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〈You Tuberの確定申告〉「家賃を100%経費にできないとは知らなかった」…元国税調査官に聞いた! “高級腕時計購入代”“自宅兼撮影所の高級マンションの家賃“は経費計上できるのか? You Tuberに直撃すると予想どおりの回答が…

集英社オンライン / 2023年3月7日 11時1分

今や、子どもたちの憧れの職業として名前が挙がることも多いYouTuber。広告収入が減少傾向にあるといわれる昨今だが、夢のある職業には変わりない。とはいえ、彼らも自営業。この時期になれば確定申告をする必要があるが、動画の企画で購入した高級時計や、撮影場所である自宅高級マンションの家賃は経費にできるのか?

できれば早期に青色申告がいい

YouTuberの税金のあれこれについて、元国税調査官で税制改正セミナー講師を務める税理士、松嶋洋氏に解説してもらった。
「そもそもYouTuberの方々がどのような種別で申告しているのか、例えば青色申告なのか白色申告なのか、または個人事業主なのか法人格での申告なのかは手間や収入金額によって違ってくると思います。



記帳や手続きの手間が大きいですが、できることなら早期に青色申告にした方がいいでしょう。というのも、税制面での優遇措置を得られますし、何より帳簿がなければ、税制上負担が大きな雑所得とされる可能性も大きくなります。

(申告の種別の)判断に迷われている方は税務署や税理士に相談する、というのも一つのやり方です。税務署は記帳の方法などもしてもらえますし、税理士に依頼すればコストはかかるものの、記帳してもらった上で原則として青色申告で処理してもらえます。

法人での申告か、個人での申告かの判断は、売上1000万円が目安と言われます。
つい先日もある男性アイドルが法人を作ったというニュースが流れてきましたが、彼のように芸能事務所に所属していてギャラが事務所から振り込まれている場合でも、法人を作ればそこで家族などを役員や従業員にすることによって節税ができますので、そうした芸能人は多いようです。
ですが、法人を作るにしてもコストを要するので、実益がないと作り損になりますから、家族に分散できるだけの所得がなければ効果がありません。このため、You Tuberにしてもある程度の売り上げがない方は法人を作らないでしょう。

問題になる経費に関しては、事業に関するという基準はあるものの、極めてグレーで曖昧な点が含まれていると思います。
YouTuberにかわらず、どんな職業でも経費にはグレーな部分があります。一つひとつの経費は、事業といえば事業と言えますし、プライベートといえばプライベートであるともいえる、という世界ですからね」

税務調査に入る基準は…?

「例えば、人気商売の彼らYouTuberが自身の動画で着ている衣装などを経費で落とすとします。
ですが、基本的に税務署側としては、衣装は“制服”しか経費として認めませんから、厳密に言えばプライベートでも着用できる衣装はすべて経費には認められません。
動画の企画で購入した高級時計などもプライベートでも使用するわけですから、購入額の100%を経費として計上することは認められないでしょう。『高級店で大食いしてみた』といった企画も同様で、食事は誰でもするものですから、経費になるかは微妙です。

※写真はイメージです

また、番組内での宝くじの購入や懸賞プレゼントを経費として計上するのであれば『広告宣伝費』等で処理することが考えられます。
以前、ZOZOTOWNの前澤友作さんがお年玉100万円を1000人にプレゼントするという企画をやっていましたね。これに関して、ネットではもらった方に“贈与税”が課税されると書いていました。贈与なら経費にならないことが多いですが、事業の一環で払うべきものであれば経費として計上するのが一般的でしょうね。
そのほか、一部YouTuberのなかには自宅の高級マンションを撮影場所や仕事場として、家賃を100%経費として申告していらっしゃる方もいるようですが、いくら『自宅で撮影しているから仕事場だ」と主張しても、居住スペースがあればその部分は認められないでしょう。

※写真はイメージです

そのようなグレーな申告をしているYouTuberのなかで、税務署側が誰を税務調査の対象にするのかと言ったら、それは申告額の多いYouTuberでしょう。
そもそも収入が億を超えるようなYouTuberは、申告額が多いので、税理士をつけていたとしても計算ミスはあり得ます。加えて、金額が大きければ税金も取りやすい。だから、特定の誰かというよりも、申告額が大きいYouTuberには自然と目が行きますね。

そうした高収入YouTuberのほかにも、無申告、あるいは過少申告をしているYouTuberも調査対象になります。YouTuberの情報はYouTubeを調査すればわかりますから、アカウントの情報を手に入れることができれば一目瞭然です。加えて、銀行を洗ってお金の流れを把握することで、YouTuberの申告漏れを割り出すこともできると思います」

税務署から目をつけらにくい居住地は?

また、居住地によっても調査されやすさがあるという。

「港区や渋谷区などは、高収入の納税者が多いため、相対的に目立ちにくい。各税務署ごとにそれぞれ所管する地域は決まっていますが、税務署にもマンパワーの問題がありますので、これらの地域を所轄する税務署の管内だと、調査されるリスクは他の税務署よりも小さいでしょう。
一方で、以前、私は千葉の田舎の税務署にいたことがあるのですが、田舎だと売り上げの少ない会社の方が多い。
だから、ある程度大きな申告額、とはいっても都内だったら税務調査に入られにくいレベルの申告額でも、優先的に調査されることがありました。
一方、渋谷税務署管内などは職員の数も多いですが、法人の数はもちろん高所得の納税者も多いので、相対的に税務署に目を付けられにくいということはあると思います。

※写真はイメージです

ここまでYouTuberを例にして個別具体的な経費計上の可否や種別について説明しましたが、税務調査に入り、実際に課税する場合には、納税者に対して『あなたの申告は間違っていますよ』という明確な証拠を原則として税務署は提示しなければならないんです。
税務署側も『すべて経費だと認められない』とガチガチにやってしまうと納税者の反発が大きいためなかなか調査が終わらないですし、何より経費の基準はあいまいなので『あなたの申告は間違っていますよ』と断言することも難しい。こういうことを踏まえ、税務署が譲れない論点についてちゃんと税金を納めてくれるのであれば、建前としては難しい経費についても認めてあげる、といった落としどころを見ながら税務署は交渉することも多いです。

例えば自宅マンションを仕事場としているなら、経費として100%は無理でも30~50%なら大丈夫、というような落としどころです。
もちろん、明らかに認められない経費はしっかり指導します。ですが、ある程度キチンと申告している人に対して重箱の隅をつつくようなことをするよりも、“脱税”を行うような者を取り締まる方が、税務署側にとってははるかに優先度が高いのです。このため、経費をごまかしにならない範囲で多少積極的に申告しても、脱税などの不正を行っていなければ、税務調査で認めてもらえることも実際のところは多いです」

ここまでが税務署の経費に関する見解だ。では実際、売れっ子YouTuberは経費についてどのような意識を持っているのか。

ある大手YouTuber事務所の幹部は「所属クリエイターの確定申告は、お金で揉めることを避けるため、当社は関与しておりません」と回答している。

総フォロワー20万人を抱える20代のインフルエンサーの男性は、家賃額を100%経費として計上していたそう。税制的にそれは認められづらいことを伝えると、「そうなんですか⁉ まったく知らなかった」と驚きを隠さない。

また、投げ銭ビジネスで月に100万円の収入があるという20代女性からはこのような回答が。

「私は子どもがいるので育児手当の関係で税金まわりのことはしっかりやっていますが、ライバー友達は『よくわからないから確定申告をしていない』と話していました。税金って難しいし、私のまわりは適当な人も多いですからね」

国民の義務である納税。しかし、投げ銭で稼ぐインフルエンサーの中には確定申告の煩雑さに匙を投げて税金をちょろまかしている輩も少なくなさそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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