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『ミヤネ屋』『ゴゴスマ』…多くの素材を東京に借りなければならないのに、全国ネットのワイドショーを大阪と名古屋の放送局が作っている本当の理由とは?

集英社オンライン / 2023年2月21日 11時1分

テレビ局に27年間在籍したテレビマンだからこそ知っている内部事情や問題点を、NGなしで書き下ろした『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』 (光文社)より一部を抜粋、再構成し、ワイドショーの裏側をお届けする。

大阪や名古屋の放送局が全国ネットのワイドショーをつくっている…
そこには「仕方がない理由」と「決定的な弱点」が

どのワイドショーも見た感じはほとんど同じかもしれませんが、じつはその中には大阪や名古屋など、東京キー局以外が制作しているものがあります。現在放送されている代表的なものは、日本テレビ系列の『情報ライブ ミヤネ屋』(大阪・読売テレビ制作)とTBS系列の『ゴゴスマ GOGO! Smile〜』(名古屋・CBCテレビ制作)です。



まず、「なぜ大阪や名古屋でワイドショーを制作するのか」を説明します。全国ネットの生ワイドショーは東京で制作すればいいのに、なぜわざわざ地方で……と思われるかもしれませんが、それなりの理由があります。

1つは「東京キー局の金銭的な負担軽減」です。いま東京キー局各局は制作費をいかに節約しつつ、ゴールデンとプライムで面白いバラエティやドラマを制作するか、に一生懸命です。「朝から晩まですべて自分たちで時間を埋めるよりは、誰かに一部の時間を任せられたら超うれしい」というのがホンネなのです。

では誰に任せるか? というと当然、制作能力がそれなりに高くて、ワイドショーや情報番組のノウハウを持っているところに任せたいですよね? となればやはり「大阪や名古屋の局」が最適です。

関西も中部も関東に次ぐ大都市圏ですから、大阪や名古屋の放送局は「準キー局」とも呼ばれていて、全国ネットのバラエティやドラマの制作経験は豊富です。さらに、大阪や名古屋では長時間のローカル情報番組を各局が長年制作していて、激しい競争がくり広げられていますから、どの局も情報番組制作のノウハウは豊富です。特に、日本テレビ系列の読売テレビは、以前から日本テレビとの共同制作などでワイドショーを制作していて、いろいろな面でワイドショーにかなり慣れています。

ということで、東京キー局は「大阪・名古屋に一部の時間を任せて金銭的な負担を軽くする」ことができるわけですが、金銭的なもの以外にももう1つ大きな理由があります。それは「夕方のニュースを準備する時間を確保する」ことです。

ワイドショーにしろニュースにしろ、生で番組を放送するにはそれなりの体制を整える必要があります。なぜなら、もし大きなニュースが起きたら即座に放送対応しなければならないからで、取材をする記者にしろカメラマンにしろニュースデスクにしろ、気を抜くことができません。「次の時間になにを放送しようか」という打ち合わせをしたり準備をしたりすることが、生放送をやりながらだと難しいのです。


普通は「朝のワイドショー」「昼のワイドショー」「夕方のニュース」それぞれのあいだにはインターバルがあります。たとえばテレビ朝日系列だと、朝の『モーニングショー』と昼の『ワイド!スクランブル』のあいだには高田純次さんがお散歩していますし、『ワイド!スクランブル』と夕方ニュースの『スーパーJチャンネル』のあいだには『徹子の部屋』があったりDAIGOさんが料理をしていたり、『相棒』などの再放送があって、そのあいだにじゅうぶん「次の番組の準備」をする余裕があるわけです。

この再放送の代わりに地方局からワイドショーを放送することができたら、切れ目がなくなって視聴者を飽きさせないのではないかという発想で、日本テレビ系列とTBS系列は大阪や名古屋にワイドショーをつくらせることにしたわけです。最初このスキームが始まったときには、私も「なるほど! よく考えられているな」と思わず唸りました。

では、大阪や名古屋のワイドショーにはどんな弱点があるのでしょうか?
まず第一に、「多くの素材を東京に借りなければならない」のが弱点です。ワイドショーが使う素材は大部分がニュース番組からの借り物です。ニュースが発生する場所は極端に東京に集中していますから、多くの映像と原稿を東京から借りて制作することになるわけです。いまやオンラインで映像も原稿も共有できますから、そういう意味ではさほど問題はありませんが、なにかわからないことがあったりしたときに、問い合わせをするのが難しいのが大きなネックです。

東京で制作するワイドショーなら、同じ建物の中にニュースセンターがあるので、直接出向いて取材記者に質問することも容易です。ですが、大阪や名古屋だとそうはいきません。電話をかけるくらいしか質問する方法はないですし、そもそも「別の会社の人に電話して質問する」のは、相手が忙しいこともわかっているからしにくいです。こうした理由で、東京で制作する番組と比べて情報が遅くなってしまいます。

そもそも大阪や名古屋には、分野によってはくわしい記者が誰もいないのも問題です。コロナ禍対策やウクライナの戦争で、いまワイドショーで取り上げるネタのメインは「政治の問題」と「海外情勢」になっています。しかし、国会や各政党を取材する「政治部」と、海外支局を統括し外国のニュースを専門に取材する「外報部」は、東京キー局にしかないのです。ですから、政治ネタや海外ネタの専門家は、ほぼ東京キー局にしかいません。

東京なら人事異動で「政治部や外報部の経験者」がワイドショーにもそれなりの数います。もちろん大阪や名古屋の放送局にも、海外特派員経験のある人は少数ながらいますし、その地方の政治家には日頃から取材をしていますが、どうしても政治や海外のニュースは「東京に比べて弱い」のです。

もちろん、逆に「自民党本部に遠慮せずに大胆な放送ができる」とか、そういう利点もありますから、一概に「地方局が制作したワイドショーが悪い」とは言えません。でも、どのワイドショーを見るか、あるいはその番組で放送している情報の信頼性がどの程度あるか、を判断するにあたっては、こうした事情を念頭に置いておいたほうがいい、ということは言えると思います。

#2「テレビで放送の罰ゲームは”いじめ”を助長するのか」はこちら(2月22日11時公開予定)
#3「海外ロケの不思議なお約束とは」はこちら(2月23日11時公開予定)
#4「テレビ離れの若者がテレビ業界に就職を希望する本音とは」はこちら(2月24日11時公開予定)

『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)

鎮目博道 (著)

2023/2/22

‎ 208ページ

ISBN:

978-4334953638

みんなうすうす感じているアノ裏コノ裏をオープンに!
テレビ局に27年間在籍した立場だからわかる内部事情、問題点や外圧を、誰にでもわかりやすく解説していきます。
YOUTUBEに押され「テレビは終わった」と言われたりしているが、本当に凋落の一途をたどるのでしょうか!?
[番組の病巣][制作の闇][人材の裏側][周辺の実情][放送の壁]の5つのジャンルについてをこのような見出しで。

【ニュース】信頼をなくしたのは「レギュラーコメンテーター」がいるから。コメンテーターは毎日変えるべき
【海外ロケ】「歓迎の踊り」30万円! 海外ロケには「不思議なお約束」が……「あの探検隊」から現在まで続く「ビックリルール」の数々
【スポンサー】「ポルシェ」や「フェラーリ」が事故を起こすとニュースになっても、国産車の名前は明かされないのはスポンサーへの忖度……など45項目。

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