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〈行方不明から2年〉「裸の動画送って」「写真でもいい」“旭川いじめ事件”とはなんだったのか…支援者・親族の証言とともに振り返る“これまで”と“もう一つの旭川事件”とは?

集英社オンライン / 2023年2月14日 18時56分

北海道旭川市で中学生だった廣瀬爽彩さんが壮絶ないじめを受けた末、行方不明になった2021年の2月13日から丸2年の月日が経過した。のちに自ら命を絶つことになったこの“旭川いじめ事件”とはなんだったのか? あらためて当時の報道と支援者の証言を振り返る。

爽彩さんが行方不明になって2年…
あらためて振り返る“あの日”

「ねえ」
「きめた」
「今日死のうと思う」

北海道旭川市の廣瀬爽彩さん(当時14歳)から自殺を仄めかすようなメッセージがSNSを通して知人らに届いたのは、2021年2月13日午後5時半過ぎのことだった。
心配した知人の通報を受けた旭川警察署員はすぐさま爽彩さんの自宅に急行、パート先から駆けつけた母親とともに安否を確認したところ、すでにその姿はなかったという。



「母親によれば、彼女が仕事に向かう午後5時頃まで、まちがいなく爽彩さんは自宅の自室にいたそうです。ただ、警察が安否確認のために家に到着した時には自室はもぬけの殻でした。スマホの電源も切っていたようで、母親が何度かけても繋がることはありませんでした」(支援者)

亡くなった爽彩さん

この日の旭川市内はマイナス17度。自宅には爽彩さんの防寒着がそのまま残されていたことから、「この寒さでは凍死もありうる」と危ぶんだ警察が周辺を捜索したものの、爽彩さんの消息はつかめないままだったという。

「翌日も警察犬やヘリコプターまで出動して探したのですが、手がかりなし。その後、捜索は手詰まりとなり、3月4日には公開捜査となりました。親族やボランティアの協力のもと、爽彩の写真入りのビラを1万枚作って探したのですが、見つけてあげることはできませんでした。
ただ、よかれと思ってなのか”自称・占い師”が何人も現れては『北にいる』『南にいる』『東だ』『いや西だ』と発言、ボランティアのなかには悪ふざけをしている若者もいた。それでも、お母さんは藁にもすがる想いで娘の捜索をしていた」(前出・支援者)

爽彩さんが知人に送ったLINE

爽彩さんが変わり果てた姿で見つかったのは失踪から38日後の3月23日のことだった…

壮絶ないじめ それでも処罰されなかった理由

「(爽彩は)過去に壮絶ないじめを受けていた」と爽彩さんの母親はメディアに明かしている。「旭川いじめの事件」の詳細は2021年4月21日以降「文春オンライン」が報じ、世間に大きな衝撃を与えた。

「『文春オンライン』でも報じられていますが、以前の爽彩さんはよく笑って外にもしょっちゅう出かけるし、勉強も好きな子でした。それが学校にも塾にも行けなくなってしまった。自室に引きこもったきり、『ごめんなさい、ごめんなさい』、『殺してください』などと独り言を言うこともあった。絵が好きで以前はカラフルな明るい絵をよく描いていたのに、いつの間にかモノトーンの暗い絵ばかりを描くようになってしまった。全ては中学に入学してからのことです」(親族)

爽彩さんが描いた絵

廣瀬爽彩さん(当時14歳)が遺体となって見つかってから1年半が経った2022年9月20日、第三者委員会は、性的ないじめ、深夜の呼び出し、おごらせる行為など、中学校の先輩7人が関与した6項目をいじめと認定したが、自殺との明確な因果関係は認めなかった。

「第三者委員会が提出した最終報告書では『社会通念において、いじめとして認められるものだけいじめとして認定した』と記している。その結果、クラスメイトから爽彩さんが受けていた嫌がらせなどについては、いじめと判断するにはあたらないと結論づけました。ですが、爽彩さんは亡くなる直前までいじめで悩んでいた」(母親の友人)

幼い頃の爽彩さん

「裸の動画送って」「写真でもいい」「送らないとゴムなしでやるから」

「中学入学後に出会った年上の少年が、爽彩さんに対し、執拗に自慰行為の動画や写真を送るよう要求したのがはじまりでした。普通なら無視をすればよいだけのことですが、当時まだ12歳だった爽彩さんは怖さのあまり、自慰行為のわいせつ画像を少年に送ってしまった。
動画は拡散され、爽彩さんに対する“いじめ”へと発展した。助けを呼ぶこともできず、爽彩さんは要求に従うほかなかったと聞いています。
自暴自棄になったのはこの事件の直後から。年上のグループからのいじめに対しても抵抗するどころか『もう好きにして』『わかった』と投げやりに答えるだけだったといいます」(前出・支援者)

精神的に追い詰められたのだろう。同年6月22日には爽彩さんはA子ら10人ほどのいじめグループに取り囲まれ、公園の前を流れるウッペツ川沿いの土手で事件は起きた。

「いじめグループから『わいせつ画像を全校生徒に流す』、『死ね』と言われ、爽彩さんは『わかりました。じゃ、死ぬから画像を消してください』と懇願したそうです。すると、『死ぬ気もないのに、死ぬなんて言うなよ』と煽られ、爽彩さんは歩道橋の柵を乗り越えて土手に下り、ついにウッペツ川へと飛び込んだ。いじめグループから逃れるためにはそうするしかなかったのでしょう」(前出・支援者)

爽彩さんが通った中学校

ウッペツ川での“いじめ事件” は川に飛び込む直前に爽彩さんが学校に電話をしていたことからすぐに教師が駆け付けた。また、イジメの一部始終をみていた近隣住民が110番通報し警察もかけつけている。ウッペツ川での事件当日の夜、爽彩さんの母親が電源を入れてLINEアプリを開いたところ、上級生によるいじめの書き込みやわいせつ画像が残っており、いじめの実態が明らかになった。

事態を重くみた旭川署がいじめグループ全員を聴取したことは言うまでもない。しかし、わいせつ画像を送ることを強要した少年の年齢は14歳未満であるため刑事罰が問えず「触法少年」となり、厳重注意となった。他のいじめをした少年少女たちも強要罪として立件するには証拠不十分とされ、厳重注意処分だけで終わってしまった。

中学校の対応、“もう一つの旭川事件”とは…

2021年4月、「文春オンライン」は加害者グループに直撃取材をしている。いずれも遺族が“主犯”だと訴える少年少女たちからは謝罪の弁もなく、爽彩さんがPTSDに苦しみ、挙句に命を絶ったことに対しても、「う~ん、いや正直何も思ってなかった」と答える者もいたと報じられている。

学校側の対応も特記されるべきだろう。日に日に憔悴してゆく爽彩さんを見て、母親は何度も中学校の担任に「娘がいじめに遭っているのではないか?」と相談したという。その相談回数は2019年4月に1回、5月に2回、6月に1回を数える。

爽彩さんが描いた絵

「しかし、担任の答えは『(A子らは)おバカだから、いじめなどないですよ』『今日は彼氏とデートなので、相談は明日でもいいですか?』とはぐらかし、教頭も『10人の加害者の未来と、1人の被害者の未来、どっちが大切ですか。 1人のために10人の未来をつぶしていいんですか』などと発言、まったく取り合ってくれなかったそうです」(前出・支援者)

いじめの事実確認を求めるメディアの取材に対して「個人情報により、個別の案件にはお答えできません」と答えていた中学校側は、2022年秋におこなわれた保護者会では、前出の教頭の発言を否定、市教委も「(デートを理由にして断ったことなどについて)本人はそのようなことを言った事実はないと言っています」と回答している。

両者の溝は今も深まっており、市教育委員会は再調査を行う方針を表明、委員長には教育評論家の尾木直樹氏を選んだ。委員はほかに精神科医の斎藤環氏、児童心理に詳しい理化学研究所理事の仲真紀子氏らが参加し、遺族との面会や学校を視察、調査が進んでいる。

旭川地裁

爽彩さんの死から2年、遺族の悲しみはいまだ癒える様子はない。2月13日には市内某会場で身内や近親者が集まり、爽彩さんの三回忌がおこなわれた。事件報道後、ネットではデマや誹謗中傷が横行し、今も爽彩さんや遺族を傷つけている。遺族は、あらぬデマを流したとして旭川市内の女性に損害賠償を求め、旭川地裁に提訴した。デマをSNSに書きこんだ人物は、遺族とまったく縁もない“人見知り”程度の人物だった。

#2では、ネットで始まった“もう一つの旭川事件”を詳報する。

※「集英社オンライン」では、学校や職場でおきた“いじめ事件”について、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

Twitter
@shuon_news

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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