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転売ヤー大爆死! なぜ『水星の魔女』ガンプラは転売ターゲットにされなかったのか? 「バンダイが本気を出した…」ベテラン転売ヤーは「海外需要を狙ったが…割に合いません」

集英社オンライン / 2023年2月19日 17時1分

社会問題になることも少なくない転売ヤー。彼らに頻繁にターゲットとされるのが「ガンプラ」なのだが、第2期の放送を4月に控える新作TVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の関連ガンプラはどうやら勝手が違うらしい。なぜ新シリーズのガンプラは転売ヤーの魔の手から逃れられたのか。ベテラン転売ヤーが解説する。

一時は主役機にプレミアム価格がつくものの…

人気グッズを大量に買い占め、品薄になったところで定価より高値で売って儲ける悪徳転売ヤー(「転売」と「バイヤー」を掛け合わせた造語)が悲鳴を上げている。
彼らが転売に失敗したのはテレビアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の「ガンプラ」だ。

同アニメは7年ぶりの新作TVアニメシリーズで、監督に『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の絵コンテを担当した小林寛、構成・脚本に『コードギアス反逆のルルーシュ』の原案・脚本を担当した大河内一楼、さらにはオープニングテーマ曲に人気音楽ユニットのYOASOBIといった豪華な面子が起用された意欲作。


TVアニメシリーズで初めて女性を主人公に据えており、昨年10月2日の第1期放映開始前から、ガンダムファンの間で大きな反響と期待が集まっていた。

当然、同作のガンプラも大人気で、入荷した瞬間に売り切れるホビーショップが続出。その品薄感からオークションサイトでは一時、アニメに登場する主役機「HGエアリアル」(定価1430円)のガンプラに8000円のプレミアム価格がつくこともあったという。
その背後にガンプラを大量に買い占め、高値転売を狙う転売ヤーの暗躍があったのは言うまでもない。

お台場にある公式ガンプラ総合施設「THE GUNDAM BASE TOKYO (ガンダムベース東京)」でガンプラを買い求めるファンたち。この中に転売ヤーも少なくないはず

ところが、転売ヤーによってガンプラの取引価格がうなぎ上りに高騰していたのは昨年いっぱいまでで、第1期の佳境を迎えた年始からはウソのように落ち着きを見せたという。
それどころか、一部の転売ヤーにいたっては損切り覚悟の投げ売りに追い込まれているのだとか。
いったい、何が起きているのか? 転売歴ヤー歴10年の20代男性が言う。

「コロナ禍でガンプラブームが再燃したこともあって、販売サイトではさほど人気のないキャラでも定価の1.5倍もの値段がつくことも珍しくなかった。ガンプラは転売ヤーにとってかなりの利益が見込める有力商品なんです」(以下同)

ただし、『水星の魔女』は別だという。なぜか。

定価が安く出荷数も多くて利益にならない

「『水星の魔女』に関しては、首尾よく転売できても時給換算したら数百円ほどの儲けしか出ない。そもそもガンプラを買い占めるためには新作ガンプラの販売店を調べ、早朝から長蛇の列に並ばないといけない。手に入れてからは販売サイトに掲載、売買成立後には梱包・発送の費用もかかる。その手間暇と費用を考えたら、『水星の魔女』はまったく割に合わないんです。
にもかかわらず、在庫を抱えるよりはマシと、苦労して仕入れたガンプラを安値で投げ売りする転売ヤーが続出しています。かなり厳しい状況です」

この転売ヤーによると、ガンプラクラスの有力な転売アイテムでも一定の利潤をあげるためにはいくつかの条件があるという。

「ひとつは定価が高いこと。高額な分、転売差益も大きくなります。もうひとつは出荷数が少ないこと。希少価値があるからこそ、取引価格も高騰しやすい。
その点、『水星の魔女』関連のガンプラは定価が1000~2000円ほどと安い。しかも製造元のバンダイが売れると判断したのか、出荷数もかなり多く、転売差益は微々たるもの。販売サイトへの手数料や梱包などのコストを考えると転売ヤーにはいくらも利益は残らない。これならアルバイトの時給のほうがずっとマシです(苦笑)」

転売ヤーもバカではないはずだが、なぜそもそも転売差益の見込めない『水星の魔女』ガンプラに資金と労力をつぎ込むような計算違いをおかしたのだろうか。

「出荷数だけでなく、再販の頻度も多かったのだと思います。人気のガンプラが発売されるたびに、バンダイには再販などの転売対策をしてほしいという消費者の声が寄せられていましたから。
『水星の魔女』に関しては購入希望者がガンプラを定価で買えるよう、バンダイが本気を出したということなのでしょう」

オープニングテーマを担当するYOASOBI『祝福』のCDジャケット。完全生産限定盤にはYOASOBIとコラボしたオリジナルガンプラ「HG デミトレーナー」なども付属する

多くの転売ヤーが転売差益の低い『水星の魔女』関連ガンプラに手を出してしまったのは、海外にコネを持つベテラン転売ヤーの爆買いに煽られてしまったためという指摘も。前出の転売ヤーが続ける。

「中国、ドバイ、ハワイなどでもガンプラ人気は高い。こうした海外需要を狙って、現地にガンプラを流せるようなコネのある一部のベテラン転売ヤーが大量に買い占めた。その爆買いぶりを見て、他の転売ヤーが自分たちも大儲けできると勘違いし、十分な損益計算もせずに『水星の魔女』のガンプラ買いに走ってしまったというわけです」

実際に店舗へ行って在庫を検証

果たして本当に転売ヤーは『水星の魔女』で儲けが出ていないのか。実際に確かめてみると……。

まずはネットの某販売サイト。そこに出品されている『水星の魔女』ガンプラ(定価1500円)の提示価格は2500円程度だった。その差益は1000円だが、ここから手数料と梱包・配送料を差し引くと、確かに転売ヤーの利益はほとんどないと言っていいだろう。

某販売サイトでは大量にガンプラが出品されているが、提示価格は定価とさほど変わらない。「SOLD」の文字が躍るがこれでは転売ヤー的にうまみはあまりない

次に、バンダイが出荷数や再販頻度を増やしているのなら、店頭に商品があるはず、ということで、首都圏の大型ショッピングモールにあるホビーショップを訪れてみた。
すると、ここ1~2年、品切れが続いていた新作ガンプラだが、『水星の魔女』関連の商品は大量に陳列されている。
店員にガンプラの入荷状況を聞いてみた。

「『水星の魔女』シリーズはどのキャラのガンプラも普段よりずっと多く入荷しています。おかげで品切れもなく、常連さんはもちろん、初めてロボットアニメにはまったという方やガンプラに興味を持ち始めた子どもさんなど、幅広い層のお客様に買っていただいています。
ウチだけでなく、近隣のオモチャ量販店にも大量の『水星の魔女』ガンプラが並んでいますよ。転売ヤー? 新シリーズの発売当初には購入の列に並んでいましたけど、今はもう見ないですね。これだけ在庫がちゃんとあれば、転売しても高い値段はつかないでしょうから」

渋谷PARCOに展示された2m大のガンダム・エアリアル立像

最後にバンダイに出荷数や再販の実績を聞いてみた。

「ガンプラの出荷数については非公表となっています。また、過去シリーズとの売上比較などもコメントも遠慮させてください。ただ、ガンプラの生産体制の強化については、取り組みを続けていることだけはお伝えできると思います」(BANDAI SPIRITS広報チーム)

生産体制の強化が出荷数や再販頻度の増加を意味することは言うまでもない。
『水星の魔女』ガンプラをめぐる、転売ヤーVSバンダイのバトルはメーカーの勝利に終わったようだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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