昨年の東京国際映画祭のコンペティション部門にノミネートされた松永大司監督の『エゴイスト』。ファッションや、恋愛相談、また羽生結弦選手を通してのフィギアスケートという競技の奥深さを分析した文章など、コラムニスト、エッセイスト、編集者として活躍した故高山真さんが、発行当時、浅田マコト名義で発表した同名の自伝的小説を映画化したものです。
学生時代、ゲイへの嫌悪感を露にした同級生たちへの復讐のように、故郷の田舎町に帰郷するときは、武装するかのようにブランド品に身を固め、東京で成功した編集者としての顔をアピールする主人公、浩輔(鈴木亮平)。華やかなシングルライフを送っていた彼は、パーソナルトレイナーとして知り合った龍太(宮沢氷魚)に心惹かれ、交際するようになりますが、龍太は病気がちな母を抱え、複数の職を抱える身。龍太を愛すれば愛するほど、金銭的なサポートを惜しみなくしたくなる、でも、これは果たして恋愛と言えるのか、自分を満たすエゴイスティックな行為ではないのか、そういった浩輔の心の葛藤を象徴したのがタイトルの『エゴイスト』となります。