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住宅ローンを組まなくてもマイホームが手に入る。募集→即完売の譲渡型賃貸住宅「家賃が実る家」が人気の理由

集英社オンライン / 2023年3月17日 8時1分

新築の家を手に入れるなら、何十年にも渡る住宅ローンを組むのが当たり前。そんな常識を覆すサービスが今、巷を賑わせている。それが、譲渡型賃貸住宅の「家賃が実る家」だ。このサービスが一体どのような仕組みで成り立っているのか、運営会社である株式会社Minoruに話を聞いた。

人気上昇中の「譲渡型賃貸住宅」

株式会社Minoruが展開する「家賃が実る家」は、家賃を払い続けることで持ち家が手に入る画期的なサービスだ。

家の間取りや土地を選んで住宅を建てるという点で、「家賃が実る家」はこれまでの新築住宅と変わらない。しかしこのサービスの場合、最初は賃貸という形でスタートするのが大きな違いだ。その後、住んでいる人が一定期間家賃を支払い続けると、最終的にその家が譲渡されるのだ(期間は最初に設定)。



この方法の最大のメリットは、住宅ローンを組まずに家を建てられること。さまざまな理由で住宅ローンの審査に通らない人であっても、このサービスであればマイホームの夢を叶えることができる。最初は賃貸として入居するため、賃貸住宅への入居時と同等の審査だけでいい。

そもそもこのサービスが始まった理由も、住宅ローンの審査という問題が大きく関わっているという。「家賃が実る家」を展開する株式会社Minoruの創業者・森裕嗣(もり・ゆうじ)さんと代表取締役・広瀬智也(ひろせ・ともや)さんに経緯を伺った。

株式会社Minoruが展開する「家賃が実る家」(https://minoru-ie.jp)。同サービスは北海道と沖縄を除くすべての都道府県で施工可能だ

「家賃が実る家」の仕組み(写真提供/株式会社Minoru)

日本の住宅ローンは「個人を見ていない」

「私はもともと都内で働いていたのですが、結婚を機に妻の故郷である秋田県に移住し、そこで不動産・建築会社を設立しました。しかし、そこでは所得や貯蓄額といったさまざまな要因で、住宅ローンの審査が通らないお客様が非常に多かったのです」(森さん)

マイホームを建てたいと訪れた客と打ち合わせをしても、いざスタートという段階で住宅ローンの壁に阻まれ夢を断念してしまうケースを、森さんは過去に何度も見てきたそうだ。

「会社としては、集客・接客コストをかけたのに契約に結びつかないし、お客様も『自分は住宅ローンに通らない人間なんだ』という精神的ダメージを負ってしまう。この状況をなんとかできないかと考えたのが、『家賃が実る家』なのです」(森さん)

住宅ローンの問題は、なにも地方に限った話ではない。地方か都市部かどうかに関わらず、住宅ローンの審査を通らない人は意外と多い。

「たとえば、一流大学を卒業して大手企業に勤めていても、退職してしまうと、途端に審査に通らなくなってしまいます。また、芸能人の方やスポーツ選手の方は、十分な収入があってもなかなか審査に通らないケースが多い。既存の住宅ローンの審査では、勤め先の企業の信用ばかりを見て、本人のことはあまり見ていないんですよ」(森さん)

「ここ数年は低金利の影響で、銀行が住宅ローンに対してそれほど積極的になっていない印象があります。金利が低いと、銀行が得られる利益も薄くなってしまいますから。そういう面でも、審査が厳しくなっている可能性はあります」(広瀬さん)

実際、同社がサービスを始めると、住宅ローンで悩みを抱える人からたくさんの反響があった。

「お申し込みいただく人の傾向は大きく分けて3種類あります。1つ目は、フリーランスなどの個人事業主の方。2つ目は、自分の責任ではないのに、信用情報に傷がある方。これはたとえば親の会社の連帯保証人になって会社が倒産したといったパターンなどです。そして3つ目は、ローンを組めるけれど組みたがらない方です」(森さん)

ローンを組めるのに組みたがらないというのは、どういった心境なのだろうか。

「今は社会情勢の変動が激しいので、リスク回避志向が高まっているのではないかと思います。従来だと35年間でローンを組む人が多かったと思いますが、35年間失業せず、身体を壊さずに働き切ると決めるのは、今のご時世ではかなりの自信がなければできないことなのではないでしょうか」(森さん)

今まで当たり前だった住宅ローンの仕組みも、もはや常識とは言えなくなってきたのかもしれない。

建てる人にも出資者にも恩恵

住宅ローンを組まずに家を建てられるのはありがたい話だが、運営会社はそれでビジネスが成り立つのだろうか。詳しい仕組みを聞いてみた。

「このサービスでは、建築する家を『不動産投資物件』として扱い、出資者を募ります。現在は『応援型不動産クラウドファンディング』というものを利用していて、1つの物件に対して何人もの投資家が小口で出資をします。住む人が家賃を支払い、それが投資家への分配金に充てられる仕組みです」(広瀬さん)

クラウドファンディングというキーワードが出てくるのは、いかにも現代的だ。

「物件によっては、募集して5秒で定員が集まることもあります。投資家の視点でいえば、利回りもしっかりあるし、通常のアパート投資に比べると空き家になるリスクも低いですから」(森さん)

なお、もしも途中で家賃が払えず「退去」という形になった場合は、中古住宅として売却を行い、その売却益を投資家に分配するのだという。また、入居者が5年以内に退去した場合には違約金の支払いが生じ、損失を補填できるようにもなっている。出資者から見ても、比較的安心感の高い出資先と見ることができるのだろう。

一方、マイホームを望む人にとっては、この仕組みがあるおかげでローンを組まずに家を建てられる。ローンを組むことに不安がある人も、マイホームの夢が叶えられるというわけだ。

家賃が実る家では、現在「利回りくん」というクラウドファンディングを活用して出資者を集めている。不動産投資を通じて誰かの夢を応援するという「応援型不動産クラウドファンディング」だ(https://rimawarikun.com

Web上で家の仕様を固められる

同サービスでは、どんな間取りにするか、どのエリアに家を建てるか、キッチンやバス・トイレなどの住宅設備をどうするかといったプランニングが、Web上でひととおり完結できるようになっている。いわゆるセミオーダー住宅で、用意された複数のプランから好みのものを選ぶタイプだ。

Webだけでプランを固められるのは簡潔で良い部分もあるが、間取りや仕様に関して要望を出したいという人も出てくるのではないだろうか。

「サポートはビデオ会議のみの対応になります。また、サービスの特性上、細かなご要望にはお応えできかねます。お客様の要望に応えて家のカスタマイズをしても、家の価値が上がることは稀だからです。投資物件という側面があるため、価値の上がらないことにコストをかけにくいという現実があります」

誰もがマイホームを実現できるというのは夢のある話だが、夢だけでは家を建てられない。対面での打ち合わせができない点や住宅の細かな仕様変更に応じられないという不自由さは、あらかじめ理解した上で利用する必要があるだろう。

「『それでもいいからマイホームが欲しい』という人を対象にした、ある意味で間口の狭いサービスではあるのですが、おかげさまでたくさんの反響をいただいています。入居審査の申し込みをされたお客様は、累積で言うと400件くらい。しばらく順番待ちしていただいているお客様もいらっしゃいます」

現在プランは60種類を超える。WebサイトにはVRウォークスルーが掲載されており、建物をバーチャル体験できる(https://minoru-ie.jp/introduction#plan) ※写真提供/株式会社Minoru

ひと口にマイホームと言っても、人によって思いはさまざまだろう。細部にまで夢を詰め込んだ自由設計の家が欲しい人もいれば、スッキリとしてシンプルな家のほうがいい人もいる。夢のために長期のローンを覚悟する人もいれば、住宅ローンのリスクを回避したい人もいる。

家に対する価値観もライフスタイルも多様化してきた今、家を建てる方法にもたくさんの選択肢があってもいいはずだ。同サービスのような譲渡型賃貸住宅は、これからの選択肢の一つとして定着していくのかもしれない。

人気の高い間取りの一例。2階にサンルームが設けられているのが特徴だ(写真提供/株式会社Minoru)

こちらも人気の高い「リビング階段の家」の間取り。1階には 12.7 帖のダイニングキッチン、2階には3部屋を用意(写真提供/株式会社Minoru)

「部屋数をかえられる家」の間取り。将来的に壁を作って4LDKにすることができる(写真提供/株式会社Minoru)

取材・文/小平淳一

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