【漫画あり】「レスの悩みにセクシー下着はいらない」なぜ夫婦はセックスレスになるのか? 失われた「私」を取り戻す戦いを描く『私の穴がうまらない』
集英社オンライン / 2023年3月4日 11時1分
3人の働く女性を中心に、セックスレスの問題を描いたコミックエッセイ『私の穴がうまらない』。これまでも、育児と仕事の両立、更年期など、人生に立ちふさがる壁の数々を描いてきた作者のおぐらなおみさんに、セックスレスの背景にある夫婦の問題や、解決の糸口について話してもらった。(前後編の後編)
思いやりの延長にあるのがセックス
―― 一方で、子どもがいても、夫婦関係を優先しているカップルはうまくいっている気がします。
そういう夫婦だと、子どもとしても気持ちが楽ですよね。子どもに手がかかると、そちらに神経が行っちゃうから、夫にまで気持ちが行かないっていうのが実際のところだと思います。
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漫画家・おぐらなおみさん
――この作品でも、子どもが赤ちゃんのときに妻が苦しんだエピソードがありますけど、子育ての負担が一方に偏ることも原因のひとつだと思います。
ワンオペ育児だとレスになりやすいという話も聞きますね。ずるいとか、相手のほうがいい思いをするのが許せないとか、作品ではそういう人も描きました。結局、思いやりの延長に、相手を愛おしく思う気持ちが生まれて、性生活につながっていくのかなと思うんです。でも家族が日常になってしまうと、日々の生活の中で、お互いへの思いやりを感じる機会も失われてしまうんですよね。
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――レタスクラブでの連載中や、書籍を出してからの読者の反響で、意外なものはありましたか?
レタスクラブは料理や生活情報の雑誌だし、こういうテーマを取り上げることへのクレームもあるかなと思ったんですけど、それはなくて。アンケートの反響もわりとよかったらしいです。連載を始めた頃はセックスについてみんなで話していいような空気ではなかったので、静かに読んでいただいている実感はありましたね。
単行本になってからは、何度も読んだとか、自分の悩みはここにあったんだっていう共感の声をいただきました。男性からは厳しい意見もあったんですけど、あるサイトのレビューで、「今、結婚を考えていて、自分は恋人関係がそのまま夫婦関係に移行していくと思ってたけど、そうではなくて、関係性が変わることを念頭に置いておくべきだと思った」という方がいらっしゃって。いい意見だなと思いましたね。
尊敬するところがないと夫婦関係は難しい
――関係は変わっていくということを前提に、お互い、努力しないといけないですよね。
そうなんですよね。日本的な家庭をイメージしていると、結婚すると新しいお母さんができたように感じてしまう方もいると思うんですよね。今までひとり暮らしだったけど、奥さんにご飯も作ってもらえて、家事もやってもらって本当ハッピー、みたいな(笑)。
――女性側にも、妻のほうが家事をやるというような意識はまだ強いと思いますね。
あると思いますね。でも、徐々に変わってきていると思います。私の息子は今、大学生ですけど、子ども世代にとって夫婦共働きは当たり前だし、身の回りのことは自分でできなきゃいけないとわかっていますし。若い人たちと話していると、変化を実感しますね。
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――欧米では結婚するときに、家庭生活について契約書を交わしたりもするそうですが、そういう約束事をすると何か変わると思いますか?
日本はそれでうまくいくのかな?と思いますけど、ある程度のことを決めておくのはいいと思います。たとえば、ふたりで仕事を続けるのなら、家事を分担して、「ゴミ捨ては夫がやる」とか、具体的に決めておいたほうがお互いやりやすいと思うんですよ。結婚するときに、「君を守る」とか言われてもね。
――ざっくりすぎますよね(笑)。
それよりも「週に3回、ゴミは出すよ」のほうがいいですよね(笑)。家事ってすごくいっぱいあるから、それを片方が全部やるとなると、へとへとになってしまう。そういうところからすれ違いが生まれて、それがセックスレスとか、夫婦の問題につながっていくんですよね。手を思いやる気持ちが夫婦を支えるので、思いやれない人とはしたくないっていうのは、当たり前の気持ちだと思います。
――思いやるどころか家庭内でのお互いの地位を下げていくというか、外でもパートナーのことを悪く言う風潮がありますよね。
そうそう。性生活に限らずですけど、夫婦生活って、お互いに尊敬するところがないと難しいですね。「こいつ、ダメだな」と思いながら夫婦を続けていくのは、やっぱり難しくて。
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妻がセクシーな下着を着てベッドで待つのが解決策!?
――無理やりにでも尊敬できるところやいいところを見つけて、口に出していきたいですよね。
そのためには、いいとこ見せてって感じがしますけどね(笑)。当然、こちらも見せなきゃいけないですしね。
――「思いやり」という話もありましたが、まさに今、セックスレスに悩んでる人が状況を変えるためには、何が必要だと思いますか?
作品の中でも、私の友達の話をもとに、小説家の先生がレスをどう打開したのかということを具体的に描いたんですね。だんだん配偶者は空気みたいになっていくけど、空気じゃないっていうところから始めるというのが、自分で書いててもいいなと思ったし、夫婦としてやり直すために、それが最初にできることだと思いますね。
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――何か大きく変えようとすると難しいから、小さなことから始めるのが大事ですね。
そうなんですよ。この連載を始める前に夫と話していて、「セックスレスに悩んでいる人が多くて、それを打開するために、妻がセクシーな下着を着てベッドで待ってることもあるらしい」って言ったら、夫がすごく嫌がっていて(笑)。
だから、特殊なことを急に始めるのは良くないですよね。気持ちが焦るとそういうことをしがちなんですけど、性のことは、大切な日常生活の延長にあるということを忘れたくないですよね。
家庭内で抜け落ちてしまう「私」の存在
――「空気じゃない」と思い始めるのは、すぐにできる気がします。
そうですね。あとは、自分を大事にすることですね。自分だけが無理をしても、問題解決にはならないので。お互いがいい人生を送るための夫婦生活ですから、自分をないがしろにしたり、相手に合わせすぎたりしても続かないですよね。家族としてうまくやっていこうとすると、「私が我慢すればここは収まるんだ」っていうシーンが多いじゃないですか。
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日本人って家庭運営には長けているかもしれないけど、家庭内での個人の幸せはないがしろにされがちで。家族も人間が集まっているんだということを忘れがちなので、そこは気をつけなきゃと思いますね。夫も自分もひとりの人間だと思うところから始めないといけなくて。
作品のタイトルにも「私」が入っていますけど、「私がどうしたいか」が大事。妻でもあって母でもあるけど、その前に「私」だよなって思うんです。
――「私」を忘れて、がんばっている人が多いですよね。
どうしても、母とか会社員っていう肩書きをちゃんとやろうって思うと「私」が抜けがちなので。そこは大切にしたいですよね。
漫画『私の穴がうまらない』を読む(すべての漫画を読むをクリック)
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取材・文/川辺美希 撮影/竹花聖美
『私の穴がうまらない』(KADOKAWA)
おぐらなおみ
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2020年2月28日
1155円(税込)
単行本 160ページ
978-4-04-064309-0
『レタスクラブ』連載で話題の”レス”夫婦コミック、待望の単行本化! 心と体にぽっかりとあいた、満たされない「穴」はどうすればいいの? それぞれの”レス”をほろ苦く描く、フィクションコミックエッセイ! フリー編集者のハルヒは、夫・マサルと中学生の娘・アラタの3人暮らし。気づけば夫とは何年も”レス”状態が続いており、虚しさを抱えていた。現代の夫婦の在り方をじわりと問うリアルな展開に読者騒然! レス夫婦の行きつく先は、離婚か、それとも…?
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