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〈実録〉「お前の恥ずかしい画像バラまくぞ!」恐怖のハニートラップ”セクストーション”の手口を被害者が赤裸々激白

集英社オンライン / 2023年3月3日 17時1分

マッチングアプリなどで出会った異性に「互いの恥ずかしい姿を見せ合おう」などと持ちかけ、そうした画像や動画を見せた途端、「この恥ずかしい姿バラまくぞ」などと脅迫してお金を騙し取るデジタル性犯罪「セクストーション」の被害が日本でも増えている。今年2月初旬、実際に被害に遭った男性がその詳細を赤裸々に語る。

マッチングアプリで出会い「ビデオ通話しない?」

セクストーションとは「セックス(性的)」と「エクストーション(脅迫・ゆすり)」を合わせた造語で「性的脅迫」のことを指す。

数年前から米国などで確認され始め、2014年にはフィリピンで国外の高齢男性をターゲットに犯行を繰り返していた組織が逮捕されたり、また、被害者が自殺するなどでFBIも注視している新手の犯罪だ。日本国内でも2015年頃から被害が増え始め、大阪府警察なども警鐘を鳴らしている。


日本国内でも被害が増えているセクストーション(大阪府警察のサイトより)

今回、セクストーション被害に遭ってしまったのは20代の会社員男性のAさん。現在未婚で、出会いを求めて使っていたマッチングアプリで「クリスティーン」と名乗る韓国女性と出会い、ビデオ通話中に被害に見舞われた。

Aさんがその状況を語る。

「僕はこれまで海外女性との交際経験があり、海外の利用者が多いマッチングアプリを利用していました。その中でクリスティーンとマッチしてやり取りを始めたのは今年1月中旬頃。そこから被害に遭うまで2週間ほど毎日のようにやり取りをしていました。

彼女が『近いうちに日本に行く。だから案内してくれる友達が欲しい』と言うのでInstagramを交換しました。そこでもなごやかな会話をしていたのですが、2月初旬、Instagramを交換して2日目の夜に突然『ビデオ通話しない?』と誘ってきたんです」

マッチングアプリで出会った異性と会う前にビデオ通話をするなんて、と思われる方もいるかもしれない。だが、Aさんは「海外の方々はビデオ通話を気軽に使う印象があり、アプリで出会った相手に持ちかけること自体は普通のことなので、あまり警戒心はありませんでした」と告白する。

すぐにInstagramのビデオ通話で彼女と対面した。

ビデオ通話中、突然、服を脱ぎだし……

「スマホの画面越しに映った彼女はかなりかわいかったです。彼女としても僕にいい印象を抱いていたようなので、完全にテンションが上がっていました。

するとビデオ通話開始から5分もしないうちに彼女の様子が豹変し『I'm horny(ムラムラしてきた)』などと言い出したんです。さらに着ていた服を脱いで全裸になり、こちらが制止する間もなく自慰行為を始めたんです」

ビデオ通話中、突然、服を脱ぎだしたクリスティーンの姿。Aさんがとっさに録画していた

あまりに急な事態に驚いたAさん。「おいおい、ヤバイ女だな…」とは思ったものの、自らの陰部をまさぐるクリスティーンのそのさまを見て冷静さを失ってしまったという。

「クリスティーンが『あなたもやりましょ』と誘ってきたので、それに応えない手はありませんでした。ただ、こちらが自慰行為を始めて10秒、20秒もしないタイミングで、突然、僕のスマホの画面がPCのデスクトップ画面に切り替わったんです」

これに驚いたAさんを、さらなる衝撃が襲った。

「そこに映し出されたPCのデスクトップ画面は、おそらくクリスティーンか、その共犯者のものだと思うんですが、僕が自慰行為する様子を録画した動画データと、僕のInstagramのフォロワー一覧のスクショ、さらにはInstagramと連携していたFacebookのフォロワー一覧のスクショが映し出されたんです。一瞬、何が起こったのかわかりませんでしたが、そこでビデオ通話は終了しました」

AさんのFacebookやInstagramのフォロワー一覧を見せて「バラまくぞ」と脅すクリスティーン

パニックに陥るAさんを、クリスティーンからのさらなる追撃が襲う。Instagramには「動画を消してほしければ5万円を払え。でなければFacebookとInstagramの友人にこの動画をバラまくぞ」とのメッセージが送られてきたのだ。

「やられた…と思いました。そこですぐさま『手持ちで5万円はない。2万円しか払えない』
とメッセージしました。すると『なら2万円払え』とPayPalの口座を指名してきました。とにかくその時は時間を稼ぎたかったので、すぐに2万円を振り込んだんです」

「あと2万円払え。そしたら終わりにしてやる」

「5万円払え」と脅しにかかるクリスティーン

“時間を稼ぎたい”というのには、Aさんなりのこんな考えがあったからだという。

「たとえ5万円を払ったところで脅迫が終わるとはとても思えなかったからです。きっと、その後もカモられるのだろうと。自分の恥ずかしい動画を、女性を含む多くの友人に晒されるくらいなら、みんなに自分から事情を打ち明けるしかないと思いました。

2万円だけ払ったのは、そのための時間稼ぎです。僕はすぐにFacebookとInstagramのフォロワーに『実はこんなトラブルに巻き込まれた。もしかしたら近日中にその動画がDM上に届く可能性もあるが、その動画は開けないでほしい』というメッセージを一斉送信しました」

Aさんはその後、クリスティーンから連絡がきても、無視するつもりだった。しかし事情を知った友人が「指定の金額を支払ったら本当に脅迫は終わるのかどうか、その結末が知りたい。5万円で脅迫が終わるなら、安いもんじゃないか?」と、残りの3万円の半額を寄付してくれたという。

それもあり、この苦しみから解放されるなら、と一縷の望みをかけて満額を支払ったのだが、やはり脅迫は終わらなかった。

「残りの3万円を支払うと、クリスティーンは『お前は昨日5万円払うと言ったろ?』と言い出しました。僕が『昨日すでに2万円払ったでしょう。そして今日3万円払った』と伝えたら、『わかった、だけどあと2万円払え。そしたら終わりにしてやるよ』と言ってきたんです。僕や友人が危惧していたように、満額払ってもこの脅迫は終わらないんだな……と思いました」

すでにクリスティーンとの連絡は絶っているものの、Aさんは、いつ何時、その動画が友人一同にばら撒かれるかわからない恐怖に怯えているという。

「今思えば、いくら恐喝されても最初からお金は払ってはいけなかったと強く思っています。結果的にお金を払っても恐喝は終わらなかったので、即座に相手をブロックして無視すればよかったんです。それ以前に、いくら親しくなったとはいえ、アプリなどで出会った女性の誘いに乗って陰部を露出したりしなければいいわけですが……。ただ一体、世の中のどれだけの男性が、事前知識がない状態で僕と同じ状況にあった時、この誘いを断れるんですかね……」

クリスティーンからの要求を無視し、ブロックしたAさん

昨年5月、米カリフォルニア州では、このセクストーションに引っかかった17歳の男子高校生が自らの命を絶つという痛ましい事件も起きた。また、今回のAさんへの要求金額は5万円だったが、これまでに起きた被害事例では数十万円から数百万円ものお金を脅迫されたケースもあるという。

もちろん被害は男性だけにあらず、恐喝犯が男性で被害者が女性というケースもあるようだ。男女ともにさほど親しくない相手とのビデオ通話には十分に注意が必要だ。


取材・文/河合桃子

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