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〈徳島・コオロギ給食騒動〉コオロギ食品加工会社に「菌は大丈夫?」「補助金をもらってる?」全部聞いた! 高校は「保護者からのクレームは1件もないですが、昆虫食を扱う予定はありません」

集英社オンライン / 2023年3月3日 12時11分

徳島県立小松島西高校が給食でコオロギパウダーを使った「かぼちゃコロッケ」とコオロギエキスを使った「大学いも」を試食で出したことが物議をかもしている。昨今は食糧危機解決策としての昆虫食の推奨もされてはいるが、まだまだコオロギを食べることに心理的な嫌悪をおぼえる人からは、今回の試みに対して非難の声もあがっているようだ。

「こういう報道になっていることに戸惑っております」

生徒同士で食用の乾燥コオロギを食べるゲームをしていたのを小松島西高校の教諭が見かけたことが、コオロギ食の給食導入のきっかけだった。当初、教諭は楽し気にコオロギを食べる子供の順応力の高さにただただ感心したそうだが、自身も気になりコオロギを食べてみるとその美味しさに驚いた。これは食の抱える課題や環境に関していい教材になるのではないかと思ったのだという。


小松島西高校の教頭は語る。

「SDGsの学習の一環で食料危機問題や食品ロスについて、生徒たちに考えてもらえると思い、同じ地元の徳島大学発ベンチャー企業のグリラスに相談をしました。最初は去年の夏ごろにグリラスの方に学校で講演していただき、アレルギーに関する説明も行った上でコオロギパウダーの試供品を生徒に配りました」

提供された給食 (グリラス提供)

まずはコオロギ食について知ってもらい、その後、給食で試食しては、という流れだったそうだ。

「給食というと全員に配膳したと勘違いされるのですが、実際は集団給食という授業の中で試食は行われました。本校の食物科では集団給食の授業で生徒が調理した給食を、希望する生徒や職員がチケットを購入して食べます。なので、給食というよりは学食のイメージです。そうした形で11月にコオロギパウダーを使った『かぼちゃコロッケ』を、2月にコオロギエキスを使った『大学いも』を提供しました」

コオロギパウダーをつかった、かぼちゃコロッケ(グリラス提供)

およそ170人ほどが試食に参加したが、生徒たちの反応は「香ばしい」や「コオロギが入っているとわからなかった」など概ね好意的だったという。学校側は教育の一環としていい機会になったと考えていたが、この様子がネットニュースで報じられると状況が一変したという。

「問い合わせの電話は増えました。『全員に食べさせているのか?』や『安全性は大丈夫なのか』などといった内容です。今後に関しては今のところ昆虫食を学校で扱う予定はありません。正直に申しますと、こういう報道になっていることに戸惑っております」

市場規模1000億円の昆虫食、コオロギ会社を直撃

現時点で保護者からのクレームは1件もなく、食物科の授業として生徒からの理解もきちんと得ていたと学校側はいう。
一方で今回コオロギ食を提供したグリラスはどのように考えているのだろうか。2019年5月に設立されたグリラスは食用コオロギの飼育や育種などを手掛けるベンチャー企業で、徳島大学大学院バイオイノベーション研究所・講師の渡邊崇人氏が代表取締役CEOを務める。食品業界の関係者は語る。

「昆虫食の中でもとりわけコオロギがクローズアップされるようになったのは間違いなくグリラスがあったからです。『無印良品』が同社のコオロギ粉末を使用して発売した『コオロギせんべい』がコオロギ食ブームの火付け役だったと言っても過言ではありません。2021年3月には環境省が主催する環境スタートアップ大賞のファイナリストに選出されるなど躍進を続けています」

コオロギのエキス(グリラス提供)

今後は世界での市場規模が1000億円に達するとの試算もある昆虫食だが、今回の給食騒動以外にもたびたび議論を巻き起こしている。そこでコオロギ食の火付け役と言われるグリラスに取材を行った。

「今回の試食は弊社としてはコオロギ食を色々な方に知ってほしいという思いからでした。学校側はSDGsについてのいい教材だと考えていたのだと思います。日頃より『コオロギを食べて菌とか大丈夫なのか?』『虫なんて食わすな』『発がん性は?』といったお問い合わせや誹謗中傷もありますが、未知のコオロギ食に対してそう思われるのは不自然なことではないと捉えています」 (広報担当者)

世界人口が80億人を突破する現在、いずれ家畜を飼育する飼料も不足し、肉などからタンパク質を確保することが難しくなると言われている。「食の需給バランスを保てなくなる以上、近い将来、昆虫食にも頼らざるえなくなる」と担当者はいう。

「牛乳の廃棄問題をはじめ、食品ロスの問題や代替肉など、食糧危機に関してできることはすべて取り組むべきだと考えています。その一環として弊社はコオロギ食に取り組んでいますが、コオロギ食がすべてだと考えているわけではありません」

だが、数ある昆虫の中でなぜコオロギだったのか。

「食肉に比べて食用コオロギはタンパク質の含有量が多く、その上、畜産と違って餌の量や水も少なくてすみます。しかもバッタなどとは違い、コオロギは雑食なんです。人間と似たような物を何でも食べるのでコストを抑えて飼育ができます。
そうはいっても弊社では飼育方法や餌に関してもこだわっていますから、現状、コストは高いです。当社では小麦粉ふすまをベースに食品残渣を餌に用いています」

食中毒などの安全面は?

消費者目線でいうと一番気になるのは安全面だ。ネットでも「食用コオロギには大量の雑菌がついている」「食べると食中毒になる」といった噂が飛び交っているが……。

「まず菌についてですが120度の熱で15分以上殺菌しています。一般的なレトルト食品では120度以上で4分以上の加熱することでボツリヌス菌が死滅するとされています。それ以上に行っているわけです。これまでに何らかの菌が発見されたことは一度もありません。もちろんどんな食品にもアレルギーはありますから、これが絶対にないとは言いません。特にエビやカニのアレルギーを持つ方はアレルギー症状を起こす可能性があるのでそれは明記しています」

SDGsが注目されることから、昨今はコオロギ食や商品を取り扱う企業も増えているが、実際に企業のイメージアップにはつながっているのだろうか? また「グリラスには国から多額の補助金が出ている」とネット上で揶揄されているが、実際はどうなのか?

「企業の宣伝効果については弊社が答えるべきではないと思います。ですが、コオロギ食を使うことで単純に企業イメージが上がるか言うとそれは違うかなと思います。なぜならコオロギを使う企業といったイメージにネガティブな印象を持つ人もいるからです。
それから補助金についてはまったくの憶測に過ぎません。新しい形の食品を開発するほかのフードテックと同様の補助金はありますが、昆虫だからコオロギだからといって多額の補助金が別途出ることはありませんよ」

オンラインショップなどで販売されている乾燥コオロギ

良くも悪くもコオロギ食が注目されているということだろうか。

「弊社には常に試供品のコオロギがあって、今は素揚げのコオロギが置いてあります。サクサクして美味しいですよ。私も毎日コオロギを食べています。ただ、繰り返しますが、弊社としてはあえてコオロギ食を推しているのではなく、食糧危機に向けてやれることのひとつとして必死に取り組んでいるのです」

私たちの食卓にコオロギ食が並ぶ日も近いのだろうかー。
コオロギ論争はまだまだ続きそうだ。


※「集英社オンライン」では、コオロギをはじめとした昆虫食について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

Twitter
@shuon_news

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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