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山上徹也被告を待つ「監視カメラ付き個室」での“厳戒”拘置所生活の実態。「運動は平日30分」「入浴は週2回」「読書、手紙、差し入れOK」…刑確定後の処遇は?

集英社オンライン / 2023年2月15日 11時1分

安倍晋三・元首相銃撃事件で、奈良県警による捜査が終結した山上徹也被告(42)について、奈良地検は2月14日、奈良西署から大阪拘置所に移送した。前例のない他府県拘置所への移送となったわけだが、そこで彼を待つ拘置所生活とは? 元刑務官で作家の坂本敏夫氏が解説する。

前例のない他府県拘置所への移送

2月14日、奈良西署を出る山上徹也被告

奈良県警の取り調べが終了したことに伴い、山上徹也被告(42)は、2月14日、身柄を大阪拘置所に移された。被告人が裁判所管轄所在地でない他府県の拘置所に収容されたケースは前例がなく、なぜ、このようなことになったのか? 一言でいうなら警備上の問題による特例であろう。

本来ならば奈良地裁所在地にある奈良拘置支所に収容すべきところだったが、京都拘置所の支所として2022年7月に新設竣工した奈良拘置支所は職員数30名弱であり、デモ等の有事の対応がおぼつかない。



そこで検察庁と法務省が協議し、警備力に勝り、問題被収容者の処遇にも慣れている大阪拘置所に身柄を移すことを決めたのだろう。鑑定留置をした拘置所であり、いずれ一審判決後に控訴すれば収容される拘置所でもある。

法務省としては、名古屋刑務所の若年職員複数による受刑者に対する常態的な暴行等が発覚したこと、月形刑務所の病人受刑者放置による死亡事故の高額損害賠償和解事件などが公表され、行刑に対する不信感が助長される中、有名被告人・山上徹也についても処遇上、警備上の問題を憂慮しての決断だったのだろう。

大阪拘置所の生活と規則

一般的に殺人等の重大事件の被告人は監視カメラが設置された個室(独房)に収容する。自殺、自傷、逃走を防止し、脳梗塞等突発的に起こる病気の早期発見に備えるためである。

おそらく山上被告の場合は左右の隣室は空室とし、被告人同士の壁越しでの会話(通声という規律違反)をさせないようにするはずだ。保釈や執行猶予で山上被告よりも先に釈放された者から、収容中の山上被告の情報やメッセージが世間に流出することがないようにするためだ。

一日の生活は分単位で定められており、起床、点検、朝食、昼食、運動、入浴、午睡、点検、夕食、就寝という動作は、職員の号令、指示、チャイム等の合図で全員一斉に行われる。そして午後9時、就寝の合図で室内の照明は減灯される。

この時から翌朝午前7時の起床までの間は、布団の中にいなければならない。この間の読書は禁止、早く目が覚めても起床の合図があるまでは起き出してはならない。三食昼寝付きの生活で洗濯も調理・食器洗いもしなくてよい。個室内の自由時間はたっぷりある。読書、勉学、物書きで終日過ごすことになる。

病気になれば医師の治療も投薬も受けられる。入院手術の必要があれば、総合病院並みの設備とスタッフが配置されている医療刑務所に送られる。これらの食費、生活費、医療費などは支払う必要がない。すべて国の歳出予算で賄われる。一方、自費で食品や日用品を購入することもできる。

また、毎週2000円分くらいの菓子、パン、カップ麺、飲み物、缶詰、果実などを拘置所の売店で購入し、手元に置き飲食することができる。インスタントコーヒーやカップ麺の飲食のために、定時に熱湯の配付を受けることもできる。

平日に毎日行う運動は30分間、屋上に設置された20平方メートルほどの単独運動場に出て行う。柔軟体操、筋トレ、歩き回るといった運動である。入浴は15分間、夏季は週3回、その他は週2回、個室と同じフロアにある浴室に入る。シャンプーは拘置所の売店で自費で購入して使用できる。

面会、差し入れ、手紙のやりとりも

接見禁止が解かれれば、誰とでも面会が可能(写真はイメージです)

接見禁止が解かれれば、誰とでも面会が可能である。面会できるのは、行政機関の休日(土日祝日、年末年始等)を除く、平日の午前8時半から午後4時までで、一日につき一回、時間は30分以内、面会人の人数は3人までというきまりがある。遠路、面会するためにやって来たが、既に誰かが来て面会しているので、面会できずに帰る面会人も多い。

被告人でいる間は誰でも現金、衣類、書籍などの差し入れを受け取ることができる。郵送等で送られてきた食品は差出人に連絡し、返還を希望すれば送り返すが、基本的には廃棄処分となる。

手紙も被告人のうちは、誰とでもやり取りができる。ただし、刑が確定して死刑囚あるいは拘禁刑受刑者になると親族以外の者との面会、差し入れ、手紙のやりとりはできなくなる。よく耳にする獄中結婚や養子縁組は刑が確定後も面会等を可能にする目的で行うというのが一般的だ。

求刑は死刑、判決は無期刑か

2007年、長崎市長が選挙運動中に銃弾に倒れた事件があった。犯人の男は59歳の暴力団組員で一審では求刑通りの死刑判決、控訴審では無期刑に減刑されたという前例がある。山上被告の場合も求刑は死刑になる可能性が高いと思われる。そして判決は求刑通りになるか無期刑になるかというところだろう。

地裁の判決がいかなるものであっても、弁護側が控訴することは間違いないだろう。大阪高裁での判決後も弁護側の上告によって、最高裁の審理に移るだろう。山上被告の身柄は大阪拘置所に置かれたままで、最高裁の判決を待つ。最終的に刑が確定するまでの期間は数年から10年近くを要するかもしれず、長い拘置所生活になる。

生活態度次第で移送される刑務所が変わる

選択刑において、死刑が含まれる罪を犯した被告人に、裁判所が死刑判決を言い渡すケースは1パーセントにも満たないというのが現実である。山上被告の場合も死刑にはならないと思うが、死刑が確定した場合のことを記しておく。

死刑確定囚という身分になり、被告人に比べるとあらゆる行為に制限が加わり、視察も厳しくなる。ただし、心情の安定を図るとの理由でテレビ鑑賞、DVDによる映画鑑賞など単独で視聴させる機会を定期的に設けている。宗教家の支援を希望すれば個別の面接を受けることができるが、基本的にはいつ来るとも知れない死刑執行の日を待つことになる。

死刑は絞首刑、執行言渡しは、死刑場に隣接した教誨室に連行して行われる。正に執行直前の言い渡しである。死刑囚の親族には執行後に知らされる。その際、遺体と遺品の引き取りについての希望を聴取する。

2022年6月、刑法が改正されて、懲役刑(刑務作業が義務)と禁錮刑(刑務作業が義務ではない)がなくなり拘禁刑になった。現在は移行の準備期間で従来のままだが、山上被告の刑が確定するときには、拘禁刑になっている。拘禁刑の内容は改善更生に必要な教育、職業訓練、更生資金等を得るための刑務作業就労といったことになる。

山上被告の場合、おそらく有期刑でも20年以上の長期になると思われるので、長期刑の受刑者を収容する刑務所に送られるであろう。ここでは再犯者や犯罪組織構成員など犯罪傾向が進んでいるB級という判定と、非行前歴や犯罪前歴のない者など犯罪傾向が進んでいないA級という判定がある。

山上被告が分類審査によってBと判定されれば、大阪刑務所、岐阜刑務所、熊本刑務所といったB級収容施設に送られる。Aと判定されれば、岡山刑務所、千葉刑務所、大分刑務所といったA級収容施設に送られる。

AとBとでは大違いで、仮釈放の恩恵を受けられるか否かのみならず、受けられる時期も異なる。A級の無期は30年前後、B級の無期は、ほぼ仮釈放の見込みがない。あっても50年という例があった。現実を見れば最期は獄死という事実上の終身刑になっている。

最期に、老婆心ながら一言申し上げる。拘置所内でも規則に従い、好感を持たれる言葉遣いをして、一般的なモラルに反しない生活態度を維持しておけばAの判定をもらえる。将来の社会復帰のためにも我慢が必要ということだ。

文/坂本敏夫 写真/共同通信社 PIXTA

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