《「女性の働きやすさ」ランキング7年連続ワースト2位》なぜ日本の女性は働きにくいのか…その理由は2つの数字が教えてくれる
集英社オンライン / 2023年3月11日 10時41分
イギリスの経済誌『エコノミスト』が毎年公表している「女性の働きやすさ」ランキング。2022年において、日本は7年連続ワースト2位となった。なぜこれほどまでに下位が続くのか? 低迷が続く原因は「本当の意味での共働き社会」になっていないことにあった。
日本は共働き世帯が30年前から増えていないという真実
先日、イギリスの経済誌「エコノミスト」が先進国を中心とした29か国を対象にした「女性の働きやすさ」ランキングを発表しました。日本は、7年連続ワースト2位。最下位は韓国で、こちらも7年連続1位という結果が続いています。
エコノミスト誌は、日韓の両国は「いまだに家庭と仕事のどちらかを選ばなければならない状況にある」と指摘しています。これに対して、多くの人は「日本もかなり共働きが進んでいるし、そんなことないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、日本において共働きが進み、共働き世帯が増えたというのは、少し誤解をもたれています。多くの人のイメージでは、「フルタイムの共働き世帯が増えた」という認識かもしれませんが、フルタイムの共働き世帯の数は、実は30年ほどほぼ変化がありません。増えたのは「パートタイマー」というのが事実です。
図で見るとわかりやすいので、「男女共同参画白書 令和4年度」のデータを見てみましょう。まずは、よく見る共働き世帯が増えたという主張の際に利用される図からです。
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/03/09090541811568/0/1.png)
出典「男女共同参画白書 令和4年版」
この図を見れば、確かに男性雇用者と専業主婦の世帯が減り、共働き世帯が増えているように見えます。では、次に同じ「男女共同参画白書令和4年度」にある共働き世帯の内訳を細かくした図を見てください。
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/03/09090636264115/0/2.png)
出典「男女共同参画白書 令和4年版」
黄緑色のグラフが、妻がフルタイムの世帯の数です。1985年が461万世帯となっており、2021年は486万世帯です。ほとんど変化がないどころか、1994年をピークに2015年くらいまでは減り続けていたことがわかります。
それに対し、妻がパートの世帯は基本右肩上がりとなっています。つまり、日本は30年前からほとんどフルタイムの共働き世帯は増えておらず、「男性の賃金が上がらず、不足する部分を補うようにパートタイムで働く女性が増えた」というのが正しい認識ではないでしょうか?
これを「共働き世帯が増えた」と表現するのは、個人的には正確な表現ではないと感じます。
なぜフルタイムの共働き世帯が増えないのか?
では、どうしてフルタイムの共働き世帯が増えていないのでしょうか?
この理由について、エコノミスト誌が指摘するように「いまだに家庭と仕事のどちらかを選ばなければならない状況にある」からだと筆者は感じています。
これも国際比較しているデータを基に話します。
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/03/09090736453725/0/3.png)
出典「男女共同参画白書 令和4年版」
この図にある有償労働時間とは、賃金の発生するいわゆる僕らのイメージする「仕事」です。それに対し、無償労働時間とは家事や育児などを指します。家事や育児を労働と表現するのは違和感があるかもしれませんが、社会学では「無償労働(unpaid work)」と表現します。
世界的に男性より女性の方が家事時間が長い傾向があります。また日本の女性の無償労働時間が長いというより、男性の有償労働時間が長いという方が自然かもしれません。この点は日本と韓国に共通しています。
次に令和2年度のデータとなりますが、夫と妻の家事・育児時間の国際比較を見てみても、やはり日本は妻と夫の家事・育児時間の差が顕著です。
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/03/09090814278106/0/4.png)
出典「男女共同参画白書 令和2年版」
これらのデータは当然、東京などに在住するフルタイムの共働き世帯だとしっくりこないデータかもしれませんが、日本全体としては未だに女性が「仕事か家事」を選択しなければいけない現状を表していると思います。
ケア労働をどうやって減らすのかが課題
これまでのデータを見て感じる点は、まず日本の男性は他国に比べて有償労働の時間が長すぎるという点です。男性が長時間労働するライフスタイルとは、それを支えてくれる人がいなければ成り立ちません。今現在、日本はこれを配偶者である妻が負担しているということですね。
次に女性のケア労働を減らす必要があると感じます。ケア労働とは「育児、介護」です。日本は、ケア労働は家族がするという認識が強いと感じます。
詳しい説明は省略しますが、社会学者のアンデルセンは福祉国家には3つの形があるといい、その形は「政府、市場、家族」の組み合わせで成り立ちます。北欧社会は政府の比率が大きく、アメリカなどは市場の比率が大きく、日本はどちらかと言えば家族の比率が大きいです。
もし家族の負担を減らす場合、政府の比率を増やすのか、市場の比率を増やすのか、という選択肢が考えられます。筆者は政府の比率を増やす方が良いと思っています。
理由として日本は移民に対してポジティブではないからです。市場を利用するというのは格差を利用するということでもあります。ケア労働を外注するとしても、料金が高ければ誰もが利用できませんので、安い労働力を見つけて働いてもらう必要があります。つまり移民です。
しかし、それは日本社会では難しいと思いますので、消去法として北欧社会のような形を目指す方が良いのではないかと思います。
日本は公務員が少なすぎる?
北欧社会などでは、育児や介護といったケアサービスのほとんどは、公的機関によって提供されています。当然、負担は各家庭から支払うわけではなく、税金や社会保険料として政府が徴収したお金を使って、政府はケアワーカーを雇用したりしています。
つまり、公務員を増やしたということです。
北欧社会は、これにより女性の多くが公務員のケアワーカーとして働いています。また、これについては「性別職域分離」の問題もあり、欠点がないわけではありませんが、一つの選択肢だと思います。
日本だと「公務員を増やすなんてバカげている!」「公務員はもっと減らしていい!」と思われるかもしれませんが、すでに日本の公務員の数の割合は同レベルの経済水準の国に比べて最低レベルです。
さらには、「税金や保険料負担が増えるのは嫌だ!」という方が多いので、反対されることは目に見えています。その結果、日本は現状維持という選択を選ぶことが多いですね。しかし、選択しないということもまた、現状維持を選択するということでもあります。
「フルタイムの共働き世帯」が増えていないこと、日本が突出して妻と夫の「家事・育児時間の差」が大きいという2つの数字が女性が働きにくい社会だということを表していると考えられます。そして、韓国を真似したようなバラマキ型の子育て支援より、ここを改善することが少子化対策にも繋がるのではないでしょうか。
取材・文/井上ヨウスケ
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