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「信頼関係があっても触れない日はある」「週に1度断食させるワケ」…調教師が明かすサーカスのライオンたちの舞台裏。「ハッピーなライオンはハッピーなショーができる」

集英社オンライン / 2023年2月26日 11時1分

今年創立120周年を迎える、木下大サーカス。中でも人気が高いのが「奇跡のホワイトライオン世界猛獣ショー」だ。百獣の王・ライオンを自在に操る調教師、マイケル・ハウズさんにショーの秘密を聞いた。

吊りロープショー、イリュージョン、空中アクロバットショー、オートバイショーと、次から次へとハラハラドキドキのパフォーマンスが繰り広げられるなか、多くの観客を魅了してやまないのがライオンショー。
サーカスの代名詞と言っても過言ではない、ライオンショーの裏側に迫った。

サーカスのライオンたちはどこからやってくる?

――マイケルさんは2013年から木下サーカスに出演されているとのことですが、それ以前はどんなお仕事をされていたんですか?



我が家は祖父の代からサーカスの調教師で、私も自然な形でこの道に入りました。調教師になったのは19歳のとき。日本に来る前はサーカスでライオンなどの調教をしながら、映画に出演する動物の調教をする仕事もしていました。

――サーカスにいるライオンたちは、どういうプロフィールなのでしょう?

ときどき「アフリカで捕まえてくるんですか?」と尋ねられることがありますが、そんなことはしません(笑)。

イギリスに、サーカスやサファリパークのための動物を繁殖して育てるプライベートな動物園があって、彼らもそこの出身です。ですから、サーカスに出ているライオンたちはワイルドライフを知らないのです。

木下サーカスの看板プログラム、大迫力のライオンショー

――トレーニングは、どのくらいから始めるのですか?

ホワイトライオンのフェローとシーバは1歳を過ぎた頃から、ライオンのロミオとジュリエット兄妹はまだ赤ちゃんに近い月齢からスタートしました。やはり小さいころから始めた方が、触ることができるライオンになりますね。

ステージでライオンを抱きしめることができるのは、信頼関係があってこそ

――どんなトレーニングを?

最初は、トレーニングというよりも遊びです。座ったときにごほうびをあげて「これがお座り」といった感じで教えていく。すぐに覚える子もいれば、時間がかかる子もいますが、やがてどのライオンもできるようになります。

そうしながら、それぞれの個性を見極めて得意なことをのばしていくと、無理なくスムーズにパフォーマンスにつなげることができるのです。

「ライオンの良さを引き出すのが、私の仕事」とマイケルさん

ライオンたちと生活することが、すべて

――現在ショーに出ているライオンたちはそれぞれ、どんなタイプですか?

ロミオとジュリエットは18歳。ジュリエットは、本当に素晴らしいレディですね。ロミオは、ご機嫌なときはとてもいいライオンなんですけど、ときどきいじわるになることがあります(笑)。

でも、彼はルックスや動き方がエレガントで、ショーで見栄えがしますね。わざと私の言うことを聞かないといった難しいパフォーマンスは、彼だからできるし、似合うんです。

マイケルさんを見つけると、甘えるように近づいてくるロミオ(右)とジュリエット(左)

ホワイトライオンのシーバとフェローの2頭は血縁関係はないけれど、同い年の16歳。野生のライオンはメスがハンターなので、シーバのほうが好奇心旺盛で取材の人が来ると興味津々。

そんなときも、オスのフェローはあのとおり、ベッドでのんびりしています(笑)

フェローとシーバは、「カップルではなく、友だちという感じだね」

オヤツの馬肉をペロリ。「取材の人が来ると、いつもよりたくさんオヤツをもらえると思ってるんだ(笑)」

――マイケルさんがライオンたちと1日中一緒に生活しているからこそ、1頭1頭のことがよくわかるのですね。

テントの裏手に動物用のスペースと我々の居住スペースがあるのですが、どこに行っても隣同士。彼らの様子がよくわかりますね。

歩き方、声、水の飲み方、餌の食べ方、排泄、運動場に出すときの動きなどまで気を配っていますから、その日のコンディションは把握できています。ライオンと一緒に生活することが、私の人生のすべてなのです。

ライオンのスペースの向かい側には、マイケルさん一家が生活する移動式のハウスがある

触ることができるから
安全なライオンというわけではない

――バックステージでの彼らはとても穏やかな表情をしていますが、それでも野生の血が騒ぐ瞬間はあるのですか?

もちろんです! 私の仕事は、常に危険と隣り合わせです。檻を隔てないで接して触ることもできるから、大人しくて逆らわないライオンというわけではありません。

今日は無理だなと判断したら彼らに触れることはしません。ライオンだって機嫌がいい日もあれば、悪い日もある。私たちと同じですよ。

声を使い分けて、的確な指示を出す。手にしたスティックは動きを誘導するためで、ライオンを叩いたりすることはない

ショーの構成をするのも、マイケルさん。ライオンの体調によって、台の距離を微調整するなど、日々工夫をしている

――これまで、もっとも危険を感じたシチュエーションは?

ショーの最中にライオン同士がケンカを始めたときです。とにかく引き離さないといけないのですが、間に入ることで、私がターゲットにされる可能性があります。

ファイトモードから切り返させるためにさまざまなことをして、1頭をいったん退場させてからショーを続行しました。

――どういったことがケンカの原因だったのでしょう?

よくある小競り合いの原因の多くは些細なことです。ショーの時に使う椅子や台は「これが自分の」という意識があって、別のライオンが触ると怒ることがある。

餌の取り合いということもある。バックヤードの運動場に爪とぎ用の丸太がおいてあるのですが、これも取り合いになることがある。大げんかになる前に収めて、興奮がおさまらないライオンがいたら別のところで落ち着かせてから戻します。

――それができるのは、マイケルさんがライオンたちのボスだから?

いえ、経験によって対処の仕方を知っているだけです。決してボスというわけではありません。言ってみれば、一番上のお兄ちゃんみたいな感じではないでしょうか。

顔をすり寄せてくる仕草は、まるで猫のよう! しかし彼らは、決して大きな猫ではない

――では、マイケルさんにとってライオンたちはどんな存在なのでしょう?

Everything. Their life is my life. すべてです。
彼らの人生は私の人生。私と妻のボビー、2人の息子たち、そしてライオンたちは、ファミリーなのです。

ボビーさんは、愛する妻であり、仕事のパートナー

ライオンたちがハッピーでいることが一番大切

――マイケルファミリーの1日を教えていただけますか?

朝は6時半頃にライオンたちの部屋を掃除してから、彼らに食事を与えます。食事は1日に1回、馬肉や鶏肉を1キロから3キロくらいです。量に幅があるのはそれぞれの年齢や体重、その日の体調をみながら調節するため。

そして、週に1日、何も与えない日を作ります。なぜかというと、野生のライオンは獲物を倒せた日が食事の日。毎日食べられないのが普通なのです。ですから、飼育下のライオンも胃を空っぽにする日があるほうがナチュラルに近いので、体調がいいのです。

――ショーは2回公演の日、3回の日、休演日とありますが。

基本的には運動場でリラックスして過ごさせ、開演の1時間ほど前にハウスに入れて備えます。公演の合間はリラックスタイム。今日のように晴れていれば日光浴をしながらのんびりしています。

タテガミがないのでメスだと思われることも多い、ロミオ。マイケルさんによると「ときどきタテガミが生えないオスもいるし、一時的に落ちてまた生えてくることもある」とのこと

――オンとオフをしっかり分けているのですね。

そうです。バックヤードはリラックスする場所。ですから訓練的なことはいっさいやりません。休演日は一日中がリラックスタイムです。

ショーの間の休憩時間。ポカポカの陽差しに、思わずあくびが…

――マイケルさんのモットーを教えていただけますか?

ハッピーなライオンは、ハッピーなショーができる。彼らが毎日ハッピーでいられるよう、私は常に考え、彼らのことを思っています。ぜひハッピーなライオンたちのショーを観に来ていただきたいですね。

トラの入り口を抜け、真っ赤なテントに入るとショーの始まり!

撮影/山口規子 取材・文/工藤菊香

木下サーカス公式サイト
https://kinoshita-circus.co.jp/

3月12日(日)まで公演中!
立川公演
立川駅北 立川立飛特設会場 〜3月12日(日)

新潟公演
2023年3月25日(土)〜6月19日(月)
新潟県スポーツ公園 第4駐車場特設会場

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