乳首ピアスにポールダンス…ポルノ映画館、乱交サークルを取材。変態文学大学生・吉行ゆきのが「実践派読書家」として、作品世界を身をもって体験する理由
集英社オンライン / 2023年3月2日 17時1分
「変態文学大学生」という肩書以外に「実践派読書家」としても活躍する吉行ゆきのさん。変態文学の世界観をより深く経験するためにポールダンスやポルノ映画館、果ては乱交パーティにまで出没する。(全3回の2回目)
「実践派読書家」としてエッチな体験を取材する日々
──「変態文学大学生」という肩書以外に「実践派読書家」を名乗られていますが、これはどういうものでしょうか?
「実践派読書家」とは、文学の中に登場する変態性を自分でやってみるということを指しています。私なりの変態文学の楽しみ方として「実践」を行って、文学の世界をより身近に感じることが目的です。
変態文学を読んで「このシーンはエッチだな」「これはすごく刺激的だ!」などと感じたり「小説の内容に書かれた感覚を知ってみたいな」と思ったりしたら、とにかく実践できる場所に赴いて体験してみます。
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──これまではどのような実践をされましたか?
例えば、谷崎潤一郎の『卍』という女性同士の恋愛物語があるのですが、これを読んで女の子との情事に興味が湧いてしまいました。内容があまりにすごすぎて「女の子との性行為がこんなにも神秘的なのか!」と驚きました。私のような異性以外に付き合ったことのない人間からすれば、女性同士の同性愛や性行為は男女のものとは別の感覚があるようにおぼえました。
そこで女同士の性の感覚を味わうには「実際に女の子としてみるしかない!」と思い、早速レズビアンのイベントに行ってきました。そこで出会った好みの女の子をお持ち帰りしました(笑)。
「混浴サークル」という名の乱交サークルを取材
──すごい行動力ですね…! 私もそのようなフットワークの軽さが欲しいです。
伊達に「実践派読書家」を名乗っていませんからね! また、19歳の時に読んだ吉行淳之介の『砂の上の植物群』にはストリップのような女性の肉体美の描写があり、それに感化されて女性の体を美しく見せることに憧れたんです。そこでポールダンサーとして活動しました。
当時はダンサーとして本気で活動していたのでがっつり踊れました! ポールダンスを経験して、人前で素肌を晒けだして踊る恍惚感や快感は、本を読んでいるだけじゃ決してわからないと思いました。やっぱり実践があってこそ肌で感じられる物事がたくさんありますね。変態文学の世界観をより深く体験するために「実践派読書家」という肩書きを自分につけて活動しています。
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──やっぱり自分で体験してみないとわからないことってたくさんありますよね。他にはどのような実践をされましたか?
最近ではブログの記事執筆や取材などの仕事をしていることもあり、あちこちに出没しています。最近では「混浴サークル」という名目の乱交パーティーに潜入調査をして、主催者や参加者の方々にインタビューを行いました。
また宇能鴻一郎の『公衆便所の聖者』では映画館で性的な行為をするシーンがあったので、それに感化されて「ピンク映画館に行ってみよう」と実際に行ったりしています。最近は大阪にあるポルノ映画の聖地「上六シネマ」や「国際劇場」に行ってきました。上六シネマではご厚意で館長さんとお話しさせていただくこともできました。
あとは乳首ピアスを開けたので、それについて記事を書いたりもしましたね。「みんなが怖くてちょっとやらない」ことを自分でしてみたり、実践している人たちを取材したりしてレポートを書くのがとても楽しいです。変態文学の世界に一層はまっている感じがします。
オススメ変態作品5選
──変態文学の世界にどっぷりな吉行さんですが、最も変態性を感じた文豪はだれですか?
変態だと思った文豪はやっぱり川端康成ですね! いつも作品を読みながら「ちょっとそれはロリコンすぎないか」と何度もツッコミを入れてしまいます。彼の作品を読むたびに「文才がなかったら、貴方はきっと犯罪者だったよ」と心の中で呟いています。
文学が好きな人の中には、川端康成がロリコンと言われているのを聞くと、カンカンに怒る人もいます。ですが、私は読む人それぞれの解釈で読めばいいと思います。私は文学をもっと自由に読む人が増えたらいいなと考えていて、その実践としての変態文学でもあると思っています。
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──吉行さんのオススメの変態文学作品を5つ教えてください
最初に挙げたいのが吉行淳之介の『暗室』ですね。これを読んで「吉行淳之介って私だったんだ!」って思って一瞬でファンになってしまいました。これは「官能」について深く考察した作品なのでとてもオススメの変態文学です。
ちなみに、私は「吉行」という苗字をペンネームにしているのですが、よく「ご子息ですか?」「隠し子ですか?」と言われますが、あまりに吉行淳之介を偏愛しすぎて、勝手に結婚しただけなんです(笑)。
また他には、
・文章が染みこんで呪いのようにまとわりつく、岡本かの子の『老妓抄』。
・最も変態なのは「この人だ!」と思わせてくれる、川端康成の『千羽鶴』。
・「生」を謳歌するための「性」と官能小説の可能性を教えてくれる、リーラセフタリの『背徳の聖女』。
・「性」の気持ち悪く不気味な部分と恐ろしく美しい部分、「ゾッとする」という言葉の二面性を併せ持つ作品の、野坂昭如『骨餓身峠死人葛』。
以上の5点が私のオススメの作品です。変態文学に興味のある方はぜひ手に取ってみてください!
ガーターをはいて街を歩く変態文学大学生・吉行ゆきの写真(すべての画像を見るをクリック)
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取材・文/福井求 撮影/佐賀章広
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