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〈体験ルポ〉減塩食が美味しくなる? キリンが開発中の“塩味が1.5倍になる”お椀&スプーン『エレキソルト』の実力を検証してみた

集英社オンライン / 2023年3月9日 11時31分

キリンホールディングスが今年中の商品化を目指している新時代の食器『エレキソルト』に注目が集まっている。減塩食を食べたときに“塩味が増強されて感じられる”というが、果たして本当なのか試してみた。

大手飲料メーカーであるキリンホールディングスが開発中だという新時代の食器『エレキソルト』。

現状は“お椀型”と“スプーン型”の2種類。そのお椀やスプーンから電気を流し、飲食物中のイオンの動きをコントロールさせることで、塩分控えめの食品を食べてもしっかりと塩気を感じることができるという代物だ。いったいどういった仕組み、そして実際の機能はどうなのだろうか。

イオンをコントロールして塩気を感じる? すごすぎる仕組み

『エレキソルト』は明治大学の宮下芳明研究室とキリンが共同開発したもの。その開発に携わるヘルスサイエンス事業部・新規事業グループの佐藤愛さんは、『エレキソルト』の仕組みについてこう解説する。


日夜実験を繰り返しているという開発者の佐藤愛さん

「『エレキソルト』は現時点(2023年2月)ではまだ試作段階ですが、“電気味覚”と呼ばれる技術によって食事の味をコントロールしています。食べ物自体に電気を流して、塩気やうま味の元となる“イオンの動き”を制御し、舌に接する面に集中させることで擬似的に味を操作する仕組みです」(佐藤さん、以下同)

当初は“お箸型”を目指したが、最終的には“お椀型”と“スプーン型”になったそうだ

食べ物自体に電気を流す仕組みとはいえ、口に入れるものに電気を流すはやや物騒な気がするが、危険性や使用時に違和感はないのだろうか……。

「食べ物に電気を流すと聞くと身構えるかもしれませんが、電流は人間が感じられるか否かという微弱さなのでご安心ください(笑)」

『エレキソルト』の仕組みを細かく説明してくれる佐藤さん

キリンが『エレキソルト』の試作品を使って40歳~65歳の男女31名を対象に試食アンケートをおこなったところ、減塩食を食べたときに“塩味が増強されて感じる”と回答した人が29名にも上ったそうだ。

「塩味だけでなく、うま味、酸味もこの技術で味の濃淡がコントロールできます。『エレキソルト』という名前ですが、しょっぱさだけではなく、うま味やすっぱさなども濃く感じる効果があるということです。ただ、操作できるイオン性成分がない砂糖が主原料であるスイーツなどでは、ほとんど効果は感じられません」

電極に触れるだけで味が変わる不思議な体験

では、さっそくその実力を体験させていただこう。最初に“お椀型”のほうを使って「減塩みそ汁」をいただいてみることに。

体にやさしい「減塩みそ汁」はどう変化するのか……

少し大きめのお茶碗といったサイズの“お椀型”の『エレキソルト』は、底部に取り外せる電気パーツが付いており、電源を入れてから底の電極部分に触れながら食べることで、身体に電気が流れるそうだ。

電源を長押ししてスイッチを入れると、お椀の側面に4本入ったスリット状のランプが点灯。電源ボタンを短く押すことで電流の強さが選べ、1段階ごとに感じる塩気が強くなるのだとか。佐藤さんによると、通常は2段階めから試すのがおすすめとのことだったが、明確に違いを実感すべく、いきなり3段階めにセット。

底面の電極部分に触れることで電流が体内に

まずは通常時の「減塩みそ汁」を味わうべく、底部の電極に触れずに一口。やはり一般的なみそ汁よりも薄味で、濃い味が好みな筆者からすると少々もの足りない。

さて、これがどう変化するというのだろうか。

おそるおそる電極部分に指を添える。特に電気が流れているビリビリ感はなかったが、これで『エレキソルト』の効果が出ているはずなので、改めてみそ汁をすすってみた。

「あ、確かにしょっぱく感じる!」と、思わず声が出てしまった。例えるのが難しいのだが、すすったみそ汁全体の塩気が上がったというより、舌に触れたその部分を中心に塩気が強くなっているように感じたのだ。実に不思議な感覚である。

佐藤さんいわく「0.5秒から1秒かけて電気を流すので、いつもよりゆっくり味わっていただくと、より効果を実感できると思います」とのことだったので、改めてゆっくりと飲んでみた。するとさっきまで舌先だけで感じていた塩気が、今度は喉のほうにも広がっていく感覚を覚えた。

味がより複雑な料理ではどう作用するのか?

次に“スプーン型”を「減塩ミネストローネ」で試してみよう。

固形物が入っており、汁気の粘度も高く、味も複雑なこの料理だが、一体どんな変化を感じさせてくれるのだろう。

最初に『エレキソルト』を使わずに「減塩ミネストローネ」を食すと、素材が引き立った味わいで、まずいわけではないがやはり少々味が薄いと感じた。

では、“スプーン型”を使用して実食してみよう。強さは2段階めにセット。“スプーン型”は持ち手部分とスプーンのすくう部分が電極となっているのでしっかり握り、「減塩ミネストローネ」をすくって口に運ぶ。

カレーやラーメンなどでも高い効果があるのだとか

あくまで個人的な感想だが、「減塩みそ汁」よりも、塩気の感じ方が自然に感じられた。また、旨味も全体的に強くなっているように思える。例えるならうま味調味料を一振りしたような印象だ。

この違いについて佐藤さんに訊いてみると、「シンプルなお味の料理よりも、味が複雑な料理のほうが電気刺激が馴染んで感じることがある」ということだった。

減塩以外の料理ではどんな変化が起こる?

次に、もともと塩気が強い「チャーハン」にチャレンジ。こちらに減塩などはしておらず、『エレキソルト』を使わずに食べても充分味は濃かった。ということは、『エレキソルト』を使うとかなりしょっぱく感じることになるのだろうか。

電流のレベルを調節していざ実食……

先ほどと同じく“スプーン型”を使用して一口食べてみた。だが、塩気は感じるのだがなぜか“しょっぱすぎる”とはならず、「普通のチャーハンだな」という感想。さほど効果を実感できなかった。

この結果について佐藤さんに伺うと、「人間は一定以上の塩気を感じると感覚が鈍化する傾向がある」とのことで、そういう理由だったのかもしれない。ただ、むしろ濃い味のものを食べても余計な変化がないというのは、『エレキソルト』を常用する場合に好都合だろう。

効果が薄いというスイーツだが……

最後は、あまり効果がないというスイーツにあえて挑戦。ホイップクリームの入った「カップ入りスポンジケーキ」を食べてみた。

「あれ、なんか普通に食べるより味がはっきりして美味しいかも……」。筆者の舌がおかしいのかもしれないが、なぜか効果を実感できてしまった。

「なぜでしょうね……」と困惑気味の佐藤さんとともにパッケージの裏を見てみると、クリームに風味付けでレモン汁が入っていた。この酸味が強化されたことで、味の輪郭がはっきりとしたようだ。

――開発当初は剥き出しの電線をつないでさまざまな実験を繰り返したそうだが、たゆまぬ研究の末に現在のスリムな形状になったという『エレキソルト』。佐藤さんは「味気ないと言われがちな薄味のお食事で使っていただき、食のフラストレーションを解消できたらいいですね」と商品化への展望を語ってくれた。

取材・文/TND幽介 撮影/井上たろう

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