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〈感動の保育園卒園式の舞台ウラ〉「捨てられない」…保育士に大量に届く“名前入り湯呑み”や手作り作品。おじさんバンドと夜まで練習のお付き合い…新卒採用学生は“新人研修”という名のタダ働き

集英社オンライン / 2023年2月25日 11時1分

子どもにとってはメモリアルな保育園の卒園式。しかし、その裏では保護者や保育士たちのドタバタ劇が……。関係者が語る、卒園シーズンで本当に大変なこととは?

おじさんバンドに付き添ってなかなか帰れない

卒業シーズンの3月。
長い子は6年間の集大成となる保育園の卒園式。親にとっては小学生に上がる前の我が子の晴れ舞台だが、感傷に浸るのは親だけではない。ある保育士(30代女性)はいう。

「0歳から見ていたお子さんなので、卒園式ではグッときてしまって……ひとりでトイレに行けるようになって、お話もたくさんできるようになって、時にはお友達とケンカしたり、遠足での思い出などを振り返っていると本当に思い出いっぱいで涙が止まりませんでした」


※写真はイメージです

お世話をしていた園児が立派に挨拶をする姿を見れば、これまでの大変だった日々が報われたような気分となる。この場にいあわせるだけでも保育士冥利に尽きることだろう。

しかし、その裏側ではちょっとしたトラブルが起こることも。
九州の某保育園の園長(40代女性)が明かす。

「毎年、保護者会がサプライズで出し物をするんです。よくあるのがおじさんバンド。出演される親御さんは子ども達が帰った後に園舎に集まって練習をするんですが、戸締まりをしなくてはいけなくて……。盛り上げてくれるのはうれしいのですが、終わるまで私も帰れないのはちょっと辛いですね(苦笑)」。

卒園式の感動をぶち壊す出来事とは…?

近畿地方のある保育園では、卒園児の保護者らがクラスの担当保育士に「手作りのフォトアルバム」を作って渡していたが、すべての保護者が同じ熱量とは限らないようだ。ある卒園児の母親は言う。

「手芸が得意なお母さんが凝った写真アルバムを作ることを提案されていて。うちは3月に他県への引っ越しが決まっていてそれどころじゃなかったんですが、フェルト地を使った表紙を配ったりととても気合いが入っていて断るわけにはいかず……」

※写真はイメージです

また、あまりに力を入れすぎると、翌年の保護者から「去年と比べられて困る」という苦情につながることもあるんだとか。

フォトアルバムに限らず、保護者から保育士に、卒園のお礼にプレゼントを贈る慣例がある園も多い。しかし、それがありがた迷惑になってしまうことも。卒園記念に名前入りの湯飲みをいくつもプレゼントされたという、ある男性園長もそう感じるひとり。

「ありがたいけれど、ひとつあれば充分。ですが、処分するのも気がひけて困ります。保護者の経済格差などを考えて、お礼のプレゼントは受け取らないようにしています」

保育園では、3月末に入園や進級の準備が必要となるため、3月上旬に卒園式をおこなうことが多い。しかし、小学校の入学式まで家で子どもの面倒を見られる家庭は少ない。そうすると感動の卒園式の翌日でもしれっと登園することになる。あの感動はなんだったのかと、とてもシュールな気持ちになる保護者もいるようだ。

タダ働きに駆り出される短大生たちも…

そして年度替わり。この時期の保育士は大忙し。
卒園と入園と進級の準備を同時進行でおこなうだけでなく、3月末で退職する保育士がいれば、新規採用される保育士に引き継ぐ作業もある。

また、保育の現場は、既製品やお名前プリントシートの利用も広がっているが、園の方針によっては「手書き、手作り」が求められることもまだまだ多い。手作りとなれば作業量は増える。就業時間中では終わらず持ち帰りで仕事をさせられているのに、残業手当がつかないことも少なくはないのだ。

この状況をカバーするために、短大等を卒業予定の新卒採用の学生がタダ働きに駆り出されるケースがある。学生たちは「新人研修」の名目で、保育の補助や園内の掃除、整理だけでなく入園児や進級児のための物品製作なども求められる。園児が百人規模の園となれば大仕事だが、このような作業に最低賃金すら出さない園もある。

※写真はイメージです

短大生は卒業の直前まで学業に追われていることも多いのに、さらに保育園の仕事を手伝うように求めるのは、非常識と言わざるを得ない。そんな職場には入るべきではないのかもしれないが、内定を蹴って別の園に就職することは時期的に難しい。
中部地方の保育士養成校の50代の男性教員は「釣った魚にエサをやらないようなものですね」と筆者に苦々しく語った。

保育の現場は保育士あってこそ。その待遇の改善が園児の笑顔につながるのではないか。卒園、入園を控えるこの時期に、国や保育園関係者は改めてそのことについて真剣に考えてほしい。

取材・文/大川えみる
集英社オンライン編集部ニュース班

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