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