【男の子=白ブリーフは過去の話?】今では小学生もボクサーパンツが主流? 白ブリーフは本当に「絶滅寸前」なのか、下着メーカー・グンゼに聞いてみた
集英社オンライン / 2023年3月10日 9時41分
男性なら、一度は白いブリーフを穿いたことがあるだろう。特に昔は、幼少期に身につける下着といえば白ブリーフ一択だった。しかし最近では、子どもにもボクサーパンツやトランクスを穿かせる親も増えていると聞く。めっきり見る機会が減った白ブリーフは、時代に流されて消えてしまうのか。グンゼのアンダーウェア開発担当者に聞いてみた。
見かけなくなった白ブリーフの“今”
白ブリーフといえば、多くの男性が一度は穿いたことがある定番の下着だ。特に筆者のようなアラフォー男性であれば、小学生の頃は白ブリーフを穿くのが当たり前だったように思う。ほかの世代でも、幼少期は白ブリーフを穿いて過ごした、という男性はかなり多いはずだ。
しかし先日、小さな子を持つ知人夫婦に聞いたところ、その夫妻が子どもに穿かせているのはキャラクターの柄がプリントされたボクサーパンツだという。そういえば最近、銭湯などに行ったときにも、白ブリーフを穿いている人をあまり見かけなくなった印象だ。もしかして、白ブリーフはもう“絶滅危惧種”なのか!?
ただし、これはあくまで筆者の観測範囲の話なので、実際のところはわからない。そこで下着メーカー大手・グンゼでアンダーウェア開発を担当する武安秀俊(たけやす・ひでとし)さんに、「昨今の白ブリーフ事情」について話を聞いてみた。
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白ブリーフのイメージ
現代のブリーフ着用率は「7人に1人」
まずは、「ブリーフパンツ」について少しおさらいしておこう。
ブリーフは1950年代頃、米国から日本に入ってきた。それまでの日本人の下着といえば、「ふんどし(褌)」や「さるまた(申又・猿股)」。そんな中、海外からやってきたブリーフは、“最先端のおしゃれな下着”として若者を中心に支持を集めた。そう、ブリーフはかつて若者のファッションアイテムだったのだ。
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ズボン形の男子用下着「申又」
流れが変わってきたのは、1980年代に入ってから。ブリーフに代わり当時の若者に人気を博したのが、トランクスだった。デザインが豊富でファッション性の高いトランクスは、当時流行した“見せパン”スタイルとしても使いやすく、多くの男性が愛用するようになった。
だが、近年のトランクスの着用率は、以前に比べると落ちてきているそうだ。代わって台頭してきたのが、ボクサーパンツ。武安氏によると、現在もっとも男性からの支持を集めているのはボクサーパンツで、市場での割合(数量ベース)は40%以上に達するという(グンゼの調査による)。
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現在はボクサーパンツ(左)とトランクスが主流。特にボクサーパンツは男性の約40%が着用しているそうだ
では、ブリーフはどうなのか。
「現在、ブリーフの割合は約15%で、そのうち白ブリーフは半分くらいです。たしかに昔に比べると減ってはいますが、実はここ5年ほどはそれほど大きく変わっていません」(武安氏)
15%ということは、だいたい7人に1人。白ブリーフはその半分だから、約15人に1人が穿いていている計算になる。
100人中7人が穿いているのであれば、多くはないにしても、絶滅危惧種と呼ぶほど少ないわけではない。また、武安氏によるとこの割合は数年安定していると言うのだから、数年後にいきなりゼロになるようなこともないはず、だからこそグンゼは、現在でも白ブリーフを販売している、とのことだ。
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グンゼではいわゆる“白ブリーフ”以外にも、さまざまなラインナップを展開。「ビキニ・セミビキニ」タイプもある
「親父と同じ」への抵抗感
しかし、ここで次のように感じた人はいないだろうか。
「7人に1人というけれど、自分の周りでは見かけたことがないぞ」と。
その理由は年齢にある。実は、ブリーフの着用者の多くを占めるのは、シニア層なのだ。また、小学生以下の子どもにも一定の支持がある(実際に買い与えているのは親だが)。
逆にいえば、それ以外の世代ではブリーフの着用率は低い。15%という数字はあくまでも市場全体の数字で、実際には世代によってかなり偏りが見られるのだ。
では、なぜそのような偏りが生まれるのだろうか。
大きな理由は、前述した時代の変化だ。戦後に入ってきたブリーフは当時、最新のファッショントレンドであり、若者はふんどしやさるまたからブリーフに乗り換えた。当時の若者は今シニア層になっており、そのままブリーフを穿き続けていると予想できる。
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米国から入ってきた白いブリーフは、当時のファッショントレンドとして若者を中心に人気を集めた(写真/Shutterstock)
一方、1980年代前後に青春を過ごした層は、ブリーフをどこかのタイミングで“卒業”し始めた世代といえる。
「特に思春期の子ども世代では、親世代が穿いているブリーフに対して、“親父と同じなんてダサくて嫌だ”という心理が働くこともあるのかもしれません」(武安氏)
そして、同じことがその後も起きたわけだ。2000年以降は親世代が穿いているトランクスに対して「ダサい」と感じる若者層が一定数おり、海外から流入した新たなスタイルの下着であるボクサーパンツに流れたのである。
この時期は、グンゼが「BODY WILD」ブランドでボクサーパンツを発売した1998年とも一致する。下着メーカーが次世代の新しいパンツスタイルを提案し、そして、そこに新しい価値を感じる若者層が関与し始めることで、トレンドが移り変わっていったわけだ。
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グンゼのボクサーパンツブランド「BODY WILD」(https://www.gunze.jp/bodywild/)
トランクスやボクサーにはないブリーフのメリット
もっとも、下着を選ぶ理由について、「トレンドの移り変わり」だけで括るのは少し乱暴だ。
シニア層でもボクサーパンツを穿く人はいるし、若い層でもブリーフを好む人はいる。デザインの好みが人それぞれということもあるだろうが、下着によって“機能”が異なる点も見逃せない。
たとえばブリーフは裾が足回りにフィットして、足を動かしやすい。そのため、よく動き回る子どもにブリーフを穿かせている親もいるかもしれない。また綿100%で作られたブリーフも多く、その肌触りの良さが好きで穿いている人にとっては、他の下着では替えがきかないといえるだろう。
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「BODY WILD」ブランドの「オーガニックコットンブリーフ(前とじ)」
一方、トランクスはゆったりした形状なので激しい動きには向かないが、代わりに解放感がある。これはブリーフやボクサーパンツにはないメリットであり、下着にゆったり感を求めるならトランクス一択。前述したように、デザインが豊富というメリットもある。
これらブリーフとトランクスのメリットを併せ持つのが、ボクサーパンツだ。裾回りのフィット感が高いので動きやすく、一方でトランクスと同じくデザインも豊富だ。適度なフィット感とファッション性を両立させたいなら、ボクサーパンツを選ぶことになるだろう。また、最近ではグンゼの「AIRZ(エアーズ)」シリーズのように、腰ゴムをなくし裾を切りっぱなしにすることでより解放感を高めたボクサーパンツも登場している。
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腰ゴムを廃止したグンゼの「AIRZ」シリーズ
では、今後ブリーフはどうなっていくのだろうか。先ほど「ブリーフはニーズがあるのでしばらくはなくならないだろう」と述べたが、一方で懸念されるのが技術者の減少だ。
「ブリーフの中には、ウエストゴムの入れ替えができるようにしたタイプがあったりと、縫製も手が込んでおり、実は製造するのに高い技術を要するものもあります。現在の市場の流れを見ると、今後はそういった技術者も減ってくることが予想されます」(武安氏)
よく「ファッションの流行は繰り返す」と聞く。
そうであるなら、現在の子ども世代は親のボクサーパンツを見て「ダサい」と感じ、再びブリーフに回帰するのかもしれない。
それとも、ボクサーパンツが全世代のスタンダードとして定着するのか。あるいは、ブリーフでもトランクスでもボクサーパンツでもない、次世代の下着が登場するのか…。
男性下着業界の今後に注目したい。
取材・文/山田井ユウキ
写真提供/グンゼ株式会社
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