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【2・21武藤敬司引退】引退決断直前の武藤に何が起きていたのか? 「かつてプロレスとはゴールのないマラソンと言った自分ですが…」

集英社オンライン / 2023年2月20日 11時1分

2023年2月21日にひとりのプロレスラーがリングを去る。武藤敬司。不世出のレスラーの軌跡を描いたベストセラーノンフィクション『完全版 さよならムーンサルトプレス 武藤敬司 「引退」までの全記録』 (徳間文庫) より一部を抜粋、再構成してお届けする。

「本当はプロレスを続けていきたい。だけど……」

武藤敬司が引退を表明したのは、2022年6月12日さいたまスーパーアリーナだった。

武藤はこの日、所属するプロレスリング・ノア、DDT、東京女子プロレス、ガンバレ☆プロレスを運営する「Cyber Fight(サイバーファイト)」が年に1度開催する4団体合同興行「サイバーファイトフェスティバル2022」のリング上で「来年の春までには引退します」と発表した。


©PRO WRESTLING NOAH

この大会から4か月前の2月8日、武藤は飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントで緊急会見を開き、左股関節唇の損傷で長期欠場することを発表した。同時に丸藤正道と保持していたGHCタッグのベルト返上も明かした。

「歩くことがままならない。病院に行ったところ、『長期欠場した方がいいんじゃないか』と言われた」

股関節の違和感は、前年12月23日に59歳の誕生日を迎えた8日後の元日、日本武道館で丸藤と組んで田中将斗、望月成晃の挑戦を受けたGHCタッグ戦で感じていたという。
1月8日に横浜アリーナで行った新日本プロレスとの対抗戦の直前には悲鳴をあげるほど悪化していたことを明かした。

「8日(の横浜アリーナ)は関節の中に注射を打ってもらって何とかこなせた。だけど、痛み止めが切れた途端に本当に動かなくなった」

横浜アリーナの対抗戦は、メインイベントで清宮海斗と組んで新日本プロレスのオカダ・カズチカ、棚橋弘至と対戦するビッグマッチだった。新型コロナウイルス禍で観客動員に苦戦するプロレス界にあって、団体の枠を超えたドリームカードは久々の活況を呈した興行となった。メインイベントを務めた武藤は、股関節の痛みに耐えながらオカダとの初対決、棚橋との久々の再会マッチへ挑んでいた。

それでも武藤は復帰する。

ゴールのないマラソンをゴールする瞬間

5月21日、大田区総合体育館で1月16日の仙台サンプラザ大会以来、4か月ぶりの復帰戦を行った。試合は、丸藤、小島聡と組んで潮崎豪、清宮、田中との6人タッグマッチだった。試合はパートナーの小島が潮崎に敗れたが、明らかに武藤の動きは精彩を欠いていた。深刻な表情でバックステージに現れると、一気に切り出した。

「非常に悩んでいるな。正直さ、相手の技を受けるんじゃなくて自分の技を仕掛ける時に痛みが走ったりするからよ。やっぱり気持ちが……気持ちが落ちるよ。近々に報告することがあります。以上」

一切の質問を受け付けず控室へ消えた。大田区大会後にノアは、6・12さいたまスーパーアリーナのリング上で武藤自身が「報告」の中身を明かすことを発表した。一体、何を発表するのか。様々な憶測と想像がささやかれる中で迎えたさいたまスーパーアリーナだった。

第8試合が終了した会場にテーマソング『HOLD OUT』が流れた。ノアのジャージに白と黒のキャップをかぶった武藤は長い花道を胸を張って入場した。リングインすると真ん中で「プロレスLOVEポーズ」を決め、ロープを背に2度、弾むように感触を味わった。拍手に包まれる中、マイクを握った。

©PRO WRESTLING NOAH

「武藤です。さいたまスーパーアリーナ多数、ご来場ありがとうございます。かつてプロレスとはゴールのないマラソンと言った自分ですが、ゴールすることに決めました」

報告の正体を察知した客席からどよめきが起こる。ファンの戸惑いを切り裂くように決定的な2文字を口にした。

「来年の春までには引退します。あと数試合はするつもりです。最後までご支援よろしくお願いします」

ファンに「引退」を報告すると真正面へ一礼し、再び『HOLD OUT』が鳴り響くなかリングを後にした。

取材・文/福留崇広(スポーツ報知記者)

『完全版 さよならムーンサルトプレス 武藤敬司 「引退」までの全記録』 (徳間文庫)

福留崇広

2022年1月12日

1100円

544ページ

ISBN:

978-4198948221

平成のプロレス界を牽引し常にファンを魅了し続けた武藤敬司。新日本プロレスでの衝撃デビューから闘魂三銃士結成、グレート・ムタの覚醒、nWoで日米マットを席巻、全日本プロレス社長就任、ノア移籍、そして電撃引退発表まで。武藤敬司に徹底密着した著者が描く不世出のプロレスの天才の軌跡。坂口征二、前田日明、佐山サトル、蝶野正洋、獣神サンダーライガー、船木誠勝、和田京平、桜田一男、若松市政、エリック・ビショフら、武藤を知る要人およそ30名を総力取材。

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