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渡邉優樹容疑者も潜んだ特殊詐欺グループの拠点“ハコ”とは?…「ボディガードなしなら即座に強盗に遭う」日本の犯罪者たちをターゲットにするフィリピンの容赦ない裏社会

集英社オンライン / 2023年2月20日 17時51分

逮捕された渡邉優樹容疑者も過去に潜んでいた“ハコ”。フィリピンにはそのような特殊詐欺グループの拠点が無数に存在しているという。そこでは何がおこなわれているのか。だが、日本の強盗犯の高跳び先であるフィリピンには思わぬ落とし穴も。暴力団関係者が実態を語る。

日本人の強盗がフィリピン人の強盗に襲われる

特殊詐欺グループを指示するなど、連続強盗事件の指示役とみられている渡邉優樹容疑者は、2021年4月にフィリピンの警察当局に、マニラの五つ星ホテルに滞在しているところを逮捕された。それまでの約1年、このホテルのスイートルームに滞在し、豪遊していたと思われる。

現地のニュース番組で報道される渡邉優樹容疑者

これまでの警察の捜査から、渡邉容疑者は詐欺で得た数千万円を、交際女性らに日本から運ばせていたことがわかっている。だが、「フィリピンでは、誰がいつ金を運んでくるのかすぐにわかる」とはとある暴力団組員。この男は、かけ子からタタキ(強盗)まで悪いことは何でもやってきたという。



「フィリピンには日本人が多い。それだけに情報は漏れやすく入手しやすい。今日、日本から誰が金を持ってやってくるのかという情報は、すぐに現地に入る」(前出)

そして日本から犯罪に絡んだ現金を持って渡航してくる者は、すぐさま強盗犯に狙われるという。襲ってくるのは日本人ではない。現地のフィリピン人だ。

渡邉容疑者が指示したとみられる強盗事件(防犯カメラ映像より)

「ヤツらは、相手が暴力団員だろうが半グレだろうが関係ない。油断すればいつでも襲ってくる」(同)

情報は日本人の間だけでなく、フィリピン人の犯罪グループにも流れているという。

ボディガードもつけずタクシーに乗ろうものなら、そのままタタキ(強盗犯)の餌食になる。フィリピンのタクシー強盗は有名だ。ネットやSNSには実際に被害に遭った人物による注意を呼び掛ける投稿がいくつもみられる。
在フィリピン日本国大使館も「マニラ首都圏及び近郊地域における邦人犯罪被害の傾向」でタクシー強盗についても注意喚起しているほどだ。

ハコの中では代紋や組織は関係ない

マニラに滞在していたこともあるというその組員は「マニラでは、儲けている者ほどボディガードが必要だ。そこまでの金がなければ、遊びに行くにも常に“危険”がつきまとう。道端を歩いていても、タクシーに乗ってもどこでも、日本人のタタキがフィリピン人のタタキにあうということだ。タタキで奪った金をフィリピン人のタタキにたたかれる。
ボディバッグなどに入れて出かければ金は絶対に取られる。ボディガードがいなければ、金は靴下に押し込んで出るしかない」と話す。

渡邉容疑者が五つ星ホテルに滞在していた理由も、優雅な生活を送るというだけでなく、危険回避の意味もあったのかもしれない。

渡邉容疑者は2019年に、マカティの廃業したホテルを3億円で購入している。4年の分割払いで購入という話もあるが、マニラに詳しい暴力団幹部は「たいがい誰かが金を出している」という。

※写真はイメージです

その年の11月には、このホテルを拠点とする日本人特殊詐欺グループ36人が逮捕された。しかし、そのうち渡邉容疑者を含む数十人のメンバーが摘発を逃れていたことがわかった。このような特殊詐欺グループが拠点として使う場所を“ハコ”と呼ぶ。
幹部は「絶対にバレないという自信があったんだろう。人出のない廃墟みたいなホテルに、電話線を何本もつなげれば、誰だっておかしいと思う。そこでバレなくても、結局誰かがしゃべるんだ」

今回の渡邉容疑者が指示する連続強盗事件の報道が過熱するあまり、過去のハコ摘発についても掘り返されているが、「特殊詐欺の拠点であるハコを押さえたといっても、たかだか1~2か所のこと。フィリピンには他にもハコが腐るほどある」とその幹部は話す。

ハコが狙う“キレイな情報”とは…?

ハコに入るのはどのような人物なのか。

「自分がいたことのあるハコの中では、山口組系や住吉組系といった組員や関東連合のメンバーなどが仕事をしていた。ハコに入れば代紋や組織の違いなんて誰も気にしてない。ノルマ達成に向けて頑張るだけだ」

さらに、使い捨ての取り子(受け子)と違い、こういうハコに入るにはある程度のネットワークが必要なのだという。
組員のところには「今でも特殊詐欺に関連する闇バイトの募集が頻繁にくる。タタキの募集もたくさん来るね。そういう募集で流れてくるのは“キレイな情報”だ」という。

※写真はイメージです

“キレイな情報”とは何なのか。組員は説明する。

「振り込め詐欺のターゲットをうまく騙せたら、その家に行ってお金を回収する必要がある。しかし、その過程でめくれる(警察にバレる)ことがある。たとえば3時までに銀行の窓口に行かせて、500万円をおろさせ、4時に家に取りに行く約束をしていたら、めくれた家はその時間には警察が張っているので、ハコの連中は取り子をわざと行かせない。
取り子が現れなければ警察は引き上げるが、ターゲットの手元にその500万円は残る。すぐに近くのATMで金を戻せばいいが、数百万円という大金だと何度も操作をする必要がある。詐欺にあったばかりでATMの前に立つのも不安だし、その後に大金を持って歩くのはもっと嫌だ。だから、翌日に銀行の窓口でその金を預けようとする。

そこで預けられる前に、その家に空き巣か強盗に入るチームを、ハコに潜む特殊詐欺グループがつくるというわけだ。こういう情報を“キレイな情報”という。
実行犯とハコにいるグループの報酬の取り分は空き巣なら『6:4』、強盗なら『8:2』。強盗の実行犯は罪が重いのでそれだけ取り分も多くなる」

特殊詐欺とそれに絡む空き巣や強盗はこのようにつながっている。
過去の事件の中にも、同じような手口で渡邉容疑者ら特殊詐欺グループが実行犯を操っていたケースもあるかもしれないのだ。

取材・文/島田拓
集英社オンライン編集部ニュース班

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