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【お箸を渡さないのは不便? それともエコ?】レジ袋・カトラリーを完全撤廃したローソンの最新店舗「グリーンローソン」が目指す“未来のコンビニ”の姿とは?

集英社オンライン / 2023年2月24日 8時1分

株式会社ローソンは、食品ロスやプラスチック使用の削減、アバターを利用した新しい働き方の実現など、いくつものサステナブルな施策を集めた実験型店舗「グリーンローソン 北大塚一丁目店」を2022年11月28日にオープンした。ローソンが目指す「未来のコンビニ」の姿とはどのようなものか、同社の担当者に話を聞いた。

コンビニは「変化創造業」

日本フランチャイズチェーン協会の発表によると、2022年の国内主要コンビニエンスストアの売上高は合計11兆1775億円と、過去最高を記録した。行動制限の緩和など人流の回復が好調の主な理由と考えられるが、一方で環境問題への対応や人手不足など、コンビニを巡る状況には多くの課題が残るという。



これらの課題を乗り越えるべく、全国に約1万5000店舗を展開するローソンは、2022年11月下旬に「グリーンローソン」(ローソン北大塚一丁目店:東京都豊島区)をオープンした。その経緯について、ローソンのインキュベーションカンパニー・事業開発部/マネージャーの只野ひとみさんは次のように話す。

「コンビニはその名前の示すとおり、お客さまやその地域が求める便利さに合わせて発展してきた“変化創造業”としての歴史があります。その一方で、近年は地球環境への配慮や省人化など、社会課題に対する取り組みが強く求められるようになりました。

では、便利さの追求とSDGsで示されるようなサステナビリティ(持続可能性)を両立するにはどうすればよいのか。ローソンでは、この問題に対するひとつの提案として、サステナブル型の店舗である『グリーンローソン』をオープンしました」

東京都豊島区北大塚にあるローソンの実験型店舗「グリーンローソン」

グリーンローソンの第1号店がオープンしたのは、東京都豊島区北大塚。JR大塚駅と東京さくらトラム(都電荒川線)の大塚駅前から近い、比較的庶民的な住宅街に位置する。

「北大塚という地を選んだのは、立地や店舗を運営するオーナーさまの熱意など、さまざまな条件を検討した結果です。駅前かつ近所に事業所や集合住宅があり、さらにお客さまが老若男女幅広いというのも、オープンするうえで大切な要素となりました」

国内屈指の繁華街・池袋を擁しながらも、東京23区で唯一「消滅可能性都市」に挙げられたことがある豊島区は、地方の人口減少問題を考えるうえでも象徴的な地域でもある。豊島区としても「SDGs未来都市」を宣言して先進的な取り組みを行っており、都市とコンビニという近未来の日常の風景を知るうえで格好の場所と呼べるだろう。

豊島区は内閣府より、SDGsへの優れた取り組みを行う自治体として「SDGs未来都市」に選定されている

CO2排出量やプラ削減で「地球にやさしい店舗」へ

グリーンローソンで実施される取り組みは、実にさまざまだ。セルフレジの導入や冷凍弁当の拡充だけでなく、レジ袋・カトラリーの撤廃やオーダーを受けてから店内の厨房で調理する「できたてモバイルオーダー」など、ローソン初の取り組みを含めて20種類以上にも及ぶ。

その中でも、CO2 排出やプラスチック使用削減など環境問題に関わる施策は、これまでの利便性との兼ね合いで大きく議論を呼びそうだ。すでに、レジ袋やプラスチック製のスプーンやフォークを積極的に提供しないコンビニチェーンも存在するが、グリーンローソンでは「完全撤廃」に踏み切る。これについては、来店者からはどのような反応があったのだろうか。

「詳細は現在もモニタリング中ですが、もっとも賛否両論が分かれるポイントではないかと思います。『コンビニが箸を渡さないのはあり得ない』『エコではなくエゴだ』という指摘もありましたし、反対に『今までなぜ環境問題に取り組まないのか疑問に思っていた』と賛同するご意見もありました。なお、レジ袋やカトラリーを求められるお客さまには、エコバッグや環境配慮した素材のマイカトラリーを販売するエシカルコーナーのご案内をしています」

ある程度の批判があることも想定されたが、そうした反応も含めてグリーンローソンの取り組みを総合的に顧客に評価してもらい、その効果を検証したのち、全国のローソン店舗の実情に合わせて施策を導入していきたいという。

「グリーンローソンで実施しているすべての取り組みが、そのまま他店舗で採用されるわけではありません。さまざまな検証を積み重ね、成功したものからローソンの各店舗に要素として取り入れて普及していければと考えています」

グリーンローソンで取り組まれる施策一覧

商品の陳列についても、冷蔵ショーケースに扉を設けるなどで大幅な省エネ効果を図っている

店舗の看板や買い物かごには再生プラスチックが使用されており、顧客とともに環境意識を高めるための取り組みが行われている

ジェンダーレスなデザインのグリーンローソン専用ユニフォーム。染料に野菜くずを使用した環境にやさしい素材を採用している

無人レジの先にあるコミュニケーション創出

環境問題やフードロス対策と並び、グリーンローソンでは「省人化」と「コミュニケーションの創出」にも取り組んでいる。ここで注目したいのが、デジタル技術導入の目的はあくまで「顧客に対する接客サービスの向上」にある点だ。

「お客さまがグリーンローソンに訪れたとき、従来のコンビニとの違いを一番に感じるのは、メインのレジカウンターがセルフレジになっていることでしょう。もちろん機械の操作に戸惑われるお客さまもいらっしゃるので、その場合はスタッフがお声がけして有人レジで対応します」

また、現在は収納代行やチケット発券など無人化できないサービスもあるため、こちらもローソン初となる有人のサービスカウンターをレジ脇に設けて対応する仕組みを導入する。店舗内で作業するクルーは最低2人となるものの、従来よりもレジ接客業務の割合が大幅に減ることで、売り場やサービスカウンターで顧客の買い物をサポートする「おもてなしクルー」としての役割が高まるという。

さらに、おもてなしをサポートするのは店舗にいるクルーだけではない。店舗出入り口のディスプレイやセルフレジの端末では、「アバター」のオペレーターによってレジ操作やおすすめ商品を案内する仕組みが導入されている。

アバターとして勤務するのは、時間や場所、身体的障がいや生活スタイルなどさまざまな理由でこれまで接客業に参加できなかった人たちが中心だ。「全員参加型社会」を目指すローソンでは、昨年アバターの公募を実施し、主婦やVtuber、ローソン勤務経験者など約400人の応募があり、グリーンローソンではこのうちの約30人がリモート勤務で店舗運営のサポートをしているとのことだ。

「対面の接客が苦手でも、パソコンの画面越しであればコミュニケーションを取れる人もいます。また最初はアバターに驚いていたお客さまも、何度か来店するうちに画面のアバターに話し掛けたりするなど、新しい形のコミュニケーションに親しまれている様子もありました」

アバターによるリモート接客を導入。レジ操作のサポートやおすすめ商品を案内してくれる

そのほかにも、自宅で不要になった紙袋を買い物用にリユースする「リサイクル紙袋」や、豊島区と連携して各家庭の余った食品を寄付する「フードドライブ」、衣類のリサイクル回収など地域の住民と密着して行われる取り組みなどが実施されている。

「ローソンはお客さまへの約束として、『圧倒的な美味しさ』『人への優しさ』『地球(マチ)への優しさ』の3つを掲げています。グリーンローソンにおける新しい取り組みも、この約束を実現するためのもの。地域の皆さまとの温かみのあるコミュニケーションを目指しつつ、さまざまなご意見をお寄せいただくことで未来のコンビニのあるべき姿に近づけると考えています」

セルフレジコーナーがメインに据えられ、スマホによるレジ決済などデジタル化が推進される

グリーンローソンでは既存のチルド弁当や常温弁当も冷凍販売用に仕様変更して食品ロス削減を目指す

オーダーを受けてから店内の厨房で調理する「できたてモバイルオーダー」

取材・文/栗原亮(Arkhē)
写真提供/株式会社ローソン

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