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若きアラン・ドロンにイーストウッドの出世作、坂本龍一がアカデミー賞を受賞した傑作にナチスドイツ時代の悲劇まで。映画史に燦然と煌めくイタリア名画10選

集英社オンライン / 2023年2月26日 18時1分

2月17日に刊行となる新書『永遠の映画大国 イタリア名画120年史』。イタリア映画祭を立ち上げた、著者の古賀太によるイタリア映画の歴史に残る傑作10選を紹介する。

『無防備都市』『自転車泥棒』『道』『8 1/2』『情事』『山猫』『荒野の用心棒』『木靴の樹』『ニュー・シネマ・パラダイス』『ライフ・イズ・ビューティフル』『君の名前で僕を呼んで』……など、映画好きなら一度は聞いたことのある名作が数多くあり、日本でも絶大な人気を誇るイタリア映画。

2月17日に公開されたティモシー・シャラメ主演の話題作『ボーンズ アンド オール』も、イタリア人のルカ・グァダニーノ監督作品である。



しかし、アメリカ、フランスなど他の国の映画に比べて語られる機会があまりなく、近年では公開本数が少なくなったことで、イタリア映画にはなじみがない、さほど見たことがないという人も多いのではないだろうか。

2月17日に刊行となる書籍『永遠の映画大国 イタリア名画120年史』では19世紀から現代までの120年を、約800の作品とともに通覧。イタリア映画の歴史を紐解く1冊となっている。

本記事では、そんな魅力たっぷりのイタリア映画の中でも歴史に残る傑作10本を紹介。

懐かしのあの名作を振り返りながら、ハリウッド映画に与えた影響や、フランスのヌーヴェル・ヴァーグに先んじたリアリズムの追求など、イタリア映画の魅力と独自性を「わかる」ためのポイントを紹介する。

燦然と輝くイタリア映画の大傑作10本

Album/アフロ

『カビリア』(1914)Cabiria
上映時間:2時間2分/イタリア
監督:ジョヴァンニ・パストローネ

1910年代のイタリア映画は史劇とディーヴァ映画によって、世界の最先端を行っていた。史劇は古代ローマや聖書などを扱ったスペクタクル映画だが、これはその代表作でD・W・グリフィスの『イントレランス』を始めとして、世界の映画に大きな影響を与えた。

紀元前3世紀、ローマとカルタゴのポエニ戦争を舞台に、貴族の娘カビリアの数奇な運命を描く。


『ナポリのそよ風』(1937)Il Signor Max
上映時間:1時間22分/イタリア
監督:マリオ・カメリーニ
出演:ヴィットリオ・デ・シーカ、アッシャ・ノリス

ファシズム期のイタリアにこんな洒落たコメディがあったなんて。カメリーニ監督は実はフランスのルネ・クレールや、ドイツ生まれでアメリカでも活躍したエルンスト・ルビッチに匹敵する喜劇の名手。

後にネオレアリズモ※の代表的監督となるデ・シーカが主演で、ハンサムな俳優姿が楽しめる。戦前の日本でも公開されて人気を呼んだが、邦題のナポリは実はほとんど出てこない。

※第二次大戦直後に現れたイタリア映画の新しい傾向。 現実を客観的に凝視し、ドキュメンタリー風に描写している

『自転車泥棒』(1948)Ladri di bicilette
上映時間:1時間22分/イタリア
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ

「ネオレアリズモ」と言えば、まずはこの映画。貧しい父子を演じるのは素人で、盗まれた自転車を探してさまよい歩くローマ市内をロケ撮影で見せる。

まるで現実そのもののようで、見ているとどんどんいたたまれなくなる。戦前にカメリーニの作品で脚本家としてデビューしたチェーザレ・ザヴァッティーニはデ・シーカの片腕となった。「キネマ旬報ベスト・テン」1位。

Album/アフロ

『甘い生活』(1960)La dolce vita
上映時間:2時間54分/イタリア
監督:フェデリコ・フェリーニ
出演:マルチェッロ・マストロヤンニ、アニタ・エクバーク

ロッセリーニの助監督を経てネオレアリズモの影響を直接受けたフェリーニが、この映画を契機に自由な語りを始める。マストロヤンニを主人公にローマの社交界や芸能界、カトリック教会を皮肉たっぷりに見せた。

カンヌで最高賞をとり、その年のイタリアで一番の興行収入を挙げた。「キネマ旬報ベスト・テン」2位。


『山猫』(1963)Gattopardo
上映時間:3時間7分(オリジナル版)/イタリア=フランス
監督:ルキーノ・ヴィスコンティ
出演:アラン・ドロン、クラウディア・カルディナーレ、バート・ランカスター

19世紀半ばイタリア統一時代のシチリア貴族の黄昏を華麗に描いた大作で、この作品の成功からネオレアリズモの旗手だったヴィスコンティは、豪華絢爛路線をひた走る。

若きアラン・ドロンとクラウディア・カルディナーレのカップルの舞踏会での鮮やかなダンスシーンには目を奪われる。彼らを見つめるバート・ランカスターの目は優しい。

Album/アフロ

『荒野の用心棒』(1964)Per un pugno di dallari
上映時間:1時間40分/イタリア=スペイン=西ドイツ
監督:セルジオ・レオーネ
出演:クリント・イーストウッド、ジャン・マリア・ヴォロンテ、マリアンネ・コッホ

アメリカで生まれた西部劇をイタリアに移し替えたのがマカロニ・ウェスタン(欧米では主にスパゲッティ・ウェスタン)だが、この映画はその潮流を決定的にした最初の作品。

クリント・イーストウッドが始めて名を挙げた作品で、彼は後に監督としても活躍する。高らかに鳴り響く音楽を作ったエンニオ・モリコーネとはこの作品から組み始め、以後盟友となる。黒澤明の『用心棒』とそっくりの構成で裁判にもなった。


『木靴の樹』(1978)L’albero degli zoccholi
上映時間:3時間6分/イタリア=フランス
監督:エルマンノ・オルミ

19世紀末の北イタリア、ベルガモの四軒の小作農家で貧しいながらも気高く生きる農民たちを描いてカンヌで最高賞を受賞。

演じたのはすべて素人の農民でオール・ロケ、自然光のみというネオレアリズモを究極まで追求した作品。60年代から活躍していたオルミ監督の最初の日本公開作で、「キネマ旬報ベスト・テン」2位。


『サン★ロレンツォの夜』(1982)La notte di San Lorenzo
上映時間:1時間45分/イタリア
監督:パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ

第二次世界大戦末期のトスカーナ地方で、ドイツ軍やそれに協力するイタリア人ファシストたちから逃げ惑う村人たちの姿を克明に描く。

6歳の少女のナレーションで進み、彼女が見た悲惨な世界が幻想的な表現と共に語られるタヴィアーニ兄弟得意のマジック・リアリズム作品。カンヌで審査員特別賞。

『ラスト・エンペラー』(1987)Last Emperor
上映時間:3時間39分(オリジナル全長版)イタリア=中国=イギリス=フランス=アメリカ
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
出演:ジョン・ローン、ピーター・オトゥール、坂本龍一

1960年代にデビューしたベルトルッチ監督が初めて全編を海外で撮影した作品で、清朝最後の皇帝、溥儀の生涯を描いて、アメリカのアカデミー賞で作品賞を始めとして9部門受賞。溥儀が皇帝になった1908年から1967年までを描く歴史大作で、日本の満州国支配を中心に、戦後の文化大革命なども描いた。

作曲賞の坂本龍一が満州国の撮影所長役を演じたほか、主役の溥儀はジョン・ローンが務めた。撮影のヴィットリオ・ストラーロが見せる華麗な映像にも注目。キネマ旬報ベストテン1位。

Album/アフロ

『ライフ・イズ・ビューティフル』(1997)La vita è bella
上映時間:1時間57分/イタリア
監督・出演:ロベルト・ベニーニ
出演:ニコレッタ・ブラスキ

イタリア映画が不況に陥る1980年代には俳優出身で監督も兼ねるケースが何人も現れた。ロベリト・ベニーニはその代表格で、もともとはテレビや舞台で俳優や歌手として活躍していたが、ベルトルッチの『ルナ』などに出た後に監督も始めた。

この作品は1930年代のトスカーナ地方を舞台にナチスの強制収容所に入れられる3人家族をユーモアと涙で描き、カンヌで審査員特別賞、アカデミー賞で主演男優賞を含む3部門を制覇。

文/古賀太

永遠の映画大国 イタリア名画120年史

古賀 太

2023年2月17日発売

1,100円(税込)

新書判/256ページ

ISBN:

978-4-08-721254-9

【豊かな映画文化はなぜ生まれたのか?】
『無防備都市』『自転車泥棒』『道』『8 1/2』『情事』『山猫』『荒野の用心棒』『木靴の樹』『ニュー・シネマ・パラダイス』『ライフ・イズ・ビューティフル』『君の名前で僕を呼んで』……。数々の名作を生み、日本でも絶大な人気を誇るイタリア映画。
アメリカやフランスに比べて、その文化の全容が語られる機会は少ないものの、世界の映画史に大きな影響を与えてきた。本書ではイタリア映画の歴史を、19世紀から現代までの120年を、約800の作品とともに通覧。「イタリア映画祭」を立ち上げた著者がその豊かな文化的土壌と、映画の本質を明らかにする。

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