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家賃14万円から7万円へ。仕事の犠牲なし、近所付き合いのしがらみなし。東京→那須塩原への「転職なき移住」は幸せの極地なのか

集英社オンライン / 2023年3月8日 11時1分

コロナ禍の影響でリモートワーク経験者が増え、地方移住への関心が高まっている。政府も東京圏等の企業に勤めたまま地方に移住する「転職なき移住」を後押し、通勤時間短縮などにより、年間153万円程度の節約ができるという内閣府データもある。転職をせず仕事はそのまま、栃木県で快適に暮らす家族の話を聞いた。

自宅で働けるなら都心に住む必要はない

タケシ(37)は東京の大手通信事業を手掛ける企業にITエンジニア兼マネージャーとして勤務している。妻のヨシミ(36)とは学生時代に仙台で知り合うが、タケシは東京、ヨシミは青森出身だった。やがてふたりは2015年に結婚、東京都豊島区に住み、タケシは都心のオフィスに通う。

リモートワークをするタケシの元に、長男が時々遊びにくる


タケシはその前年にスノーボードと観光で初めて訪れた那須塩原の自然の豊かさと町の美しさが印象に残っていた。

2019年に再びキャンプで那須塩原を訪れた際に、友人から移住者の先輩を紹介される。タケシの会社はリモートワークを導入しており、それまでにも地方での生活に漠然とした興味は抱いていたが、実際に移住して暮らす人の具体的な話を聞いたことで、心動かされたという。

そして2020年、コロナ禍で仕事は完全リモートワークとなり、長男(2)も生まれたことで、那須塩原への移住の本格検討を始める。

「自宅で働けるなら都心に住む必要はないのと、コロナ禍にもなり、東京で伸び伸びと子育てできるとはとても思えなくなったことで、リアルに移住を考え始めました」(タケシ、以下同)

しかし青森出身のヨシミは、すぐに賛成してくれなかった。地方暮らしの大変さを知っていただけに、「何もない田舎はつまらないよ」。
そこでタケシは那須塩原市の移住促進センターにオンラインで相談、2020年の秋、現地見学会に家族みんなで参加することに。

見学会はテレビ番組の取材も入り、図書館や保育園など、現地の多くの場所を丁寧に案内してもらったことでヨシミも納得、移住に同意してくれたという。

春は広々とした菜の花畑でのんびり

「妻は実際に那須塩原という地域を詳しく見て、現地の人の話を聞いて『私の原体験としての田舎とここは違う』と思ったようです。田舎にもいろいろあるんだな、と。ここは観光地なので、アウトレットなど商業施設も充実していますし、大手スーパーやコンビニもあり、徒歩圏内である程度便利な生活ができます。また、東京より子育てしやすそうだというのも、夫婦で移住を決めた大きな理由の一つですね」

犠牲にするものは少なく、QOLが爆上がり

翌2021年2月、一家は晴れて那須塩原市民となった。
最初は賃貸マンションに暮らしたが、家賃は豊島区時代の約14万円から7万円へと、大幅なコストダウンとなった。

塩原は紅葉も美しいので、四季を通じてドライブが楽しい

2022年11月に掲載された内閣府のHP( 第1章 第3節 テレワーク等による地方への新たな人の流れ - 内閣府 (cao.go.jp))に、「地方圏へ住み替えた場合のコスト試算」が出ている。それによれば、リモートワークにより東京の仕事を続けながらの住み替えによって、物価や住居費が安くなることや、通勤時間短縮による効果などで、年間153万円(1カ月12.8万円)程度の経済利益が得られる可能性があるそうだ。決して少なくない金額だ。

実際に移住してみての住み心地について、タケシはこう話す。
「仕事をはじめ、犠牲にするものは少なく、QOLは爆上がりです。近所に大きな公園や牧場があり、家族でよく散歩します。混雑がないので、思いつきで気ままに近場の観光地や温泉にドライブに出かけられます。東京にいる時は事前にスケジュールを組んで予約して行ってもどこも混んで行列で。こちらは『今日だめならまた明日、来週行けばいいね』と、行動の自由度が大きいです」

徒歩圏内にある観光整備された牧場では、長男も思い切り走り回れる

東京出身のタケシにとって、退屈だと感じることはないのだろうか。

「全くないです。移住を真剣に検討していた2020年の『都道府県別魅力度ランキング』で栃木県は47位ですが、ああいう見せかけのランキングはあてにならないことがよくわかりました。

昨年、仕事で東京に出向いたのが計10回程。たまに行くと高層ビルを見上げて『東京ってキラキラしてるな』とは思いますが(笑)、ずっといなくてもいいかな。長く東京に住んでいたから、田舎のよいところを見つけやすいのかも。ここはいざとなればすぐに東京に行けるし、食べ物も美味しいし、生活に必要なものも揃うし、バランスが取れたちょうどいい場所だと満足しています」

10年先のことは今悩んでもわからない

ご近所付き合いや、お子さんの進学先など、心配事については?

「ここは別荘エリアが点在していたり、大きな工場があったりして、外からやってくる人、新幹線通勤する人など、新しい住人も多い土地柄。だからか、ご近所付き合いもさばさばしていて、面倒なしがらみなども今のところ感じません。

自治体としても移住促進や子育てのサポートが充実しているので、その点もよかったです。子どもの進学先の選択肢は、東京より少ないのは事実ですが、10年先のことは今悩んでもわからない。自分もどうにかやってきたから、まあ息子も大丈夫だろう、ぐらいに思っています」

整備された大きな公園も徒歩圏内で、長男はいつものお散歩を楽しむ

生活コストの増減についても聞いてみた。
「貯金できる額が増えるはずだったんですが、こちらへ来てからドライブが楽しくなって、安い軽自動車でいいやと思っていたのが、SUVを買ってしまい、さらに出かけた先でお金を使ってしまって(笑)。そういうことをしなければ貯蓄は増やせるでしょうね。東京時代に比べて光熱費は上がりましたが、野菜などは安いですし」

今は新たな楽しみが出来たそうだ。
「今月、那須塩原駅から3km程の土地に新築した自宅が完成します。憧れだった薪ストーブを入れたので、参加している自伐型林業で薪をストックするのが最近の趣味。これから庭を手入れしたり、木を植えたりもしたいし、自宅でキャンプに近いことがやれそうで楽しみです」

新居に導入した念願の薪ストーブのため、伐採から薪作りが最近の趣味

身近な自然や温泉などのスポットをまだ遊び尽くしておらず、実は移住してからスノーボードにはまだ一度も行けていないのだとか。

「転職なき移住」を満喫するタケシは実にいい笑顔で、そんなあれこれを気さくに話してくれたのだった。


取材・文/中島早苗

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